取材・文:田代智衣里(Vocal Magazine Web)
“歌の質感をどうやって録音するか”は新しくトライしている
──当時はヴォイストレーニングをやっていなかったそうですが、その後、取り入れていますか?
秦 当時はやったことがなかったですね。でも、デビューしてから少しずついろんなところに通ったりして、今も続けています。
──最初にヴォイストレーニングを取り入れたのはいつ頃ですか?
秦 デビューのタイミングだったかな。紹介していただいて通ったこともありました。でもそんなに長く通っていなくて、やっぱり忙しくて行けなくなったり、また違うところに行ったり、期間が随分空いてから行ったり。いろいろ繰り返しましたけど、ここ5年間ぐらいはずっと同じところに通ってますね。
──ヴォイストレーニングでは変化を感じましたか?
秦 感じましたね。やっぱり身体が楽器で、その楽器が変化していくので。それにどう対応していけばいいのか、どういう部分を鍛えるといいのかをナチュラルにやっていたものを、もう少し理論立ててできるようになることが目標です。歌い方を変えるとかニュアンスを学ぶというよりは、もっと根本的なところをちゃんと自覚できるようになるために僕は通ってますね。
──今まで自然とやっていたことを、理論的にも理解するためだったのですね。
秦 そうですね。自然と自分でもよくわからないままにできたことが、実はこうやっていたからできていたんだと知ったり。今すぐに活きるかはわからないですけど、この先も歌い続けるためには必要なことなのかなと。もちろん年齢的な変化もあるので、そこも含めてヴォイストレーニングしています。
──トレーナーによってもメソッドがさまざまだと思うのですが、ここ5年ぐらい通っているトレーナーさんはどんなところがマッチしたのですか?
秦 僕も1ヵ所じゃなくて、いろんなところに行って、僕自身に合うんじゃないかなと思えるところにしましたね。(今のトレーナーは)歌の表現に対してのアプローチじゃなくて、発声やメカニズムにフォーカスしていたので合うと思ったんです。
──ここからはアルバムについてもお聞きしていきたいと思います。前作の『コペルニクス』から3年3ヵ月ぶりのニューアルバム『Paint Like a Child』がリリースとなりますが、この期間に歌うことに対する感覚や考え方で変化したことはありますか?
秦 歌うことの感覚としてはそんなに変化はないんですけど、今回のアルバムで言うと“歌の質感をどうやって録音するか”はけっこう新しくトライしています。そもそも自分が好きな洋楽とかヴォーカリストの音を聴いていると、音源の中での歌の立ち位置というか、存在感とか息づかいとか……そういうものがすごく生き生きと立体的に聴こえていて。
そういうふうに歌を録るためにはどうしたらいいんだろう?っていうのを、エンジニアさんと、今回一緒に共同アレンジしているトオミさん(トオミヨウ)と相談しました。じゃあこのマイクを選んでみようとか、こんなふうに録ったらいいんじゃないかとか、その辺は新しくやってみましたね。それまで使っていたマイクじゃなくて、新しいマイクを使ってみたり。
──マイクはご自身で選んでいるのですか?
秦 そうですね。大体1曲に対して4〜5本試して、曲の音域や雰囲気に一番合うものを選ぶようにしています。昔はひとつ決まったマイクがあって、特別選んだりしていない時期もあったんですけど。今はどんどん曲に合わせて選ぶようにしています。
──アルバム『Paint Like a Child』収録曲のレコーディングに最終的に使用したマイクは何本でしたか?
秦 4本ぐらいだと思います。2本ずつ立てて録ってみて、4〜5本の中から選んでいきました。
<使用マイク一覧を最後のページに掲載しています。>