【インタビュー】Non Stop Rabbit 矢野晴人(vo、b)圧巻の歌唱力が味わえるメジャー2ndシングル「無自覚の天才」制作過程と、YouTuberバンドの活動を語る!

取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)

バンド活動だけでなくチャンネル登録者数約90万人のYouTuberとして活動。V系ならぬ“Y系”アーティストとして活躍する3人組、Non Stop Rabbit。
そんな彼らがメジャー2ndシングル「無自覚の天才」を7月20日(水)にリリース。タイトル曲はTVアニメ『転生賢者の異世界ライフ』オープニング主題歌に起用された疾走感あふれるロックチューンだ。カップリングの「恋愛卒業証書」、「豆知識」とともにメンバーから制作の様子を聞くことができた。
インタビュー後半では、太我(d)と矢野晴人(vo、b)が組んでいたバンドに田口達也(g、cho)が加入した頃の話。さらに路上ライブを始めて集客が安定したところで爆音が問題で出禁が相次いだ話。そこからYouTuberとして活路を見出して現在に至るまでのストーリーも語ってもらった。
バンドが片手間にやっているというレベルを超えた、YouTuberとの二刀流を続ける“ノンラビ”の快進撃を見逃すな!
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僕らもYouTubeを始めたことで転生したみたいに一気に世界が変わっていった(田口)

──2ndシングル「無自覚の天才」。7月放送開始TVアニメ『転生賢者の異世界ライフ』オープニングテーマとなっています。楽曲制作はどういう形で進んでいきましたか?

田口達也 まず原作の漫画を送っていただいて、それを読みながら曲を作っていきました。僕は何曲も出さず1曲にすべて込めて、“もうこれで!”っていうタイプなんですよ。特にオーダーはなかったんですが、漫画を読み切ったあとに仕上げて送ったら一発でOKもらえたので、わりとスムーズに進めた感じですね。

──ストーリーや主人公ユージの人物像などを思い浮かべながらの制作だったと思いますが、ポイントになった言葉や世界観はありましたか?

田口 ただの社畜でしかない主人公が転生して世界が変わったときに、ものすごい力を持っていて、しかもそれに自覚していない。そこで無双が始まっていくっていうストーリーは、なんか僕らと重なる部分があるなと思っていて。3〜4年前までアルバイトしながら路上ライブをやったりしていたところから、YouTubeを始めたことで、急に転生したみたいに一気に世界が変わっていったので。

ユージはたまたま転生しましたけど、(僕らのように)活動の場所が変わるだけでこんなにその人の価値だったり力だったり能力が変わる。そこを伝えたいと思ったんです。歌詞の《僕ら誰もが秘めたる力を持ったモンスター》っていうのは、実質、誰でも天才っていう、力を持った化け物なんじゃないか。でもそれが場所によってまだ表に出てきてないだけ。露わになってないだけじゃないか?というところから、まずサビが生まれました。そこがポイントになって始まった曲ですね。

──今の居場所では力が発揮できていない人へ“まだ頑張れるよ”と励ましたり、逆にくすぶっている人へ“まだ頑張っていないんじゃない?”って叱咤したり。自身の体験を通じた応援メッセージを感じます。矢野さんと太我さんは、この曲を最初に聴いたときにどんなイメージを持ちました?

矢野晴人 僕も原作の漫画を買って読んだんです。曲を聴いたときに画が浮かぶというか、きっちりオープニングしてる、バシッと決まったなって感じましたね。(田口に)デモをもらってすぐに歌入れをして送り返したので、たぶんその日じゅうには仮歌は入れ終えてました。

太我 曲調やテンポ感を聴いて、どう叩きたいか一瞬で自分の中に出てきましたね。もともとアニメのオープニングを多く手掛けているバンドが好きで、そういう入り口から音楽の世界に入ってるんです。実際にレコーディングも好き勝手に叩いて一発OKみたいな感じでした。すごく楽しく叩けましたね。

──原曲ができたあと、アレンジャーの鈴木Daichi秀行さんには、どういう形で渡すのですか?

田口 まず僕がフルで仕上げて仮歌を入れて、“こういう曲です”っていうのを、レーベル含めDaichiさんにも共有します。ゴーが出たらDaichiさんのスタジオで一緒にレコーディングして、終わりですね。僕のデモってほぼ完成品に近くて、こうしたいというゴールがある状態でスタートするんです。その中で、ドラマーならではのアイデアだったり、ヴォーカルのアイデアをもらうので、そこで多少変わることはあるんですけど、基本的な部分はデモからほぼ変わることはないですね。

──レコーディングに際して新しい楽器やアンプなどの機材を導入しましたか?

田口 Daichiさんのアコースティックギターを使わせてもらいました。YUIさんも使ってたっていうギターです。

太我 ドラムセット自体は変わらないですけど、スネアだけ変えることはよくありました。曲の明るさによってシンバルの(音の)明るさを変えたりもしますね。今回のシングルでは「恋愛卒業証書」はダークな感じのシンバルを選んでいます。スネアもハンマーみたいな太い感じの音がするものに変えて叩きました。

──アレンジからレコーディング段階で特に意識していたものは?

田口 アニメのオープニングを視聴者が観たときに、まず(演奏者が)バンドであることを最初の10秒以内に伝えたかったんです。作曲の段階で楽器から始めるっていうのは僕の中で決めていたし、バンドサウンドを前に出すっていうのは、かなり意識していますね。

あとは映像にどうはめたいかっていう制作側の意図も読んで曲を作るというか、“このキメがあったらサビに入ったときに盛り上げやすくて、映像を作ってる方は助かるだろうな”とか、そういうことは意識してましたね。

──そこまで考えているんですね。

田口 YouTubeやってたならではというか(笑)。

TVアニメ「転生賢者の異世界ライフ」ノンクレジットOP |Non Stop Rabbit『無自覚の天才』
© 進行諸島・SBクリエイティブ/転生賢者の製作委員会

サビでいっさい楽器隊がメロディを邪魔しないという意識がすごくあります(田口)

──矢野さんは、メロディラインを最初に聴いたとき、どう歌おうと考えましたか?

矢野 サビの疾走感がすごく印象的だったので、そこにすべてを持っていきたいと思いましたね。そこまでを落とすわけではないんですけど、気持ち的にはサビに向けて盛り上げていくイメージでレコーディングしました。

──Bメロのところでグッと音程も上がるじゃないですか。そこからサビへの温度感の差はどういうイメージだったんですか?

矢野 一応音は上がるんですけど、そんなになんか……。

──気持ちはまだ抑えている状態?

矢野 そうですね。サビまではっていうイメージでした。

──それは作曲者として意図したイメージどおり?

田口 そうですね。“高い声が高く聴こえない良さ”っていうのもあると思っていて。Bメロで周りのサウンドを抑えてあげることで、Aメロからの疾走感をスッとなくしていく。声は張ってるのに落ち着いて聴こえるのが良いなと思ったんです。そこでメロディの高さを上げたまま、ほかを落とすっていうのはやりましたね。

──サビでの歌唱ポイントは?

矢野 言葉が詰め込まれてるから、そこを流しながら歌っちゃうと逆に疾走感がなくなっちゃうなと思ったので、ひと言ひと言、頭にちゃんとアクセントを置いて、何を言ってるか伝わるように歌うっていうのはすごく意識しました。

田口 《僕ら誰もが秘めたる》は高い声で最初からずっと上(高い音程)にいてもらうんで、そこのキープ。あとはいかに連続する言葉がはっきり聴こえるか。そこだけこだわってテイクを重ねました。

──力強い言葉を使っていて、本当にしっかりメッセージが伝わる、歌詞の聴こえるサビだなと感じます。ドラムのリズム的にはどうでしょう?

太我 基本的なビートはAメロもサビも一緒なんです。そこでAメロは爽やかに軽く刻むだけで、サビではシンバルをオープンにしてガンガン叩いて抑揚をつけるようにしました。こういうテンポ感の曲は、スネアで抑揚をつけちゃうとリズム感がちょっとなくなっちゃう。リズム感を保っておきたいときは、シンバルが一番強弱つけられるんです。

──同じ固まりのサビが2回、3回と出てきます。サウンド的な戦略で考えていたことは?

田口 これは作曲をしたい人に対する裏技でもあるんですけど、僕の場合MIDIで打ち込んでパッと見たときに、音階が山になってるメロディが絶対的に耳に残ると思ってるんですよ。平坦に行かせないというか、もうパッと見でいいんで山になってることを意識してメロディを作るようにしています。音程が右往左往しているので、そのぶんヴォーカルはきついんですけど、耳がグッとそこに持っていかれる音程感っていうのを意識しています。それがまずメロディからの作り方。

もうひとつ、僕らってサビでいっさい楽器隊がメロディを邪魔しないっていう意識がすごくあります。“ドラマーだからサビでカッコいいフィルしたいよね”とかっていうのがない。もうルールとしてヴォーカル以外に“サビは出てはいけない”っていう暗黙の了解をしっかり守ってる3人なんで、サビに全部の力を持っていってます。ギターも余計なことしない。ただコードを弾いて音を伝えて、あとはヴォーカル頼んだ!みたいなのがノンラビなんです。サビは毎回そこを意識ですね。とにかく歌! ヴォーカル!みたいな。

──それは結成したときからのルール?

田口 そうですね。でも、僕ら(楽器隊)からしたら、隙間を狙ってやりに行ってる感じ。例えばサビ前でけっこう太我が派手にドラムを叩いたりするじゃないですか。ああいうのって“サビ入る前にちょっとやらしておいてあげるから、サビは下がってね”みたいな(笑)。

──確かにベースのグリッサンドなどもそうですね(笑)。

田口 そうですね。イントロのスラップしかり(笑)。サビではもう本当に大人しく。

──なるほど、そういう理由だったんですね。またこの曲はカラオケで熱唱したくなるタイプだと思うんですけど、そういう人に矢野さんからアドバイスをもらえますか?

矢野 やっぱり一番はアクセントじゃないですかね。サビのド頭もそうですし、そのあとの《押し込んで蓋して》も同じメロディの入りなんですけど、そこの頭をちゃんと1個1個を押さえることでリズムもキープしやすいですし、ヨレなくなるんじゃないかなと思います。……で、高音は気合ですね(笑)。キーを下げてもらっても全然いいですし。

田口 キーは下げたほうがいいよな。ハルのキーのまま男性が行くと息継ぎがないんで危ないです。

──ベースを弾きながらライブやることになると思いますが、難所となりそうなところや見せ場などは?

矢野 ライブだと歌いながら弾けるようにアレンジしちゃいます。とにかくライブは歌に集中していくようにしているんで。

田口 けど、イントロはスラップがあるから。

矢野 そうだね。そこだけ見せ場をもらって、それ以外は疾走感を意識して弾きながら、しっかり歌っていうところですね。

田口 ギターはとにかくイントロの頭。アコギのフレーズはサウンドもこだわりですけど、リズム面では休符を大事にしてるんで、そこを意識してもらえるといいですね。あとはしっかりドラムを聴くことがギタリストにとって重要な点かなと。一般にドラムとベースみたいに言いますけど、ギターは特にドラムのハイハットをかなり聴いたほうがいいと思います。そこを意識してプレイしてほしいですね。

──ドラムはどうですか?

太我 サビは普通のビートから途中で頭打ちになって、そこからさらにハーフビートに落ちるんですよ。スネアの数が増えて、またさらに減るみたいな感じ。そのリズムの波、行き来が難しいと思うんですが、僕としても、そこはちょっとカッコいいフレーズだなとこだわった部分なので、ぜひチャレンジしてほしいですね。

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