パワフルヴォーカル! “メンバーやオーディエンスを魅了する歌声”大作戦!【集中連載】『ロック・ヴォーカリスト“THE BIBLE”』Vol.2
2022.07.23
文:本山nackeyナオト(SMDボーカル教室)
写真:ヨシダホヅミ
心を揺さぶる歌声を発声するために必要なレッスン方法2
【抑揚】
抑揚をつけるには、声量のコントロールを練習しなければならない。ここでも、まずは息の送り方のトレーニングから入ろう。歌は強弱の差があるほど印象に残るからね。テクニックとしては、アクセントをつけたいメロディラインを歌う前に、少し声量を下げる。
人間の脳の構造上、一定の音圧レベルより音量を下げると違和感を感じるのだ。違和感を感じると意識が向く。当然、オーディエンスやバンドメンバーも歌へ意識が向く。意識が歌に向いたところで、声量をしっかり出し歌が盛り上がると、より印象に残って曲の魅力を最大限に伝えることができるのだ。
ロングトーンとは?
ロングトーンとは、声を長く出し続ける発声方法だ。腹式呼吸を始め、ボイトレのスキルが凝縮されたトレーニングなので、ロングトーンを安定して発声できるようになれば、ボイトレ初心者も卒業だ。
しっかりと安定したロングトーンを発声するには、まず息をゆっくり長く吐き続けられなければならない。腹式呼吸がしっかりとできていないと息のコントロールもままならない。ベーシックなトレーニングだけど、やってみるとけっこう難しい。基本的にはロングトーンは中~高音域で使うとヴォーカルラインがカッコよくなる。裏声を鍛えると、より映えるテクニックだ。
ロングトーンを得意とするヴォーカリストは、ホントに歌唱力そのものがある人が多い。ONE OK ROCKのTakaなんかそう。Superflyの越智志帆、Official髭男dismの藤原 聡、Mrs.GREEN APPLEの大森元貴、[Alexandros]の川上洋平など数えきれない。どのヴォーカリストも聴き心地のいいロングトーンだ。このロングトーンができれば、バンドデビューにまた一歩前進だ。
ロングトーンがしっかり発声できると、声が不安定に揺れることがなく、一定の音程を保つことができ、聴き心地の良い歌声になる。ロングトーンをマスターしないと安定した発声ができない。そればかりか、次回以降に教えようと考えているヴォーカルテクニックのビブラートも安定しない。
ロングトーン・ボイトレレッスン
腹式呼吸で発声する(横隔膜を下げるイメージ)
パワフルにロングトーンを発声するには腹式呼吸での発声が向いている。肺の上部で息を出し入れする横隔膜を上に上げる呼吸は、ロングトーンに有効に使える空気の量が少ないからだ。さらに肩や首、ノドに力が入り過ぎてしまい、喉が圧迫されて長く息を吐きにくくなる。
ロングトーンのレッスンをする前に、もう一度、腹式呼吸の確認だ。お腹ではなく丹田で呼吸できているかをイメージしよう。息を吸ったときに肩が上がるなら、それは肺上部の呼吸になっている。熟睡しているときは自然と腹式呼吸になるので、腹式呼吸のイメージがつかめない人は、最初は寝てやってみてね。
吐く息を一定に
ロングトーンの発声には、吐く息の量を一定にすることが必要。常に一定の量で息を吐くことを意識しよう。息が続かないときは、出だしで多く息を吐いてしまっている場合が多い。
ロングトーンの発声で、初心者だと最初は10秒くらいで息が切れると思う。吐く息の量を一定に保つことを意識しつつ、徐々に秒数を伸ばしていくためにお薦めなのがロングブレスの練習だ。声は出さずに、息だけで長く吐き出せるように練習しよう。息を歯と歯の間から「スー」と出すオーソドックなトレーニングだけど、やってみると案外安定させるのは難しい。まずは息だけのトレーニングで安定させてみよう。最初は10秒から始めて、目標は60秒だ。
ロングトーンはボイトレの基本
実は筆者のスクールでは、最初にロングトーンを聴いて、その方のレベルを見極めている。いろいろなスキルがギュッと詰まっているからだ。ロングトーンでしっかり発声できれば、メロディラインの語尾が抜けて、聴きごたえのあるパワフルな歌声になれる。