すぅ、あいにゃん(SILENT SIREN)、6年ぶりのアルバム『TRIANGLE』全曲のヴォーカル表現と全国ツアーへの想いを語った大ボリューム・インタビュー!(後編)

“国語の教科書”って感じの雰囲気を出したくて。(すぅ)

──次が「棘にハチミツ」。こちらはドラマ『黒崎くんは独占したがる』の主題歌です。書き下ろしということですが、愛ゆえの独占欲という歪な感情をどう歌に落とし込もうと考えていましたか?

すぅ ハチミツっていう言葉がタイトルにも入ってるし、原作のサブタイトルも『〜はじめての恋は甘すぎて〜』なので、甘ったるい感じを出したいなと思ってました。リズム感をちょっとだけうしろに寄せて歌って、まったりとした感じにしたし、ライブでもわりとそういう意識をしてますね。だけど“棘”の部分をちゃんと出したかったので、サビでは甘さよりも尖った感じを出せるように意識して歌っています。

──その“棘”の部分はジャストに近づけて?

すぅ そうですね。逆にサビの《甘さに》の《ま〜さに〜》で裏だとちょっと気持ち悪さもあるので、ジャストに戻して。《あなたは甘い》とか、《もう逃げられないよ》とか、それこそAメロは、ちょっとうしろに遅れるくらいにしています。

あいにゃん 良い曲ですね。やればやるほど良い曲さが増してくる。

すぅ 書き下ろしって作品のイメージがめちゃめちゃ付いちゃうんです。その作品を汲み取って歌詞を書いたり曲を作ったりしてるんですけど、作品のためだけではなく、自分たちの曲としてすごい馴染んできたというか。自分ごとのように感じられるようになってきています。

あいにゃん 16年やってきて、書き下ろすってやっぱり難しいなって、すぅが苦戦してるのを見てきたので、「KETTO」も「棘にハチミツ」も、どっちも自分たちのものにしていて、共感もできてっていう曲になって、すごいなと思ってます。この《永遠の罠 I wanna また》って、響きで決めてたよね、確か。

すぅ そう。ここはけっこうお気に入りポイントです。

──もちろん台本、脚本があって下地の物語が当然あったにせよ、メロディと歌詞とが完璧に合ってないですか、この曲。

すぅ うん、確かに。コンビネーションだね。

あいにゃん 最初はこれクボくんがメロを考えて。“新しい!”って思ったんですよね。サイサイでこのコード進行というか、ダークネスというか、そこまでポップじゃない感じが、“おお、新しい!”って思って。そこにすぅが歌詞を乗せてすごくマッチしたというか。

──ベースだけでなく、リズム隊として重心を少し下に置いた感じで考えましたか?

あいにゃん そうですね。だいぶ下げながらうしろで支えてる感じですね。スライドとかもスッて行くんじゃなくて、けっこう重ために弾いたりとか。弾いていて本当に気持ちいい曲だなって思います。

──これ、ライブではフェンダーのヴィンテージのプレベでしたよね。

あいにゃん そうです。この「棘にハチミツ」と「shippo」はプレベで弾いてますね。スローテンポな曲にプレベは合うなあと思ってて。この2曲しかプレベは使ってないですね。

──あいなさんのプレベと、すぅさんのジャズマスターの組み合わせが、すごく良かったなと思ったんです。そのふたつで来ると、太い音が前にドーンと来ます。

すぅ 嬉しい。そういう意見はありがたいです! わりとロックバラードをテーマにしてたので、バラード過ぎない、抜け過ぎてないっていう。ちゃんと歪んでるし、ちゃんと太い音が合う曲なのがまた今っぽいのかなっていう。

あいにゃん ライブだとバラードってそこまで入れないんですけど、すごく定着してる雰囲気をツアー3本目にして感じていて。「shippo」からの「棘にハチミツ」は聴かせるゾーンだなって思います。

すぅ これも2番のAメロ、にゃんちゃん主メロだもんね。

あいにゃん すぅが情景を変えたいというか、男性と女性みたいなイメージがあるっていうので、歌い分けはしていますね。けっこう高い、ここ。

すぅ にゃんちゃんにしたら高いかもね。

あいにゃん そう。でも、ギリ地声で。

すぅ 全然いい感じ。“高そう”って思わなかった。

あいにゃん ホント?……頑張ります(笑)。確かに。私の地声と裏声はあんまり声質に差がないみたいで。でも自分ではすごい気になっちゃう、みたいな。“地声で張ったほうがいいのかな、でもちょっと張り過ぎかな”とか。

すぅ “自分では”シリーズ?

あいにゃん うん。そうだね。「shippo」もそっか。

すぅ 「shippo」もそうなんよ。好きか、2番Aメロ歌わせがち(笑)。

あいにゃん ありがとうございます(笑)。

──そしてラストですね。「shippo」は、すぅさんの作詞作曲となっています。メロディ先行ですか? それとも歌詞と同時進行的に作られてますか?

すぅ めっちゃ同時かもしれないです。なんか懐かしい曲というか、時代を感じる曲を作りたくて。(曲の)立ち位置とか、そういうのはなかったし、じゃあ単純にカッコいい曲を入れようとか、パンクっぽい曲を入れようとかそういう話じゃなくて、なんかこう、胸がザワッとする懐かしさっていうノスタルジックな感じを入れたいなと思って作ってみたのが、この「shippo」という曲です。平成を醸し出す曲って今めっちゃブームだと思うんですけど、なんかポップな平成の感じじゃなくて、パラパラでもなくて。それよりもうちょっと前の曲、お母さんたちの青春時代を思い出すような感じとか、懐かしい情景が浮かんでくるような曲にしたいなと思って作りました。小説を読んでるみたいにしたかったんですよね。日本人の奥ゆかしさみたいな。

──そうですね。歌詞に《ちりぬるを》って出てきますし。

すぅ “国語の教科書”って感じの雰囲気を出したくて。

──今の時代、詰襟が減ったから、制服の第二ボタンをもらう文化も少ないでしょうし。

すぅ そうですね。これはライブのMCでも言いましたけど、今の時代は好きっていうことを軽視してるというか。LINEやDMで簡単に言っちゃってたりとかして。“好きっていう感情をもうちょっと大事にしたらいいのになあ”っていう風に思ってて。好きっていう気持ちを、“第二ボタンをください”っていうそのフレーズに乗せて、勇気を振り絞ってた行動がめちゃめちゃ可愛いなと思って。そんな時代のことを思いながら書きました。

──曲はどんなデモでみなさんにお渡ししたんですか?

すぅ 「やだ」とかは、私が弾き語りをしてクボくんに“ドラムはこういう感じで入れてほしい”って送るんですけど、今回はまずにゃんちゃんにデモを送って、にゃんちゃんがベースラインを入れてくれてっていうように、経路を変えて(笑)。

あいにゃん すぅが作っている曲があるって聞いて。もう1個クボくんが作った曲もあったんですけど、それは「KETTO」の候補として作った曲だったんです。

すぅ メロコアっぽい、ポップパンクっぽい感じで。

あいにゃん それはそれで独り立ちするような良い曲だったんですけど、今回のアルバムのバランス的に「shippo」をすぅが考えてるっていうのを聞いたときに、すごくいいなと思ったので、一旦ベース弾きたいなと思って、今までとは違うやり方で挑戦してみました。

──ベースレスで送ったんですか?

すぅ そうです。ギターだけを何本か重ねたやつを送って。

あいにゃん Logic Pro(DAWソフト)を使って弾きました。

──簡単なビートは入ってたんですか?

すぅ ビートも最初は入れずに送りましたね。

──じゃあ、本当に歌とギターから想像してもらいたかったんですね。

すぅ めっちゃ速い曲じゃないので、すごいゆったり弾いて雰囲気を掴んでもらえて良かったですね。

──柔らかなウィスパーヴォイスとか、温かい曲の質感を感じる歌い声です。

すぅ これはもう、ほんとウィスパーですね。かなり“ファルセット増し増し”っていう感じ。絶対地声で張らないように気をつけて……でもライブでは一瞬張っちゃったりとかするんですけど(笑)。ファルセットでずっと張るっていうのが本当に苦しくて、けっこう難しい曲です。

──曲を作る工程が自分の中にあったことで、その歌い方のアプローチは早くから決まっていた感じですか?

すぅ こういう風にしたいっていうのはずっと決まってたので、仕上がりまではめっちゃ早かった気がする。

──そこは自作曲のメリットですよね。

すぅ そうですね。イメージを伝えてもらうよりも自分の中で完結できるので。でも、それがうまくいかなくて、けっこう時間かかりましたけどね。ここは地声で行きたくなっちゃうけど……みたいな感じで(笑)。レコーディングのときは何本かヴォーカルを重ねて広がりのある感じで録りました。

──この曲が最後に入ったことで、アルバム全体としても違う雰囲気が入ってきますね。

あいにゃん 最後にすごくふさわしいなって思います。これ、すごく(歌詞として)未練が残っている曲ではあるんですけど、最後バツッと終わるところが、“もう乗り越えた”じゃないですけど、そういう意味合いもあるんですよね?

すぅ あるんですよ(笑)。

あいにゃん そこが好きです。

すぅ ありがとうございます(笑)。この《15月》っていうのが、つまり3月っていうことなんです。ちゃんと12月で1年が終わるけど、そこからまだ自分の中では切り替えられてなくて、ズルズル行ってる表現ということで《15月》になってるんですけど、やっとこの最後では想いをちゃんと伝えたのか、諦めたのか……聴く人の解釈の自由ですが、バツッと切ることによって、ちゃんと4月に行けるのではっていう想いを込めて、こうなってます。

あいにゃん すぅが作詞だけじゃなく作曲もしたというので、ディレクションもすぅの脳内のイメージがあったからこそ、意思を伝えているのを見ていて、すごく良いなって思いました。最後の切り方にこだわってたし。

すぅ “もうちょっと短く行けないですか?”って(笑)。

あいにゃん 言ってましたね、うん。これで全部かぁ、良いアルバム。

すぅ 本当はもっと入れたかったですよ〜(笑)。

あいにゃん でもギリギリだったけどね、進行が(笑)。

すぅ めっちゃギリギリでした。

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