【インタビュー】10周年を迎えるウォルピスカーター、“求められている声”に向き合った『ひとのうた』と極め続けるハイトーンの秘訣を語る。

2023.02.24

取材・文:後藤寛子

筋トレと同じなので、とにかく自分が苦しいと思うところに挑む

──レコーディングではいかがでした? 

ウォルピスカーター キーの高さもですけど、この曲は構成がかなり特殊で。一番と二番でキーが大きく違いますし、最後のサビが40~50秒くらいあるんですよ。その間ずっと高い声を出し続けないといけないので、そこがとにかく大変でした。でも、こういうのはしんどければしんどいほどいいので。はははは! 筋トレと同じなので、とにかく自分が苦しいと思うところに挑むというポリシーでやってます。

──完全にアスリートですよね(笑)。テイク数で言うとどれくらいかかったんですか?

ウォルピスカーター この曲は、納期が近いとヘタしたら歌えずに終わるかもしれないと思って、かなり早い段階で録音を済ませたんですよね。なので、けっこうゆったり録って……「Fire◎Flower」の半分ぐらいのテイク数で終わったような気がします。500くらいかな。もう、ここまで高いキーだと、その日のコンディションにも左右されますし、出るか出ないかは運ということころもありますし(笑)。とにかく1日の限られた時間の中で、瞬間瞬間に引き出せる歌声を繰り返して録る感じです。気合いです。

──ウォルピスカーターさんでもそうなんですね。まあ、HiHiDになると、ちょっと人間の声という感じを越えてますもんね。

ウォルピスカーター そう言ってもらえるのが一番嬉しいです。どんどん機械になっていきたいですね! 

──あと、「銀河録」は高いキーのバラードで、ハイトーンとファルセットを両方使われているのが印象的でした。同じ高いキーでも、バラードだとアプローチは変わりますか?

ウォルピスカーター 変わってきますね。バラードになると、どうしても力の入れ具合でヴォーカルが浮いちゃったり、違和感が出てしまうことがあるんです。でも、「銀河録」はサビで大きな声を出してもあまり違和感がない曲だったので、叫ぶまではいかないですけど、大きな声で歌えたのは非常に助かりました。ゆったり歌える曲なので、些細な音の動きで表情がガラッと変わってくるというか、自然に歌っても歌声にニュアンスが付いてくるから、わりと歌いやすい曲でした。

──ハイトーンとファルセットは、どういうふうに使い分けてるんでしょうか。

ウォルピスカーター 基本的に、僕はあまりファルセットを使わないんですよ。ガッとパワーのある声で歌うことが多いんですけど、僕自身は一瞬抜けるようにファルセットが入っているヴォーカルがすごく好きなので。けっこうわかりやすい変化として、ここを聴いてほしい、ここはちょっと耳を澄ませてほしいと思う部分に入れることが多いです。

──一般的には、高いキーを出すときに、いわゆる裏声というか、ファルセットを使ったりするイメージですが。

ウォルピスカーター そうなんですよ。高い声をどんどん出していくと、その辺の境があいまいになってくるんですよね。説明がちょっと難しいんですが、僕は高い声を地声の感覚で出してるんです。でも、普通はファルセットの延長で、僕みたいにパワーのある高い声を出す人が多いので。ファルセットベースの人は自由にファルセットを出されるんですけど、僕は地声がベースなので、けっこう声質に大きく差が出るんです。なので、普通のハイトーンヴォーカリストよりファルセットを使わないのかなと思います。

──ファルセットベースにはしないというこだわりなんですか?

ウォルピスカーター いや、そこは相性ですかね。そういう意味では、今回の「銀河録」は、録音スケジュール的に地声ベースだと持たなそうだなと思ったので、まさにファルセットベースで高い声を出しているんです。言われてもわからない差だと思いますけど。

──ファルセットベースのほうが、喉としてはラク?

ウォルピスカーター 追い詰められていく中で自然と取った選択肢でしたけど、ファルセットベースのほうが喉が長持ちするのかな。地声をベースにすると、パワーは出るんですけど、どうしても喉の消耗が早くて。短いスパンで録音しなきゃいけないときにミスが許されなくなってしまうんですよ。声が出なくなったら、そこから数時間休まなきゃいけなくなりますから。なるべく声自体の集中力を途切れさせずに録音を続けようとしたときに、ファルセットベースのほうがいいと身体が勝手に判断したんでしょうね。

──なるほど。ほかにレコーディングで印象的だった楽曲というと?

ウォルピスカーター どれも印象的というか、どれも大変だったんですけど、強いて言うなら「ドナーソング」ですね。一番のサビを一切力まずに歌おうと思って録ったので、ほかの曲と全然毛色が違いました。

──すごく優しい歌声になっていますよね。

ウォルピスカーター そうですね。これがもうとにかく大変で(笑)。やっぱり、思いっきり力むより力まないほうが難しいんですよ。ちょうどいい塩梅というのがすごく難しい。自分でやろうと思ったことですけど、非常に苦戦しましたね。定期的にこういう声も出しているんですけど、一定層、こういう細い声が好きな方もいらっしゃるのを感じるので。こういう声が求められているんだろうというふうに僕なりに推察して、ファンサービス的な部分が大きいです。

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