【インタビュー】スカートが語る、コロナ禍で大切に育ててきた自信作『SONGS』での曲作りと歌との向き合い方

2022.12.31

取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)

難しい歌はたくさんあるけど、チャレンジだと思ったら録音してないです

──初回限定盤には全13曲の弾き語りが収録されていますが、こちらのアイデアはどんなところから?

澤部 実は前回アルバムでも初回盤はそういうのが付いていて、それの延長なんです。ただ、前回と違うのは、前回はスタジオでちゃんと録音したんですよ。ミックスもアルバムを録ったエンジニアの方にお願いしていたんですけど、今回はそうじゃなくて。コロナ禍で自分の部屋からライブをやって、その延長としてこれを残したという感じで。

──宅録ですか?

澤部 そうです。

──マイクは何を使っているのですか?

澤部 ヴォーカルはAKGのC3000で、アコギは57(SHURE / SM57)で録ったはずです。

──オーディオインターフェースは何を使っていますか?

澤部 US-4×4(TASCAM)ですね。

──13曲の中で歌唱が一番チャレンジングだった曲はどれでしたか?

澤部 うーん、ないと思います。でも歌で一番苦労したのは「ODDTAXI feat. PUNPEE」かな。(レコーディングに)1日かかっちゃいました。

──基本、1日はかからない?

澤部 僕はわりと1日に2、3曲録れるほうなんです。でもこのときは、ODDTAXIなんて半分ぐらいしか歌ってないのに丸一日かかっちゃって。でもやっぱりチャレンジングっていうのはないかな。難しい歌はたくさんあるけど、これはチャレンジだ、と思いながら録音することはないです。メロディが難しいなとかはありますけどね。

──遡ると、澤部さんが歌を歌い始めたのはいつ頃になりますか?

澤部 いつなんだろう。やっぱり歌は子供の頃から好きでしたよ。ただ意識して歌うようになったのはいつかというのは覚えてないですし、意識をしたことがないかもしれない。

──宅録を始めた高校生の頃よりもっと前からという印象ですか?

澤部 そうですね。でも歌うって自覚したのはやっぱり高校生の宅録のときかな。自分の声を聴かなきゃいけないじゃないですか。でも自分の声はあんまり好きじゃなかったんで。

──初めて聴いたときの印象を覚えていますか?

澤部 自分の声が嫌いだなと思ったのは小学生くらいだったと思いますよ。ほら、朝礼でマイクを持ってしゃべらなきゃいけないときとかに「えっ、自分ってこんな声してるの?」みたいなことがあったりするじゃないですか。あとはテープレコーダーに自分の声を吹き込んで聴くと「えええ」ってなるみたいなね。ホント耐えがたかったんです(笑)。自分の耳で聴こえてるのと全然違うじゃないですか。さすがにもう慣れましたけど、やっぱり子供の頃は嫌でしたね。

──声や歌い方で影響を受けた人はいますか?

澤部 いっぱいいますよ。ですけど、やっぱり大瀧詠一さんぽいって、こないだ細野晴臣さんに言っていただいて。それは大いにあるなと思いますね。中学生の頃とかホント好きでよく聴いていたんで。あと歌い方という意味だと、カーネーションの直枝政広さんやムーンライダーズの鈴木慶一さんの影響もかなり大きいとは思ってます。

──声の作り方を研究したことはありますか?

澤部 僕、いわゆるボイトレとかは行ったことがなくて。あんまり自分の声に自覚的にはなれなかったんですよね。ただ、スカートも古い音源だと今と歌い方も全然違ったりして。でもどこかで(歌い方を)変えたっていう意識はないんですよ。だんだん変わっていったというのが自分の中では正しいかな。

──歌い続ける中で馴染んでいったというか、少しずつ変化していったんですね。

澤部 そうそう。昔は今みたいに高い音もそんなに出なかったし。でも歌い続けていくにつれて、昔は裏声じゃないと出なかったところが地声で出るようになったりとかしてきましたね。

──10年以上のキャリアの中で歌に対する意識は変わってきましたか?

澤部 ちょっとずつは変わってると思います。昔は“歌は音楽の添え物”ぐらいの感覚でしたよ。でも世の中的にはきっとそうではないんだろうなっていうのがだんだん見えてきて。やっぱり歌をみんな聴いてるんだみたいな気持ちに少しずつなっていきました。じゃあそういうふうにしないとなっていう意識がどっかにあるけど、あんまり変わってない気もします(笑)。

──今後のヴォーカリストとしての目標はありますか?

澤部 とりあえず目下はボイトレに通ってみるっていうことですね。

──ボイトレに通わないという方も聞きますが、澤部さんは通おうという気持ちをお持ちなのですね。

澤部 ずっとあります。自分の歌い方が正しい気がしないというか。例えば音程が低いほうが(自分の歌声が)安定しない理由は何かあるのかな、とかね。あと時々ライブ中に耳がバグるんですよ。ヴォーカリストとしてはそれがちょっとつらいんですよね。いま歌ってるキーと聴こえてくるキーが合わなくなるときがたまにあるんです。だんだんわかってきたのは、低音がボワンとするとそうなるんじゃないかと。そういうことにも根本的な理由があるのかなって。

──専門的な分析も行なっていけると良いですね。最後になりますが、3月のアルバムツアーについてひと言お願いします。

澤部 『SONGS』というアルバムの手応えをみなさんと一緒に分かち合いたいと思っています(笑)。コロナ禍でライブバンドとしては一度は御破算になってしまいましたが、その間も印象的なライヴがいくつもありました。アルバムの手応えと、それらのライブの手応えを足せるようなツアーになったらいいな、と今は考えています。是非足を運んでもらえたら嬉しいです!


リリース情報

アルバム『SONGS』
2022年11月30日(水)より発売中

【初回限定盤】 PCCA.06170 / 2CD / 3,850円(税込)
【通常盤】 PCCA.06171 / CD Only / 2,860円(税込)

<収録曲>
01. 十月(いちおう捨てるけどとっておく) ※ダウ 90000第4回演劇公演『いちおう捨てるけどとっておく』エンディングテーマ
02. 駆ける ※サッポロビール『第96回箱根駅伝用オリジナルCM』CMソング
03. ODDTAXI feat. PUNPEE ※テレビアニメ『オッドタクシー』OPテーマ
04. 粗悪な月あかり
05. この夜に向け ※「大きなサイズの店 フォーエル」CMソング
06. 標識の影・鉄塔の影 ※テレビ東京ドラマ 25「絶メシロード」主題歌
07. 架空の帰り道 ※テレビ東京ドラマ 25「絶メシロード Season2」主題歌
08. Aを弾け
09. 私が夢からさめたら
10. 背を撃つ風 ※Paravi オリジナルストーリー「最愛のひと~ The other side of 日本沈没~」イメージソ

11. しるしをたどる ※テレビ大阪開局40周年「名建築で昼食を 大阪編」エンディングテーマ
12. 窓辺にて ※映画「窓辺にて」主題歌
13. 海岸線再訪 ※JBL『Tour Pro+ TWS』WEB CMソング

<初回限定盤 特典CD収録内容>
『SING A SONGS』収録曲全13楽曲の弾き語り音源

ライブ情報

『ライブツアー2023 “SONGS”』
2023年3月20日(月)大阪・梅田CLUB QUATTRO
2023年3月21日(火・祝)愛知・名古屋CLUB QUATTRO
2023年3月25日(土)東京・渋谷CLUB QUATTRO

チケット料金(ドリンク代別) 4,500円 券種オールスタンディング
【抽選制】オフィシャル1次先行(イープラス) 12月13日(火)18:00〜12月26日(月)23:59 ※終了
【抽選制】オフィシャル2次先行(イープラス) 1月3日(火)18:00〜1月15日(日)23:59
⼀般発売1月28日(土)10:00〜
イープラスURL(先行、⼀般共通) :https://eplus.jp/skirt2023/
詳細はHPにて: http://skirtskirtskirt.com/

※枚数制限 : お一人様1公演につき2枚まで
※電子チケットのみの取り扱い、店頭販売なし
※危険行為・迷惑行為の禁止
※小学生以下入場不可、中学生以上チケット必要
※開催時の情勢により、客席のレイアウト、レギュレーションなど変更になる可能性がございます。

プロフィール

スカート
シンガーソングライター澤部 渡によるソロプロジェクト。2006年にスカート名義での音楽活動を始め、2010年に自主制作による1stアルバム『エス・オー・エス』のリリースにより活動を本格化。2017年にはメジャー1stアルバム『20/20』をポニーキャニオンから発表。またスカート名義での活動のほか、ギター、ベース、ドラム、サックス、タンバリンなど多彩な楽器を演奏するマルチプレイヤーとしても活躍しており、yes, mama ok?、川本真琴、スピッツやムーンライダーズのライブやレコーディングに参加。これまでに藤井隆、Kaede(Negicco)、三浦透子、adieu(上白石萌歌)ら他アーティストへの楽曲提供およびドラマや映画の劇伴制作にも携わっている。

関連リンク
オフィシャルHP:https://skirtskirtskirt.com/
スカートTwitter:https://twitter.com/s_k_i_r_t
澤部渡Twitter:https://twitter.com/skirt_oh_skirt
Instagram:https://instagram.com/skirt_oh_skirt

1 2 3

最新情報

ヴォーカルや機材、ライブに関する最新情報をほぼ毎日更新!