【インタビュー】韓国出身の歌い手Raon、日本デビューシングル制作秘話とパワフルな歌声のケア、アニソン愛を語る

取材・文:田代智衣里(Vocal Magazine Web)

韓国出身の歌い手・Raonが、ついに日本メジャーデビューを果たした。登録者数426万人を超えるYouTubeチャンネルにはJ-POPやアニソンのカバー動画が多数投稿されており、そのパワフルな歌声でアニソンファンからも熱い支持を得ている。

2月9日(水)にリリースされたデビュー曲「キツネノマド (Queen Fox)」は日本のボカロPであるGiga&トラックメイカーのTeddyLoidが制作に携わり、3月16日(水)リリースの「キツネノマド(Queen Fox)(TAK Remix)」は韓国のプロデューサーDJ TAKが手掛けた。Raonの作品は日本と韓国のボーダーレス・プロジェクトとなっており、「キツネノマド (Queen Fox)」の作詞にRaon自身が参加していることにも注目だ。

ヴォーカル・マガジン・ウェブでは、Raonの歌力の背景にあるアニソン愛、カバー動画撮影の裏側、日本デビュー曲となった「キツネノマド (Queen Fox)」の制作秘話を訊いた。

『鋼の錬金術師』などのアニメで声優さんが歌っていたことがきっかけ

──日本のアニメソングを多数カバーしているRaonさんですが、最初にアニソンに興味を持ったきっかけは何でしたか?

Raon 小学生の頃の夢が声優になることで、そこから日本のアニメを観るようになり、自然とJ-POPやアニソンにも興味を持つようになりました。

──では、学生時代から日本の音楽も聴いていたんですね。

Raon 周りの友達がK-POPを聴いているとき、私は日本のアニソンやドラマのサントラをずっと聴いていました。高校時代には学園祭でアニメ『ケロロ軍曹』のテーマソングを歌って、賞をもらったことがあります。

──将来の夢が声優から歌手に変化したきっかけはありますか?

Raon 『満月をさがして』(フルムーンをさがして)という種村有菜さん原作のアニメが韓国で大ヒットしたんですが、そこで声優さんがアニソンを歌っていたんです。それをきっかけに『鋼の錬金術師』など他の有名なアニメでも声優さんたちがテーマソングを歌っているのを聴いて、歌手になりたいと思うようになりました。

──今の自分の歌唱スタイルに影響を与えたと思うアーティストはいますか?

Raon NANOさんです。NANOさんはもともと歌い手だったんですが、今はアーティストとしても活動しています。この前、YouTubeチャンネルでコラボできたことも嬉しかったです。

──Raonさんが動画投稿を始めたきっかけは何でしたか?

Raon ありのままの自分の姿で、大好きな曲を歌って楽しんでいる様子を記録として残しておきたいと思ったことがきっかけです。

“自分の人生の中で今日が一番若いとき”という韓国の言葉があるんですけど、今この瞬間に好きな歌を歌って楽しんでいる自分の姿を記録として残しておいて、将来その映像を観ながら過去を思い出したくて。

──投稿するカバー曲はどのように選んでいますか?

Raon ファンの方からのリクエストで選ぶことも多いんですが、何よりも自分が楽しく歌える、うまく歌える自信がある曲を選んでいます。

──動画投稿を始めるまでに、オーディションを受けるなど、歌手になるためにチャレンジしたことはありましたか?

Raon 趣味として歌い始めたので、オーディションを探したことはなかったですね。本格的に歌手活動を始める前は歯科助手として働いていて、アーティストになるためにひたすら勉強していました。

──これまでにヴォイストレーニングをやったことはありますか?

Raon ヴォイストレーニングの経験はありません。知り合いからアドバイスをもらうことはあるんですが、専門家の方に頼んでトレーニングをしたことはないです。

──普段、歌声を磨くためにやっている自主トレーニングはありますか?

Raon どうやったら気持ちよく声を出すことができるのかをYouTubeで調べたことはあります。でも、一番大事なのはトレーニングよりも自分に自信を持つことだと思っているんです。

──自信を持って歌うために、準備することはありますか?

Raon いつも収録するスタジオに、メモを貼っています。もともと完璧主義で無理してしまうので、あんまり力を入れすぎないように。“もっと楽しみながら歌おう”と書いたメモをスタジオに貼っておいて、それを見ながら自分のメンタルを整えています。

──楽曲の歌詞に歌唱アプローチのメモを書くこともありますか?

Raon 歌詞にもよくメモを書きます。例えば、“歌い始めはささやくように”とか、感情をどう入れるかをメモしておきます。私はONE OK ROCKのTakaさんが大好きなんですけど、“Takaさんみたいにサビを強く歌う”と書くこともあります。

──動画にも写っているマイクの向こう側には、そのメモが貼られているのでしょうか?

Raon マイクのすぐ前にモニターがあるんですが、モニターの隅っこにそのメモを貼っています。

──これまでカバー曲をたくさん投稿してきたRaonさんですが、ついに2月9日(水)に日本メジャーデビューを果たしました。現在はどんな気持ちですか?

Raon 日本デビューの実感はまだありません。でも、今までカバー曲に集中していたので、アーティストとしてメジャーデビューしてからは、自分自身の認識や考え方がちょっと変わった気がします。これからはもっとオリジナル曲をたくさん歌いたいという気持ちが強くなりました。

──2月9日にリリースされた「キツネノマド (Queen Fox)」はボカロPのGigaさん、トラックメイカーのTeddyLoidさんが制作に携わっていますが、最初にトラックを聴いたときはどんな印象でしたか?

Raon あまりにもクオリティが高くて、感動しました。すごく丁寧に作ってくださったんだなぁ……と衝撃を受けました。

──トラックに対して、どんな歌い方をしたいと思いましたか?

Raon メジャーデビュー曲だったので、自分の意気込みをちゃんと表現したいと思いました。これまでよりもパワフルに、力強く歌いたいと思いましたね。

──この楽曲でもレコーディング前にメモを書きましたか?

Raon デビュー曲なのですごくプレッシャーを感じていたんですが、今回メモは書かなかったんです。この曲を聴いてくれるファンのことをイメージしながら、メンタルトレーニングをしてからレコーディングに挑んだので、イメージ通りのパワフルな声で歌うことができたと思います。

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