【インタビュー】三浦風雅が語る、1stアルバムでの豊かな歌唱表現。歌い続ける覚悟とその源にある想い

2022.07.15

取材・文 鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)

支える部分を鍛える。良い喉の状態を頭でイメージする

──スクールでのヴォーカルレッスンで目からウロコだったことはありますか?

三浦 ブレないように歌うアプローチを教えてもらったことです。僕はずっとコブクロが好きだったので、歌唱表現の中に現れる“ちょっと魂がむき出しになる瞬間”みたいな部分を大事に歌っていたのですが、ダンスも意識した歌い方は新しい発見でした。

──ブレずに歌うとは、つまり腹筋を鍛えるということですか?

三浦 いえ、腹筋と喉の筋肉は繋がってるので、腹筋に力が入ると、喉がどんどん締まっていっちゃうんですよ。なので本当は背筋を鍛えることが大事なんです。よく腹式呼吸って言うんですけど、それはお腹を膨らますんじゃなくて、背中が膨らんでいくほうが正解で。僕はそのことをメジャーデビュー後に通いはじめたボイトレで教わったんです。

──ボイトレに通ってるんですね。通いはじめたきっかけは何だったのですか?

三浦 実はデビューしたあとに全然声が出なくなっちゃった時期があって。EXPGが終わったあと、トレーニングをまったくせず自分の好きなように歌っていたんです。そしたらどんどん声が出なくなってしまって……これはやばい、と病院に行きました。病院の先生がお薦めしてくれた場所に行ったりする中で今のボイトレに出会って。ここはいろんなシンガーの方も通っているんですが、自分としても一番合ってるなと感じます。

──通う中で、特にここが伸びたと感じる部分はありますか?

三浦 “息の量を調整しながら歌う”というところ。 ウィスパーな表現をしようと空気を出しすぎると息がもたなかったりするので、“どの量の息をどの分だけ使うか”の配分がすごく大切なんです。そういった、ある意味での“繊細さ”は通う中でより意識するようになりました。

──高音の出し方についてもお聞きしたいのですが、「Flower」は出だしからハイトーンです。高音を出すときは、身体の使い方をどのように意識して歌っているのですか?

三浦 高ければ高いほど空気がちゃんとあって、身体の支えがないと声が出ないので、肺活量は注意していました。あと、響きの位置ですね。 上に行くと抜け過ぎちゃうし、下に行き過ぎると重くなっちゃうので、自分の中で響きの位置を確認しながら歌っていたんですけど。これ、伝わりづらいですかね……。

──喉のコントロールが肝ということですか?

三浦 そうなんですよ。例えば、めちゃめちゃしゃがれ声で歌う方もいらっしゃるじゃないですか。でも自分はそれを聴くだけで喉が痛くなってきちゃうので、特にライブ前は、響きが良いと感じる方の声を聴いて喉の状態を上げていったりしてます。「Flower」は自分の一番良い喉の状態を聴きながら歌に入ったんですよ。じゃないと出ない! と思って(笑)。

──そういった意識や気持ちの状態で歌のクオリティは左右されますか?

三浦 そうですね。特にコロナ禍でライブができなかったときは、何もしてないのにしゃべるときの声がつらかったりとか、喉に力が入ってる感じがありました。やっぱり精神面からくるものはあるなと感じましたし、自分の心が穏やかじゃないと声の伸びも悪いんですよね。これってホント不思議なんですけど。

──イマイチ歌の調子が出ないというときは、まず心を整えるんですか?

三浦 原因によって対処法は分かれますけど、単純に喉を消費しているときは喉のケアをします。でも喉は万全という場合は、心なのか、はたまた病院に行かないと分からないぐらい繊細な声帯の部分なのかとか、状況によって自分のケアは使い分けていますね。

──普段から喉のケアはしていますか?

三浦 僕は乾燥に弱いんです。一時期乾燥に過敏になりすぎて加湿器が家に5台ありました。

──5台!!

三浦 ……なんですけど、結局全然だめだったんです(笑)。それで、一番良いのは象印の加湿器。ポットみたいな形をしているんですけど、お薦めです。スチーム式で。

──常に炊いてますか?

三浦 常にですね。最近は湿気が多くなってきたと感じて炊かなくなったんですけど。そのせいで今ちょっとガラガラ声です(笑)。それくらい敏感なので、加湿器は常に炊いてます。あとは声帯に結節ができてるんで、ひどくならないように薬を飲んでます。それは喉ケアというより普通に病院の処方箋を飲んでますという感じです。

──レコーディングやライブでの愛用ドリンクはありますか?

三浦 スロートコートティーを絶対飲んでます。 あと、グミを食べてます。「タフグミ」っていうグミなんですけど、ソーダとコーラとエナジードリンク味が入ってて。コンビニで売ってるんですよ。

──レコーディングのときも愛用していますか?

三浦 レコーディングでもライブでも食べてます。舌の下にグミを置いて、グミの上に舌が乗っかってる状態で歌ってるんです(笑)。

──その裏技は初めて聞きました。どんな効果があるんですか?

三浦 舌が上がるんで歌いやすくなるんです。強制的に物を入れて根っこをあげてるっていう(笑)。喉が開くのでだいぶ歌いやすくなります。あと、舌の操作が楽になるんですよ。

──声を出す前やライブ前にやっているルーティンはありますか?

三浦 腹式呼吸の練習をしてますね。空気を溜めて、支えを感じて、ストローで吐く。ちっちゃい短いストローでフーーーッと。息の量を調整しながら、でも支えは残しつつ、息を出す方向も確認して。あとは身体のストレッチをして、もしよっぽど喉の状態がひどかったら針を打ちに行きます。

──身体作りはしていますか?

三浦 筋トレ大好きだったんですけど、一切しなくなりました、逆に。

──それは先ほどのお腹に空気を入れるという話に繋がる?

三浦 そうですね。やっぱり腹筋の筋トレをしたあとって筋肉痛になって伸ばすのキツいじゃないですか。そうすると空気も入らなくて、そういう抵抗をなくすためにも、筋トレをあえて一切しないという手段を選びました。

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