【インタビュー】三浦風雅が語る、1stアルバムでの豊かな歌唱表現。歌い続ける覚悟とその源にある想い

2022.07.15

取材・文 鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)

作詞作業では、たとえひと言でも、平気で一週間が過ぎちゃうんです

──ボーナストラック『君と僕の「I love you」』ではRakeさんとデュエットされていますが、ユニゾンパートでの抑揚やファルセットがピッタリと合っています。かなり細かく歌い方を決めていったのでしょうか?

三浦 これが本当に面白くて、Rakeさんが仮歌を入れてくれたデモを聴いて練習してたんですけど、それを聴き過ぎたせいか、歌い方がRakeさんに寄っていってしまうということが発生しまして(笑)。

──声に親和性の高さを感じたのはそういうことだったんですね。

三浦 レコーディングでもRakeさんがヴォーカルディレクションに来て、「こういうふうに歌おう」とアドバイスしてくださったので、“Rake節”が散りばめられているかなと。

──三浦さんは路上ライブでも他のアーティストとコラボすることが多いですが、相手の声によって歌い方を変えることもありますか?

三浦 わりと気にかけてるかも。正直、声と声が合わないなっていうことはあるんですよ。でも、ガッチリはハマらなくても寄り添えるんじゃないかと思って、一緒に歌うときは相手の良さを消さないように歌っているというか。ウィスパーの表現が得意な方はウィスパーで揃えていこうとか、逆に芯が強い歌い方をされる方だったら僕もそうした方がまとまるなとかを考えながら歌っていますね。

──ちなみに自分の声を客観的に分析するとしたら、どんな部分が強みだと思いますか?

三浦 自分の中ではファルセットが好きで、良いと思っていたんですけど、プロデューサーさんたちからすると意外とそうでもないみたいで(笑)。

でも改めてニュアンス的なところで言うと、語りかける部分だったり、ちょっとかすれ声のハスキーな成分が入る歌い方は個人的には気に入ってます。そこは自分の武器じゃないですけど、そういう“繊細さ”というのはあるのかな、なんて思ったりしながら、より良い声が出ることを願いつつ歌ってます。

──アルバムの作詞についてもお伺いしたいのですが、「思い出を花に添えたら」の詞はYU-Gさんと共作されていますが、どんなふうに進めていったんですか?

三浦 もともとデモの段階では「思い出に花を添えたら」ではなく「卒業の日」という曲だったんです。卒業ソングとして入れる予定だったんですが、僕の中で「未来話」に繋がるアフターストーリーのようなものができたら面白いと感じて。それでYU-Gさんに相談して、もとの歌詞を活かしながらもちょっと加えていってという作業をしていきました。

──「未来話」と繋がっていたんですね。

三浦 「未来話」は、まだあなたのことを好きでい続けている男の心情を描いているんですけど、その男をそのままにしておくのが嫌で(笑)。

どこかのタイミングで次に進めることってあるじゃないですか。幸せなことや苦しかった思い出もひっくるめて良い思い出だったと思えたときに、“今日までありがとう”ってサヨナラを告げられるんじゃないかなと思うんです。そんな想いから「思い出に花を添えたら」というタイトルをつけました。

──作詞をしたあとにタイトルが決まっていったのでしょうか?

三浦 歌詞の中に《思い出に花を添えたら》っていうワードがあるんですけど、このワードが浮かんだ瞬間にもうタイトルにしようって決めましたね。

──作詞をするときはどんな場所やシチュエーションで行なっているんですか?

三浦 家にいるときが多いです。カフェだといろんなものに目移りしちゃって、逆に考えられなくて。

──家で集中してパソコンで、という感じで?

三浦 そうです。家でリラックスして。でもパソコンは使わないです。パソコンだと移動できないじゃないですか。なので携帯のメモに書いてます。出てこないなと思ったらちょっと寝っ転がったりベランダ行ったりして、動きながら書いてますね。

──作詞するときにインスパイアを受けるものはありますか?

三浦 自分が経験してこなかったものは刺激になるんで、意外とやってなかったことにチャレンジすることが多いかもしれないです。しょうもないですけど、例えばひとり焼肉に行ってみたりとか(笑)。あとは全然知らない音楽のジャンルを聴いてみたり。

──音楽からもインスパイアを受けますか?

三浦 特に詞は“この歌詞いいな”って思う瞬間があるんですよね。そうすると、“他の楽曲はどう表現してるんだろう”、“どんなふうに組み立ててるんだろう”っていうのが気になって調べたりします。

──歌詞を乗せるときにイントネーションやアクセントは気にしますか? 《わ》じゃなくて《あ》にしようとか。

三浦 それは気をつけていて、でも、なかなかハマらないときがあるんです。自分でイチから作っていれば単純に自分好みの乗せ方になるんですけど、楽曲提供いただいたものに対して作詞だけってなると、デモの段階で歌詞が入っているので、もうその響きが正解だって脳が思い込んじゃうんですよ(笑)。だから自分が違う感じに書きたくなったときに悩みます。

──響きのジャッジは歌って確かめるんですか?

三浦 そうです。作り終わったあとでも歌いやすくなかったらやめたり、全然変えますね。でも時間がかかっちゃって……例えば、「思い出に花を添えたら」の《この胸にしまってる》の語尾を《る》と《よ》で悩むとするじゃないですか。そうすると平気で一週間過ぎちゃうんですよ(笑)。

言葉選びもそうで、《瞳に映る全てが夢となって/切ないけれど》というのが、《悲しいけれど》だと本当に悲しいだけだけど、《切ないけれど》はどこか少し希望がある感じがする、悲しいだけじゃない表現になりますよね。言葉ひとつでニュアンスが全然変わってくるので、難しいなと思いながらもこだわってるんです。

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