撮影:前貴文
取材・文:舟見佳子
リハーサルではあまり歌わないように。
喉は消耗品というか、本番のためにとっとくようにしています。
──ライブ前にルーティンでやってることってあります?
上杉 やってることというか、逆にライブのリハーサルではあまり歌わないようにしていますね。人によると思うんですけど、自分はリハで歌いすぎると消耗しちゃうタイプなので。喉は消耗品というか、本番のためにとっとくようにしています。
──上杉さんはステージドリンク、コーラなんですよね?
上杉 そうなんですけど、最近すぐゲップが出るようになっちゃったんですよね。それがちょっとつらいかなと思ってきて。喉が素人に戻っちゃったとき…、しばらく歌ってない期間があって、そのタイミングに本気でプロで歌ってるときみたいに歌おうとすると、むせるんですよ。そういう時にコーラはけっこう良かったんですよね。炭酸の刺激が自分には良いみたいで。あと糖もいいのかもしれない。
──北島三郎さんもステージ前に何か炭酸水を飲んでらしたとか。
上杉 北島さんは、サイダーのような飲み物を、付き人の方がわざわざ炭酸を抜いてから、それを飲んでステージに上がっていたっていう話ですよね。
──北島さんは炭酸抜くんですね。上杉さんは?
上杉 抜かないです(笑)。でも、炭酸が苦しい時もあるので、ぼちぼちやめようかなと思ってるぐらいな感じ。こないだ「水」というベーシックなものが加わりました。最近ステージには3種類並んでます、水とコーラとコーヒー牛乳。冷たいコーヒー牛乳です。何か口がまろやかになるものが、欲しいなって思って。
──クレイジーケンバンドの横山剣さん、フライドチキンを食べると滑らかになるとおっしゃってたみたいですけど。
上杉 それに近い感覚ですね。蒸しパンとかもいいんじゃないですか、ちょっと油っぽいから。
──ツアー先に持っていくものってありますか? 加湿器とか薬とかアイテム的なもので。
上杉 お守りみたいな感じですけど、自分で作った黒闇天様のブレスレットは必ず着けてステージに出ますね。黒闇天って吉祥天のお姉さんなんですけど、毛嫌いされているんですよ、日本人には。貧乏神って言われてたり、何か災いをもたらすって言われてるんですけど。でも、ちゃんと信仰している人に対しては、闇の中にある危険から身を守ってくれるっていうふうに言われていて。その黒闇天様のイメージで作ったドクロと、ラバーストーン(溶岩石)っていうパワーストーン…火山岩を自分で組んで作ったブレスレットは必ず持っていきます。ここ一番のときは絶対着けてますね。
──一般的にはそんなに万人受けする神様ではないけど、上杉さんは黒闇天に何かシンパシーを感じてってことですか?
上杉 そうですね。おそらくまだ完全な神仏としてそのポジションに行けてない神様なんだけど、自分は応援してるっていうか。
──相性が良い悪いとかもあるかもしれないし。
上杉 東京ドームのときも、黒闇天真言を唱えてから歌ったんですよ(9月8日(金)に東京ドームで開催されたプロ野球・巨人対中日戦の試合前、「Friday Night Fever(フライデーナイトフィーバー)」の一環として上杉 昇が「世界が終るまでは•••」を歌唱した)。海外公演の時もここ何回かはそうしてるんですけど、全部成功しました。
──喉のケアについてですが、のど飴などは使いますか?
上杉 のど飴ではないんですけど、織田哲郎さんからいただいた、通称“元気玉”っていうのがあって、金粉で周りがくるまれてる丸薬なんです。なんか由緒正しいというか高級そうな。不思議とそれが効いたんですよね。ちょっとシナモンの匂いがするんですけど、そのときは1個だけいただいたので、その後自分でも買いました。
マネ 先日イベントライブ2日ぐらい前に喋り声も掠れて出ないので、キャンセルしようかどうしよう悩んでいた時に、織田さんに良い病院ありませんか?と相談したら「効くかどうかわからないけど」ってその丸薬をくださったんですよね。それを飲んだら、その日は嘘みたいに声が出たんですよ。
──シナモンも血流や巡りを改善する効果があるそうですけど、スパイスとか漢方って侮れないですよね。ヒハツや生姜を飲んでいるというボーカリストの方の話も聞きます。
上杉 子供の頃も、風邪ひいたら、ばあちゃん家で大根の蜂蜜漬けを飲まされたりね。大根は効いた気がします。
──3枚目のカバーアルバム『SPOILS #3』が年明け5月に全国発売を予定されてますが、上杉さんはライブでもカバー曲を取り入れることが多いです。ボーカリストとして、幅を広げていきたいとかチャレンジしたいみたいな気持ちもあるんですか?
上杉 ひとつには自分がこれから創作活動を続けていく上で、何か吸収したいというか、ヒントを得たいというか。そういうのもあるし。単純に作詞家とか作曲家とか、総合的なアーティストとしての自分っていう面だけではなくてシンガーとしてね、やっぱりすごいシンガーなんだなって思われたいっていう気持ちもあったり。どんな歌でも自分なりに消化して歌えるんだな、みたいな。
──楽曲を歌いこなすってことですね。
上杉 あとは、今こういう時代で、どんどんCDとかいろんなメディアがなくなっていく方向に向かっているので。いい曲はいい曲として、自分の曲と同じぐらい好きな曲もいっぱいあるから、そういうのをちょっとでも後世に残せる可能性を作りたい。そういうのもありますね。
──シンガーとしていろんなタイプを歌いこなしたいとおっしゃってましたけど、キーについてはどうですか? 上杉さんはハイトーンも相変わらず出ますよね。
上杉 基本的にはキーは下げてないですね。女性の曲とかはさすがに自分のキーに合わせますけど、原曲のままのことが多いですね。昔の自分の曲を歌うときも変えない。自分の曲なんて特に絶対変えたくないですよ、悔しいじゃないですか。洋楽をカバーするとしても、基本的には変えないですね。アレンジなど含めて別物として作り変えるんであれば、変えるのもありかなとは思うんですけどね。気持ちよく歌えるキーに変えるっていうのはありかなとは思いますけど、でも自分の声の美味しい部分っていうのは、ちょっと高めなので。そこは捨てたくないなっていう気持ちがあります。
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