
取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)
幅広く人に届けていきたいんだったら、ボカロ的な歌。
──それではアルバムに収められた新曲をどんどん聞いていきます。まず1曲目の「Big Mouth」から。歪んだカッコいいギターリフで始まるデジロックな曲で、グッと引き込まれました。
Daoko 盛り上がる感じ、始まるぞ!っていう感じがする1曲目ですよね。
──メンバー全員で「1曲目だぞ」ってイメージを共有してレコーディングしたんですか?
Daoko 曲順とかは収録された9曲以外にあったものを含めて出揃ってから決めました。
──この曲でもあえて無機質なハイトーンのヴォーカルで入ってくることで、さっき話に出た「機械と人間の狭間」みたいな世界観が感じられます。
Daoko もともとボカロが好きだったんですけど、最近またすごく好きで。特に若い人たちが聴いているようなボカロをよく聴いているんです。個人的にボカロって性も不確定というか、男と女っていうことの主張もないし。とにかく「主張がない」っていう声が、すごい感情移入がしやすくて、私的には。ボカロのほうが感情移入しやすいなって。それはたぶん人それぞれだと思うんですけど。そういう楽器の一部っていう、それこそボカロっていうのは楽器、プラグインなので。たぶん楽器の一部って認識なんですけど、私のそういうところからちょっと影響を受けている気がしますね。幅広く人に届けていきたいんだったら、ボカロ的な歌っていうのはいいのかなっていう。
──確かに。
Daoko ポップスとしてもちゃんと成立していきたいっていうバンドだと思うので。私なりに「ポップな歌い方とは?」ってなったときに、たぶん自然とこういうちょっと楽器っぽいという認識になったんだと思います。
──すごく興味深いお話です。「Wonder World」は作曲が鈴木正人さんと網守さんで、正人さんのものすごいグルーヴィなベースが引っ張っていきます。
Daoko 正人さん、すごいグルーヴィだしテクニカルなプレイをされるんですけど、なんか歌いやすいんですね。そこが素晴らしいところかなと。普通ね、ベースとかリズム隊に動かれちゃうと歌が大変だったりとか、引っ張られちゃったりするんですけど。正人さんに関しては、どれだけ動いていただいても変わらず歌いやすいっていう。もう天才ですね。
──そして「Distance Dance」はドラムの大井一彌さんとDaokoさんの共作です。
Daoko はい。これは私のデモがあって、それをQUBITでやろうとなって。編曲を作曲のレベルで関わっていただいているんですけど、世界観をめちゃくちゃカッコよくダークで荘厳な感じに広げてくださいました。
大井さんもバンドメンバーの中だと私の次に若い方で、実力もすごくあってスタイリッシュな空気感を持っていらっしゃる唯一無二のドラマーなので、QUBITにとっても大井さんが入ってくることによって、音楽的にもスタイリッシュな要素として、マテリアルとして、チューニングされてる気がします。
──この曲は、歌詞も描写的ですし、歌い方も含めて二面性がある楽曲ですね。
Daoko そうですね、これはもう私の精神世界というか、私の好きな感じで。私が素で曲を作るとこうなっちゃうんだっていう。元々はなんか「Just The Two of Us」進行、または「丸サ(丸の内サディスティック/椎名林檎)進行」と言われてるコード進行で曲を作ろうと思ったんです……。
「水星」(tofubeats)とか、「今夜はブギーバック」(小沢健二 featuring スチャダラパー)とか、そういうお洒落でシティに合いそうな感じをイメージして作ろうとしたんですけど、気付いたらこんなことになってるという(笑)。作る過程としては、そんなバックボーンがありました。
──(笑)。皆さんは、ぜひ曲を聴いてお楽しみください。そして「Room Tour Complex」は網守さんの作詞作曲で、ゆったりとしたグルーヴが心地よい作品です。
Daoko ちょっと耳休め的な感じで、すごい良い曲なんですよね。これは完全に網守さんの楽曲なんで、私も網守さんにインタビューしたいくらいなんですけど(笑)。アルバムの流れとしては、ここで一旦気持ちを落ち着かせる感じになるのかなと。いちリスナーとしてお気に入りな楽曲です。
──そして8曲目に入ってるのが「Neon Diver」です。こちらは2023年、QUBIT版のシティポップという風合いのナンバーです。
Daoko 「Neon Diver」は「お台場」と掛けているっていう。
──確かに歌詞にも東京テレポート駅が出てきます。
Daoko そうなんです。「お台場のほうのテーマソングにならないかな」って、みんなで言ってました(笑)。
──これは歌詞も歌い方も可愛い女性として描かれてますね。
Daoko そうですね! 曲の内容もQUBITの中では珍しいラブソングというか、お台場デートみたい感じなので。ちょっと恋する乙女的な気持ちで歌わせていただきました。
──それは、Daokoさんにとって、演じるに近い感覚なんですか?
Daoko キャラ設定ですか? 自分自身でもあるけど、プラスでこの曲に合う服を纏う感じですかね。だから演じ切らないけど、演じるって言えば確かに演じているところもあると思います。無意識下で楽曲に似合う、歌詞に似合うっていう風になってくると、自ずと「こういう声になっちゃうよね」っていう感じ。私の独断と偏見で演じました。
──ラストが「Beautiful Days」。ラップパートも軽快ですけど、どこかテーマを含めて重厚さも内包した曲だと感じました。
Daoko そうですね。「世界が終わる最後の日」っていう終末感がありますね。この曲は永井さんがメインとして作っていて。テンション感というか、トーン感が絶妙ですよね。
──曲調は重くないんですけどね。
Daoko だからギャップ萌えみたいなところもあります。
──中期から後期にかけてのビートルズが持ってた雰囲気にも近いかもしれないですね。
Daoko ああ、そうなんです。永井さんと一緒にインタビューを受けていても、ビートルズのお名前がけっこう挙がるので。たぶんすごい好きらしいです。
──軽く見せつつ、実は重いみたいな深みがありますね。
Daoko 永井さんのうまいところが出てるんですよね。秀逸なセンスがあるというか、そういう洒落たことができてしまう人たちがいっぱいいるんですよ、QUBITには。乙です、乙な曲。
──ありがとうございました。そんなQUBITの初ライブが12月7日に代官山UNITで開催されます。
Daoko そうなんですよ。初のショーケースという形で。ここから物語が始まっていくっていうようなライブになるのかなと思っていて。演奏はもちろんですけど、映像もCOSMIC LABさんとこだわって準備しています。視覚的にも聴覚的にも楽しめる総合的な感覚で新しい体験ができるような、そんなライブになるんじゃないかなと。私もQUBITでライブするの、すごい楽しみなんですけど、曲はけっこう難解なので“人間の枠を超えないといけない”と思ってます(笑)。
リリース情報
1st Album『9BIT』QUBIT
2023年11月22日(水)リリース

◆初回盤(CD+BD+封入特典): COZB-2059~60/5,500円(税込)
◆通常盤(CD): COCB-54362/3,300円(税込)
◆収録曲
<CD>
01. Big Mouth
02. G.A.D.
03. Mr. Sonic
04. Wonder World
05. Distance Dance
06. Fast Life (Album mix)
07. Room Tour Complex
08. Neon Diver
09. Beautiful Days
<Blu-ray>
「G.A.D.」MV
「Fast Life」Official Audio
◆初回盤封入特典
特製ステッカー2枚
◆『9BIT』購入特典情報
タワーレコード、HMV、TSUTAYA、その他応援店(各オンライン含む):ロゴステッカー
Amazon:メガジャケ
◆アルバム『9BIT』ダイジェスト映像
◆グッズ情報
https://columbia.jp/qubit/info.html#goods
◆パワープレイ情報
https://columbia.jp/artist-info/qubit/media/85426.html
Digital Single「Allure of the Dark」Daoko
2023年11月1日(水)デジタルリリース
レーベル:てふてふ
配信リンク:https://daoko.lnk.to/AllureOfTheDark

作詞:Daoko
作曲:HIDEYA KOJIMA
ライブ情報
『SHOWCASE #00』QUBIT
2023年12月7日(木)
東京・代官山UNIT
開場:18:00/開演:19:00
チケット代:5,500円(税込)
<チケット一般発売中>https://qubit.lnk.to/showcase00
プロフィール
QUBIT

2023年、Daoko(vo)、永井聖一(g)、鈴木正人(b)、網守将平(k)、大井一彌(d)により始動。
Daoko(ダヲコ)
1997年⽣まれ、東京都出⾝。15歳のときにニコニコ動画へ投稿した楽曲で注⽬を集め、2015年『DAOKO』でデビュー。その後も⽶津⽞師との「打上花⽕」、岡村靖幸との「ステップアップLOVE」など、実⼒派アーティストとの共作を⾏ないつつ、ソロでの活動も続ける。⼩説の執筆、絵画個展の開催、女優業など多様なクリエイティヴ表現を続け、国内外で注⽬を集めている。2023年6月に劇場版『美少女戦士セーラームーンCosmos』の主題歌「月の花」を担当。11月1日には、RPGゲーム『メメントモリ』のゲームサービス開始1周年を記念し書き下ろした楽曲「Allure of the Dark」をリリース。
オフィシャルサイト:https://daoko.jp
X:https://twitter.com/Daok0
Instagram:https://www.instagram.com/daoko_official/
永井聖一
作曲家/ギタリスト
相対性理論のギタリストとして活躍を続ける。
山下智久やDAOKOに楽曲提供したほか、Spangle Call Lilli Line、バレーボウイズなどのプロデュース、moonriders、Buffalo Daughterなどのリミックスを担当。プレイヤーとしても高橋幸宏、GREAT3などさまざまなミュージシャンと共演。2023年からTESTSET、QUBITのメンバーとしても活動中。
オフィシャルサイト:https://seiichinagai.com/
Instagram:https://www.instagram.com/seiichinagai/
鈴木正人
1971年6月ベルリン生まれ。ベーシスト/アレンジャー/プロデューサー。
1987年、高校在学中に青柳拓次(vo、g)、栗原務(d)とLITTLE CREATURESを結成し、90年にシングル「THINGS TO HIDE」でメジャーデビュー。その後、渡米しバークリー音楽院に入学。帰国後はバンド活動と並行して、ベーシスト、プロデューサーとしても活動。
2005年3月、文筆家の内田也哉子(vo)とCOMBO PIANOの渡邊琢磨(p)と「sighboat」を結成。2006年、自身初となるソロアルバム『UNFIXED MUSIC』をリリース。2007年、菊地成孔ダブ・セクステットに参加。
近年では映画『坂道のアポロン』や『おらおらでひとりいぐも』、『あちらにいる鬼』の映画音楽を担当するなど作家としても活動の幅を広げている。2020年、デビュー30周年を迎えた。人と人、音と音を繋ぎながら、シーンにおけるキーパーソンとして、その存在感を高めている。
オフィシャルサイト:http://tone.jp/musicians/masato-suzuki
網守将平
1990年生まれ。東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。同大学院音楽研究科修士課程修了。在学中に長谷川良夫賞受賞。2013年日本音楽コンクール作曲部門1位及び明治安田賞受賞。東京芸術大学大学院修了オーケストラ作品は大学買上となり、同大学美術館にスコアが永久保存されている。学生時代よりクラシック/現代音楽の作曲家として活動を開始し、室内楽からオーケストラまで多くの作品を発表。
近年はポップミュージックやサウンドアートの領域を含め横断的な活動を展開し、『パタミュージック』、『Ex. LIFE』などの3枚のオリジナルアルバムを発表。
ソロ活動の他には大貫妙子、原田知世、Daokoなど多くのアーティスト楽曲の作編曲を担当している。映画『百花』のサウンドトラックやNHK Eテレ『ムジカ・ピッコリーノ』の音楽監督、その他テレビドラマやCMの音楽も多数手掛ける。
オフィシャルサイト:https://www.shoheiamimori.com
X:https://twitter.com/shoheiamimori
大井一彌
神奈川県出身のドラマー/トラックメイカー。
プレイヤーとして活動する傍ら、CMやゲームなどのサウンドデザイン、プロデュースなども行なう。
オフィシャルサイト:https://www.kazuyaoi.com
関連リンク
◆公式HP:https://columbia.jp/qubit/
◆各SNS
X(Twitter):https://twitter.com/QUBIT_BAND
Instagram:https://www.instagram.com/qubit_band
TikTok:http://www.tiktok.com/@qubitband