【インタビュー】韓国出身の歌い手Raon、日本デビューシングル制作秘話とパワフルな歌声のケア、アニソン愛を語る

取材・文:田代智衣里(Vocal Magazine Web)

レコーディングは約2000テイク録りました

──「キツネノマド (Queen Fox)」は、昔からの説話「狐の窓」がテーマになっているんですね。

Raon 私は“百鬼夜行”をコンセプトにオリジナル曲を作っているのですが、「キツネノマド (Queen Fox)」はそのプロローグになる曲です。どうやって妖怪を見つけるのか……という世界観になっています。

──3月16日には韓国のプロデューサーTAKさんがリミックスした「キツネノマド(Queen Fox)(TAK Remix)」がリリースされました。

Raon TAKさんは韓国で活動している方なんですが、この曲にK-POPの要素を加えてくれました。歌詞は日本語、モチーフや世界観も和風なのでK-POPとJ-POPが絶妙なバランスで融合していて、今までにない楽曲だと思っています。

──YouTubeにはSpecial Coverとなるセルフカバー動画も投稿しています。

Raon “自分のオリジナル曲を自分がカバーする”ということはすごく楽しい経験で、コメントにも“自分の曲を自分でカバーするなんて面白い”って書き込みがいっぱいありました。すごく新鮮でした。

──「キツネノマド(Queen Fox)」はRaonさんが日本語の作詞にも携わっていますが、歌う際にカバー曲との違いは感じますか?

Raon オリジナル曲もカバー曲も歌詞に込められたメッセージをちゃんと伝えるという面では同じなんですが、自分が書いた歌詞は“自分の思いを乗せて歌う”というところで違いも感じましたね。

──「キツネノマド(Queen Fox)」で歌唱面の難しさを感じた部分はありましたか?

Raon 日本語の「す」、「つ」、「ず」の発音がすごく難しかったです。初めてのオリジナル曲で、さらにデビュー曲だったのですごくプレッシャーを感じたんですけど、そういった自分のネガティブな感情が曲に反映されないように気をつけました。

──歌詞を書くとき、苦手な発音ができるだけ入らない言葉を選ぼうと考えることもあったのでしょうか?

Raon 発音が難しくて歌詞を変えたところも何ヵ所かあります。それが何だったのか今は覚えてないんですが、歌うのが大変で変更するところもありましたね。

──Raonさんの歌はオリジナル曲もカバー曲も、日本語の言葉に対する歌唱の感情表現が繊細に伝わってきます。

Raon 歌手として一番気にしないといけないのは、歌詞の内容をちゃんと理解して、感情を込めて歌うことだと思っているんです。これはカバー曲もオリジナルも同じだと思うので、歌詞の内容をちゃんと理解して歌おうと心掛けています。

──地声でも歌える音程をあえて裏声で歌う場面も多いですが、歌唱アプローチはどのように考えていますか?

Raon 私はパワフルな歌声が強みだと思っているんですが、ずっとパワフルに歌うとつまらなくなってしまうので、表現として裏声も使っています。強いところは強く、弱いところは弱くバランスを調整して、メリハリをつけることにいつも気をつけています。

──強弱のバランスはレコーディングしながら調整しますか?

Raon 楽曲の全体に関するメモは事前に書くのですが、繊細な感情表現はレコーディングしながら、実際に歌いながら調整しています。

──今回レコーディングでは何テイクぐらい録りましたか?

Raon 約2000テイク録りました。トラックは数十個、レコーディングは6時間かかりました。

少しだけネタバレになるんですが、今、2ndデジタルシングルをレコーディングしているところで、これには4日間かかっています。2ndデジタルシングルはいつものスタジオで録っていて、自分自身でディレクションをやっているので、そのぶん時間がかかっています。

──「キツネノマド(Queen Fox)」のレコーディングは1日で録り終えたのですか?

Raon 「キツネノマド(Queen Fox)」は1日で終わりました。いつもとは違うスタジオでレコーディングしたので環境も変わりましたし、周りにたくさんのスタッフがいて緊張したり、プレッシャーを感じていました。ディレクションもセルフではなく、別でやってくれる人がいました。

──2ndデジタルシングルも楽しみです。Raonさんの楽曲はバックコーラスも印象的ですが、コーラスラインはご自身で決めていますか?

Raon カバー曲の場合は曲を聴きながら、どこにコーラスを入れるか決めていきます。今回の「キツネノマド(Queen Fox)」はガイド曲をいただいたんですけど、歌ってくださった方がすごく細かくコーラスを入れていたので、それも参考にしました。実際にコーラスを録ると、トラックをいっぱい重ねることが楽しくて、どんどんアイデアが浮かんできます。

──ご自身でもDAWに触ることはありますか?

Raon ピッチやリズムを直すエディットは、自分でやっています。他の方に任せると、“やっぱり自分でもっと完璧に直したい”と思うことがあるので。ただ、ミックスやトラックダウン、マスタリングに関しては他のエンジニアさんに任せています。

──今までカバー曲を多数投稿してきたRaonさんですが、今は「キツネノマド(Queen Fox)」をカバーする人がたくさん増えています。それに対してはどう思いますか?

Raon 他の方々が私の曲をカバーしてくださることはとても嬉しいですし、ありがたいことです。すごく光栄だと思っていて、幸せです。2日に1回ぐらいはYouTubeで「キツネノマド(Queen Fox) カバー」と自分で検索して、新しいカバー動画を探しています(笑)。

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