【インタビュー】横山 剣(クレイジーケンバンド)が初登場! 結成25周年を迎えての意欲作『樹影』制作話と、唯一無二のヴォーカルスタイルを深堀りして訊く!

取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)
ライブ写真:©️本多亨光

マイクは線(シールド)じゃなきゃ。線を持つことで自分に電流が来る感じがする

──マイクにこだわりはありますか?

横山 一番馴染んでるからだと思うんですけど、ライブはゴッパー(SHURE SM58)です。いろんなマイクを使ってみたけど、結局は線(シールド)じゃなきゃ。線を手で持つことで自分に電流が来る感じがする。だからワイヤレスでまともに歌えたことがなくて。実は今の時代、よっぽどワイヤレスのほうが抜けは良かったりするんですが、なんか自分の一番抜けるポイントにワイヤレスだと引っかからないんですね。

レコーディングのときは自分専用のノイマン(KMS104)。いわゆる吊るすタイプのマイクだと自分の良いところを拾わないので、ハンドマイクで録るんですよ。

──レコーディングでハンドマイクですか!

横山 ええ。もうライブと同じスタイル。ヘッドホンもしないで録ってるので、スピーカーから出る音も全部マイクで拾ってしまいます。

──そうなんですね!

横山 結局、原理としてはライブ盤の録音と同じことなんですよね。よりライブな音で録音できるって意味では、音がロータリーすると独自のうねりが出るのでサウンド的にもいい。それをノイズと思う人にとってはノイズかもしれないけど、僕的には好みのヴォーカル状態になるんですね。

それはジャマイカのレゲエの人がスタジオのコントロールルームの横で歌ってるのを見て“これだ!”と思ったからなんです。もう(レベルを測る)メーター的には全然振り切っちゃってるんだけど、メモリよりもスピーカーから出る音を信用するってところに共感できて、僕もメモリ無視でやってます(笑)。

──そのスタイルにしたのは何年くらい前からですか?

横山 CKBでは2005〜2006年からそのスタイルですが、その前の90年代にやってたZAZOU(ザズー)ってバンドのときもそれでやってました。エンジニアの方も、みんな嫌がるんですけど(笑)。

──レコーディングは一曲を通して録りますか?

横山 歌はちょびっとずつ録ります。悪いところに差し掛かったら止めて、そこだけ直してみたいな感じ。通して何回もやるのは練習のときですね。ただ、練習が本番以上に良いときもあるから、一応録ってはいます。昔は(テープに上書きするので)消えちゃったけど、今は全部のテイクが残るので、いいとこ取りできるのはProToolsになってからの良さではあるんですけどね。選択する余地が多いと、逆に時間かかっちゃって……。

──プレイバックの時間が長い?

横山 そう。だからもうそれがイヤなので、本当はもっと良いテイクがあったのかもしれないけど、そのときに一番勢いがあったやつにしますね、“粗いけどこれがいいや”って。それを微調整するというやり方ですね。

欲しいコードが見つかったときの快感は、“やった!! 大当たり来た!!”って感じ

──それでは、いよいよニューアルバム『樹影』についてお伺いしますが、今回も過去数作と同様に、grasanparkさんが全面的に参加されているのですか?

横山 ’18年の『Going To A Go-Go』、’19の『Pacific』、’20の『NOW』って3枚のアルバムは部分的、曲によってだったのが、昨年のカヴァー・アルバム『好きなんだよ』と今作ではほぼ全曲で関わってもらっていますね。

──トラックからメロディを起こすパターンはよくあるのですか?

横山 けっこう多いですね。自分でも先にトラックだけ作ったりベースラインから浮かぶこともあります。自分のであろうと他の人のトラックであろうと、何かメロディを押し出すきっかけにはなるので、そういう作り方も楽しいですね。あとは頭の中でアレンジごと全部鳴っちゃうこともあるし、曲によって全部違います。

──そのトラックは曲をリードしていくように作っていくのですか? 例えば“これはAメロで、これはBメロで……”みたいな。それともパーツをとにかく作って組み合わせていく感じでしょうか?

横山 Aメロ、Bメロみたいになっていたとしたら、その順序を変えたり、あるいはそのトラックになかったやつを追加したりすることもあります。そのまま寸法通りにできちゃうこともたまにありますけど、基本は編集、編集、編集でやっていく感じです。

実はそういった編集をしながらのレコーディングは初期からやっていて、1枚目のアルバムの収録曲のドラムをサンプリングして作った曲を、2枚目のアルバムに収録したり。そういう自分たちのセルフサンプリング曲がCKBにはけっこう多いですね。

──CKBの楽曲はいわゆるテンションコードを使うことが多いですが、細かいコードが決まってからメロディラインが変化することは?

横山 ありますね。逆もありで、メロディが最初から決まっていて、“このメロディにこのコードじゃ何かもうひとつだなぁ”と思ったときに、そのメロディが有効なままテンションをちょっと変えて部分転調みたいなのを入れたり。何かゾクッとくるような感じにする作業は毎度やりますね。

自分の頭の中で響きは鳴っているんだけど、手で弾けない表現できないってとき、parkくんに“この音(どれかキーになっている音)にトップノートがこれで来るやつで!”みたいに伝えると、“これですか?”って弾いてくれるんですよ。で、“違う!”、“惜しい!”、“それそれ!”って。parkくん、小野瀬さん、高橋さんとかコードが強い人に聞いてます。自分の中で答えはあるんだけど弾けないっていう。すごく推理が必要なんで(笑)。メンバーには相当苦労をかけていますね。

──でも、そのやりとり自体が楽しそうですね。

横山 最高に面白いですね。欲しいコードが見つかったときの快感は、“やった!! 大当たり来た!!”って感じ。その曲がヒットするしないは別として、もう全部獲得したような、その喜びたるや(笑)。それを一緒にできるメンバーがいるってことがいいんですよ。これ、ソロじゃできないんで。

──イメージを伝える際に、“もうちょっと寒い感じなんだけど”みたいに、言葉で伝えることはありますか?

横山 ありますね。寒いとか暖かいとか、もっとオレンジとか。色や湿度で言ったりもするんですけど、そう言って全然違うものが出てきたら逆に良かったときもあるし。勘違いから良いものが生まれることもありますね。

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