文:本山nackeyナオト(SMDボーカル教室)
おはようございます! ヴォイストレーナーの本山nackeyナオトです。生徒さんからは【ナッキー先生】と呼ばれています。
ロック・ヴォーカルには欠かせないハイトーンの発声と、バンドで歌うことにフォーカスして連載しているこの講座も、今回含めあと2回で終了だ。
だからこそ、みんなにお伝えしたいことがある。
実際の歌唱力を上げるには、ヴォイストレーナーの先生についてもらうのが一番だ。ぜひ、リットーミュージック『歌スク』で、まずは無料体験からチャレンジしてほしい。
一流で優秀な先生ばかりなので、あなたの挑戦する目的・ジャンルに合った先生を選ぶといいだろう。何事も「プロからちゃんと習う」のが一番の上達の秘訣だ。特にハイトーンやエッジをかけたバンドヴォーカルには「プロ」から習うことを強くお薦めする。
なぜなら、僕たちヴォーカリストの楽器は大切な「のど」だからだ。間違った歌い方をすると大変危険なのだ。これまで「自己流」でやって、声帯ポリープや声帯結節になって手術や故障をしたヴォーカリストを筆者は何人見てきたことだろうか。
この連載を読んでくれているみんなには、絶対にそんな目に遭ってほしくない。だからまずは無料で体験してほしい。筆者は待っています!
本山nackeyナオト先生のページはこちら!
さあ、今日の連載も最後までついてきてくれよな!
バンド・ヴォーカリストに必要なボイトレの知識1
〜「しゃくり」と「フォール」について〜
今日はヴォーカリストのための必要なスキル、特にロングトーンや語尾で使うヴォーカルテクニックについてのレクチャーから始めよう。
みんなは「しゃくり」、「フォール」って知っているかな? そう、カラオケで歌うときの加点になるテクニックだよね。言葉は知っているけど「しゃくり」、「フォール」って実際には何!?って人も多いと思う。またカラオケで歌っているとき、まったく意識せず「天然」で加点されて喜んでいる人もいるのではないかな? そのレベルはもう卒業しよう。
今回のこの連載では、実際の歌唱方法からトレーニングポイントをレクチャーしたい。
「しゃくり」、「フォール」のスキルを身につけると、かなりの「歌うま」になれ、当然バンドでもカッコよく歌えるだろう。また、カラオケの採点も高得点を連発することができるはずだ。では、今日も楽しく一緒にトレーニングしていこう。
【しゃくり】って何?
まずは「しゃくり」とは何か?というところから解説していこう。
この「しゃくり」って言葉、実は音楽用語ではない。でもカラオケではよく見る(聞く)フレーズだよね。学校の音楽の授業では絶対に出てこない言葉だし、みんなも何となくわかるようでわからないんじゃないかな? また、できているのか、できていないのかもわかりにくいよね。
「しゃくり」とは、メロディラインのピッチ(音程)を低いピッチから発声して、本来のピッチに戻すヴォーカルスキルのこと。本来のピッチより、少し遅れて音を下からしゃくり上げることで、「しゃくり」と呼ばれるようになったのだ。
この連載を読んでくれているみんなはバンドだけではなく、歌うことそのものが好きだったり、カラオケで楽しく歌う人もたくさんいるよね。
「しゃくり」がしっかりと理解できるようになると、本当に歌の幅が広がる。また、前述したようにカラオケ採点でも高得点を出せるようになるのだ。
実際にスクールのレッスンなどで筆者が思うのは、「しゃくり」をまったく意識していない人が多い。またピッチ(音程)が甘く、コントロールできずに勝手に入ってしまう人も多い。
「しゃくり」をスキルとしてしっかりレッスンし会得すると、歌唱力・表現そのものが断然アップする。
「しゃくり」が自然に入ってしまうけど加点するからいい?
カラオケの採点機能で、意識してなくても「しゃくり」が入って「加点」されることに喜んでいないかな? こういう場合は、初音のピッチ歌い出しが低く、そこから正しいメロディラインに合わせにいったとき、偶然にも合っているだけだ。
このような場合でも、「しゃくり」がカウントされてしまうので、カラオケでは「加点」される。だけどそれはピッチが甘い証拠だったりすることもある。
なので「しゃくりは何も考えなくてもできている」という人は、実はNGなのだ。音感のトレーニングを頑張ろう。
「しゃくり」は、本来のメロディラインのピッチをコントロールしながら、表現力として4分の1音くらいから、半音や1音、3度や、1オクターブ下から発声していこう。フラットから入って、実際の歌メロの音符に移行していくのだ。
ピッチを正確にすべてそのまま歌うと、抑揚のないボーカロイドのような歌声になるからね。そうすると感情や言葉の意味も伝わらないし、ロックスピリッツは感じない。表現力として、自分でコントールして「しゃくり」をマスターしよう。
実は(特に日本の)ポップスやロック、歌謡曲を歌う上で、抑揚の部分での基本のヴォーカルスキルが「しゃくり」なのだ。しっかりトレーニングしていこう。
動画①:簡単でわかりやすい「しゃくり」テクニック実践編
「しゃくり」の実際のトレーニング方法
動画①で「しゃくり」がどんなものかはわかったと思う。実際のトレーニングは自分の「しゃくり」をヴォイストレーナーの先生に聴いてもらうのが一番だ。
ひとりでトレーニングする場合、その聴いてもらう人を自分にしよう。自分で実践して録音する。そして自分の「しゃくり」を聴いて、しっかりできているか確認するのだ。
カラオケの採点機能で視覚的に「しゃくり」を習得する方法もあるが、筆者はあまりこれをお薦めしない。なぜなら音楽は耳で聴くものだから「視覚」での感覚に頼ってほしくないのだ。
ただ、初心者の場合「しゃくり」を聴くだけでは、自分で合っているのか、できているか、できていないのかという判断が難しいだろう。なので、この練習は「しゃくり」の感覚をつかむまでという条件付きでOKだ。
「しゃくり」は、耳が良くないと(ピッチ・音程の高低を聴きとる力)聴き取れない場合が多いのだ。実際のメロディというよりも、フェイク音に近いだろう。レベルの高い「しゃくり」やカラオケで100点を出すには、まずは、耳で「しゃくり」を聴き取れるようになることが必要なんだ。
動画で「しゃくり」を聴き取ろう!
まずは「しゃくり」を聴き取れるように耳を鍛えていこう。楽曲はナノ feat. MY FIRST STORY「SAVIOR OF SONG」だ。
《 ♪ I look across a raging warand feel the steady beating of my heart》
歌い出しからテクニック満載だ。 《across》のところが「しゃくって」いるのがわかるだろうか。
《 ♪ 嵐の前の静けさに 刃を振り下ろしていくんだ》
この《嵐》の部分はわかりやすいかな。3度下から上げているのだ。この楽曲はしゃくりまくっているので、ぜひ聴きと取ってほしい。
2023年2月15日に発売となったばかりの、GLAYの61枚目のシングル「限界突破」。TERUは「しゃくり」が多いヴォーカリストの典型だ。この新曲も「しゃくり」全開なので、ぜひ聴き取ってほしい。
他にもB’zの稲葉浩志やL’Arc~en~Cielのhyde、LUNA SEAのRYUICHIなどのロック系シンガー、さらにアニソンの女性ヴォーカリストなど「しゃくり」のテクニックを使う歌い手は多い。