秦基博インタビューpaintlikeachild

【インタビュー】秦 基博、最新ALと歌のルーツを語る。Recマイク一覧、喉のケア方法も掲載〜『Paint Like a Child』〜

2023.03.29

取材・文:田代智衣里(Vocal Magazine Web)

文字を書くこともまた増えてきた

──サウンド面では全曲トオミヨウさんと共同プロデュースとなっています。サウンドのイメージを伝える際には、秦さんがあらかじめ打ち込んだものをトオミさんに渡しているのですか?

 そうですね。自分でビート、音像、いろんな音を入れたデモテープをトオミさんに聴いてもらってからトオミさんのスタジオにお邪魔して、トオミさんの意見を伺いながら僕がやりたいことがより具体的になるように話したり。いろんな音を整理したり、逆にプラスアルファしたりを現場でやります。

──サウンドのイメージを描いている時点で、歌の表現もイメージすることはありますか?

 メロディの時点でもそうなんですけど、特に歌詞を乗せてからはもう曲の世界がそこにあるので、自分の中にあるサウンドも含めたニュアンスや、その曲が持っている温度みたいなものが表出しているんです。歌うときは改めてどう歌うかを考えることはあんまりなくて、そこにあるものを歌いたいって感覚に近いんです。

だから歌入れのときは無心というか、あんまり頭で考えて歌わないように、その曲が持っているものを出せるようにしています。大体ファーストテイクを録ると、ざっくり言うと今の歌は曲に対して明るいとか暗いとか、表情に違和感があるとわかるので、じゃあもうちょっと明るく歌おうかなとか。大体の方向が定まったら、あとはひたすら歌いますね。

──ファーストテイクを聴いて方向を定める際は、ご自身のジャッジなのですか?

 ディレクターさんもいるので相談しながらですけど、大体自分ですね。ただ、自分の歌を完全に客観的に聴けるかどうか、しかもリスナーとしての耳で本当に聴けるかはすごく難しい気がしていて。俯瞰して聴いてくれる人の意見も聞いてやってますね。

──1曲のレコーディングには、どのぐらいの時間をかけていますか?

 休憩もしているんですけど、歌う時間としては4〜5時間なのかなと思います。大体7〜8本つるっと歌って、そこからパートやブロックでプラス5〜6本録ることが多いです。あとは、セレクトのほうが時間がかかりますね。細かいニュアンスはどれがいいかを何度も聴き直しているので。それは僕ひとりじゃなくて、ディレクターさんと一緒にセレクトしていくんですけど。

──デビュー前に「創作ノート」を手書きで書いていたそうですが、今も書くことはありますか?

 デビュー以降にいろんな曲の書き方をするようになって、完全にパソコンで文字を打って書く時期もありましたけど、最近は両方気分によって変えているんです。文字を書くこともまた増えてきました。

意味になっていなくても、曲が持っているイメージを言葉で羅列していったり。自分の考えを整理して、詞じゃなくて文章にしてみたり。そうすると“こことここはもう歌詞だな”って思うこともある。“このワードは歌詞に使いたいなぁ”とか、“あ、これが本当に自分が思っていることだ”とか見えてくるので。完全に頭だけで作り出しているというよりは、書くことで見えることもいっぱいありますね。

──子供の頃からノートに書き出すことはあったのですか?

 全然していなかったですね。今も僕は歌詞を書くときになって書きます。曲を聴きながらイメージしたものを探していくような感じです。あとは、響きで書いたりもします。「イカロス」の最初の《境界線》は、響きのイメージもありました。「太陽のロザリオ」も言葉の意味として結び付けたというよりは、そこのメロディが《ロザリオ》に聴こえたのでそこから広げていったり。そういう書き方もありますね。

──「2022」もアルバムに新たに収録された曲ですが、こちらはいつ頃制作したのですか?

 2022年の夏頃に作曲期間があって、そこでまずはメロディとサウンドを作ったと思います。アルバムに向けた作曲期間に作った曲の中で、この曲調を入れたいと思って。それから歌詞を書いていったので、2022年のムードとか時代性、そのときの自分の感情をとじ込められたらいいなと思って詞を書きました。それで最終的にタイトルを「2022」にしたんです。

──「イカロス」は2月1日(水)に先行配信されていますが、制作されたのは少し前だったそうですね。

 2021年の秋ぐらいにこの7枚目のアルバムに向けた本格的な曲作りを始めたんですけど、そのときに生まれました。

──新鮮な音の印象を受けたのですが、ここにも新たなトライがあったのでしょうか?

 “ピアノと歌”という世界が基本になっているんですけど、そこに低音をシンセベースで入れていて、明確なリズムトラックがなかったり、そういう狙いで作っていったんです。それに対してあのコーラスで、声が重なっていくようなイメージをまずは基本に作りたいと思っていたんです。最終的にストリングスを彩りとしてドラマチックに入れたのは、トオミさんとプリプロしながら決めていきました。

あとは歌の質感とか、この曲の色合いを出すためにはどういうマイクがいいかをよく考えました。空間も意識していて、リバーブの広がり方は曲に合うようにイメージしていたものを形にしていきましたね。

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