【インタビュー】仲宗根 泉(HY)、初のカバーアルバム『灯 -10 Cover Songs-』で聴かせた、圧倒的な歌唱表現! その秘訣は「目の前にいる人に向けて歌うこと」

取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)

感情のすべてを出してこそ、私流の「I LOVE YOU」だなと

──ソロアルバムとしては『1分間のラブソング』以来で、ご自身初のカバーアルバムです。今回、男性ヴォーカル曲だけに絞ったのはなぜでしょうか?

仲宗根 これは本当に私自身もわかってなくて。マネージャーに「10曲ぐらい決めてね」って言われて決めたら「なんでみんな男性曲なの?」って。そこで私も初めて気づいたんです。男性、女性で分けて選んだわけではなくて、本当に曲で選んだって感じですね。

──選曲のポイントとしては?

仲宗根 どの曲もすごい名曲っていうのはもちろんですし、「私はこういう歌詞の書き方はできないな」ってリスペクトしている曲から選ばせてもらいました。そこに自分のカラーをどれだけ入れられるかなって想像できたところから、どんどん具現化していったものになりますね。

──資料によると「いち視聴者としての自分の世界観とどんな化学反応が起きるかなっていうチャレンジをしたかった」とありました。どれも大ヒット曲で、もともとの世界観がガッツリある曲ばかりですから、仲宗根さんの中で「挑戦するぞ」っていう楽しみがある曲をやろうということかな?と。

仲宗根 そうですね。でも、本当に元が良い曲だから、別に何もやらなくてもいいじゃないですか。いいんだけど、そこに「私の好きなゴスペルとかブラックミュージックのサウンドを入れたらどうなるんだろう?」という楽しみ? 自分に対してのご褒美みたいな感じですよね。

──それが「いち視聴者としての自分」でもあったと?

仲宗根 はい。たぶん皆さんが持つ私のイメージはバラードが強いだろうから、私が「TRAIN-TRAIN」とか歌ったら、みんなどう思うんだろう?とか。そういうビックリさせる部分も見せたいなとも思いましたね。

──確かに驚かされるアレンジも多かったですね。まず1曲目が「Lifetime Respect feat.DOZAN11」です。仲宗根さんのリクエストで、DOZAN11さん(三木道三)御本人とのコラボが実現したそうですが、実際に声を合わせて改めて感じたことはありますか?

仲宗根 この曲、ヴォーカルのレコーディングは別々だったんですよね。最初に私、あとからDOZAN11さんが録りました。「泉さん、録りましたよ。どうですか?」って聴いたときに、「やっと完成したな」みたいな感じがすごくしました。カバーなんで本人がいないのは当たり前なんですけど、ひとりで歌ったときに「やっぱ何かちょっと足りないな〜」って思っていて。本人が入ったらどんな感じなるのかなと。DOZAN11さんの声はこういう声だから、この歌を一緒に歌ったらこうなるんだろうなという想像はしていたんだけど、実際にできたら想像を超えて良すぎた……。DOZAN11さんのオリジナルとはまた違った歌い方を引き出すこともできたんじゃないかなと。よりブルージィな感じで色気が出た気がしたし、完成した!という嬉しさがすごくありましたね。

仲宗根泉(HY) – 「Lifetime Respect feat. DOZAN11」Music Video

──続いては、尾崎豊さんの「I LOVE YOU」です。原曲での尾崎さんは最後までわりと抑えめな歌い方ですが、仲宗根さんは、1コーラス目を抑えつつ、2コーラス目からグングンと感情の昂りを歌唱に乗せていくような歌い方ですね。

仲宗根 「I LOVE YOU」は、最も私の感情が出た曲とも言えると思います。たくさんの方が歌ってますし、私自身何度も歌ってきた曲でもあるんだけど、いざブースでマイク前に立ってレコードに落とし込むとなったとき、あんなに歌ってきた歌詞なのに初めてのような感覚になったんですよ。まず「おお〜、なんだこの気持ちは?」となって。それで歌詞を見て落とし込んで、「よっしゃ歌うか」となったときに、この主人公の男女が切な過ぎて……。「なんでこんなうまくいかないんだ、なんて悲しんだ」って思ったら、徐々に感情があふれてきて涙が止まらなくなってきちゃって。

でも、そこで止めて歌い直すのは違うなって思ったんですよ。その感情のすべてを出してこそ、私流の「I LOVE YOU」だなと。泣きながら歌ってるから後半はあんなに1番と違うんです。泣いているとやっぱりkeyも変わってきたりするから、エンジニアさんに「少し(録り)直しますか?」と聞かれたんだけど、そうするとやっぱりちょっときれいな感じになって表現も違うから。メロディがちょっと揺れていても、そのまま使ったほうが絶対いいと、そのテイクを使ったので、そういう風な表現にはなっていますね。

──むしろ「表現」を超えているわけですよね。

仲宗根 そうそう、実際泣いているからね(笑)。大号泣でした。そう思ってもう一回聴いてもらったら、また感情移入できるかなと思いますね。

仲宗根泉(HY) – 「I LOVE YOU」

──次がウルフルズの「バンザイ〜好きでよかった〜」ですね。ストリングスをフィーチャーし、スローテンポでの解釈になりました。トータス松本さんと仲宗根さんの相性が良いというか、ともに「大きな口で空気がよく通った声」という印象を音から感じます。歌い方の工夫はありましたか?

仲宗根 私は本当にトータスさんが大好きで、ウルフルズの大ファンなんです。この「バンザイ〜好きでよかった〜」に関してもすごい思い入れとリスペクトがあって「トータスさんみたいな歌い方に寄せたい」っていう気持ちもありました。歌に対してそれぞれ表情があるから、そういう表情に近づけて歌っていくんですけど、ここでは「トータスさんと同じような歌い方がいいだろうな」っていうのもありつつの、この曲は私の中で「結婚式」という設定なんですよ。新郎新婦が会場に出てきたとき、祝福できるような感じの明るさというか飛ばすようなイメージで歌いましたね。

──同郷のバンド、かりゆし58の「恋人よ」は、バンドスタイルです。スライドギターを入れて、ブルージーな香りが満ちていますね。また原曲よりグッとテンポを落とすことで、この曲が“(沖縄民謡)島唄”であることが明確に見えてきました。

仲宗根 オリジナルはものすごく速い曲なんですが、これのアコースティックバージョンがあって、私はそれから聴いたんです。「なんていい沖縄の歌だ」って思いました。はっきり見せてるわけじゃないけど、箇所、箇所に沖縄をすごく感じる。だからこの曲を歌おうと思ったときも、めちゃめちゃ沖縄民謡っぽさを入れるんじゃなくて、それっぽいニュアンスを入れたいなと思って。こぶしをゆるめに入れて歌っているというのは、そういうことですね。

──藤井フミヤさん「TRUE LOVE」では、原曲に入っていないスキャットを間奏に入れ、後半に向かってピアノを含めて力強さが増していきます。どんなイメージで解釈していったのでしょうか。

仲宗根 最初はこういう解釈ではなくて普通のバンドの感じでやってもらったんです。アレンジが戻ってきたときに「うーん、バンドでとは言ったものの、これじゃただのカラオケになっちゃうな」って。そんな頃に真夜中でちょっと雨も滴り落ちてきて、何かエモーショナルな感じが浮かんだんです。こんな「TRUE LOVE」ってあんまり聴いたことないかも?と思って。私は、あんまり意識したら嫌だから自分がカバーアレンジする曲の、他の人たちがやってるバージョンは聴かないようにしていたんですね。でも、それが浮かんだんで「TRUE LOVE」を一回検索してみようかなと思って。いろいろ聴いてみても、私が今やってるような感じでカバーしている人はいなかった。ギターでもピアノでもなく、こういう機械を入れた感じでやってみてもいいかもと。それで急遽「すいません!」ってアレンジャーの方といろいろ話して。「いつもの仲宗根 泉だったらブワーって歌うイメージがあると思うんですけど、それちょっと覆しましょう」と。それであえて耳元で囁くような歌い方に変えて録ったんです。

で、レコーディング当日に「じゃあ歌います」ってなったとき、これまた「I LOVE YOU」と一緒なんですけど、今までは男女の歌と思っていた曲が、がらっと変わって友達の歌に聴こえてきたんですよ。若い頃によく遊んでた友達がいて、ちょうどHYもいい感じで上がっているときで、お互いの夢を歌詞のように話ししてたんです。でもその子、突然亡くなっちゃったんですよ。最後の《僕らはいつも遥か遥か遠い未来を 夢見てたはずさ》という歌詞に来たところで、それを突然思い出してしまって。「一緒に《夢見てた》その人はもういないんだ」となったとき、自分の中で恋愛じゃなくて、亡き友に歌うような感じになって。それで「切ないんだけど感情を殺しているような、微妙なニュアンスで歌っていこう」と思って、ああいう歌い方にしましたね。

──だから雨のSEを入れて……。

仲宗根 そうそう。なんか悲しく、というかね。

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