パワフルヴォーカル! “メンバーやオーディエンスを魅了する歌声”大作戦!【集中連載】『ロック・ヴォーカリスト“THE BIBLE”』Vol.2

文:本山nackeyナオト(SMDボーカル教室)
写真:ヨシダホヅミ

ボイトレ常識6つのウソ:えっ! 耳を塞いだほうがよく聴こえる!?

 音程(ピッチ)トレーニングを続けていこう。
さらに有効なトレーニングを紹介しよう。それは前述した骨伝導を使って音を聴いていくトレーニングだ。実は骨伝導で音をとるのは、晩年の聴力を失ったベートーヴェンも使っていた手法だ。タクトを口にくわえてピアノに当てて音を聴き分けていたそう。練習方法は片方の耳を塞いで、ハミングから練習する。これも動画のほうが圧倒的にわかりやすいので、動画を参考にしてほしい。

動画③【ベートヴェンの音感トレーニング、イヤートレーニング2022VERSION】

 先の動画2本と合わせてトレーニングを毎日こなせば、圧倒的に音感が良くなる。ほかに知っていてほしいのは、ヴォーカリストの場合、絶対音感よりも相対音感が必要不可欠で大切だということだ。相対音感とは、ひとつの音に対して別の音が何の音かを聴き分けるスキルだ。これも動画で楽しく判別してほしい。

動画④【相対音感テスト】

発声のメカニズム「響き」を理解しよう。発声=演奏

 ヴォーカリストは声が楽器。バンドでは唯一、自分自身全身が楽器だ。声が出るまでにはすっごく大事な3つの流れがある(vol.1参照)。

 まずは声=息であるということ。息を送って声帯で振動させて音声にする。今回はそのあとからの解説。声が響く場所はどこか……ということだ。
 では、響きって何だろう? 楽器はすべてこの響きを利用して、音を増幅させている。一番わかりやすいのは「アコースティックギター(以下アコギ)」だ。前述した通り「発声」は「演奏」だ。「アコギ」から音が出るまでをイメージしよう。アコギのボディは空洞になっているよね。この空洞を利用して音を大きくしている。弦をはじいたその振動がギターの表板や裏板を伝わり、空洞のボディの中で共鳴して音を増幅させるのだ。トンネルの中で声を出すとすごく響く。同じことがギターのボディの中で起こり、穴から抜けて響きのある良い音になるということ。ヴォーカルもまったく同じ。

①ギターの弦をピックで弾く=声帯に息を送る
②弦が振動する=声帯で振動する
③ギターのボディの空間で共鳴させる=口や鼻や咽喉の空間で共鳴

 だから発声=演奏なのだ。違うのは、楽器は②③を勝手にやってくれる。弦さえ張れば音は出てくれる。声という楽器は使い方で変わり、力が入り過ぎてかすれたり、息が抜け過ぎてひっくり返ったりする。さらにしっかり理解してほしいのは、弦は切れても代えが効く。声帯はそうはいかない。
 筆者は野球が大好きで中学の部活は野球部だった。野球部の練習はまず声出しからやらされる。部活をしていなくても「もっと大きな声で!」、「しっかり声を出して!」……。こう大人に言われた経験はみんなにもあるよね。青春の1ページとしてはいいけど、発声のプロになってみると、運動部の声出しは「活舌」も悪くなるし、かなり危険だ。とても正しいとは言えない。

パワフルな声量を作るには「共鳴」を味方につける

 もう、みんなもわかったよね。「パワフルな声」=「頑張って出した声」ではない。「頑張って出した声」は怒鳴り声や“がなり声”になりやすく、ノドそのものを傷めることもあり、とても危険だ。ギターだってまったく同じ。力任せに強く弦をはじくとどうなる? 良い音は鳴らないよね。そして力任せに思いっきりはじき続ければ、弦は切れるだろう。頑張って声量を上げるのはとても危険なんだ。

まずは基本の発声「鼻腔共鳴」を会得しよう

 多くのプロヴォーカリスト、プロシンガーはどこから声を出すか知っているかな? 「当然、口でしょ」という声が聞こえてきそうだけど、正解は「眉間」から発声する。もちろん、これはイメージだ。その共鳴の仕方を鼻腔共鳴という。この練習方法も動画のほうが圧倒的にわかりやすいので、まとめてみた。

動画⑤【ロック・ポップス歌い方ド定番! 鼻腔共鳴をマスターしよう】

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