【インタビュー】スカートが語る、コロナ禍で大切に育ててきた自信作『SONGS』での曲作りと歌との向き合い方

2022.12.31

取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)

澤部 渡によるソロプロジェクトのスカートが、約3年半ぶりとなるオリジナルアルバム『SONGS』を発売した。今作は、11月4日公開の映画『窓辺にて』主題歌の「窓辺にて」他、10曲のタイアップ曲に加え、新録曲を含めた全13曲が収録されている。

コロナ禍で曲作りのスランプもあったという澤部。アルバム各曲を振り返りながら、制作で試行錯誤したことや、歌との向き合い方について語ってもらった。

作ることは一回離れてしまっても、歌うことはなるべく離れないようにしようと思っていた

──約3年半ぶりとなるオリジナルアルバム『SONGS』がついに発売となりました。ご自身ではどのような1枚になったと感じていますか?

澤部 やっぱりコロナの影響がスカートの活動にもかなり影を落としまして、そういう中であくせく作った成果と言いますか、活動報告書みたいな側面もありますね。なのでタイアップも惜しみなく全曲入れちゃいました。どれか入れないとかも考えたんですけど、普通のアルバム以上の意味合いを持たせたいなと思ったので、全部入れるほうが潔いかなと。

──アルバム全体のコンセプトはありましたか?

澤部 いや、ないですね。でもタイアップを全部入れると仮定して、1枚のアルバムに収まるように曲を作っていかないとなって途中から切り替えはしましたね。

──リリース順で言うと、2020年3月発売の両A面「駆ける/標識の影・鉄塔の影」が最初ですね。ちょうどコロナの影響が及び始めた頃でしたが、楽曲制作への影響はありましたか?

澤部 この2曲に関しては2019年に書いたのでなかったです。ただこの曲を発売するときがまさに緊急事態宣言という時期だったので、自分の中ではコロナと密接に関係のある曲ですね。

──「駆ける」以降スランプに陥ったというのをInstagramの投稿で拝見しました。

澤部 はい。シンプルに“とてもじゃないけどそんな気になれない”というのがまずひとつで。この時代に新しい何かを投げかけることなんて、とてもじゃないけど難しいなと。

あと新しい曲作ってライブをやってみたいなルーティンがあるじゃないですか。そういう自分の中では当たり前だったものがいかに特別だったかを自覚しちゃって。それが本当に良くなかったです。そんな特別なものだなんてこっちは思いたくもないわけですよ。でもそれをまざまざと見せつけられたような感じがして、とても戸惑いましたね。やっぱり1年ぐらい曲が書けなかったです。

──歌う気にもあまりなれなかったですか?

澤部 もうあんまり覚えてないですね。でも家で配信ライブをやったりしようとは思ってたんで、そういう意味では作ることは一回離れてしまっても、歌うことはなるべく離れないようにしようと思ってた時期ではあったはずです。

──2021年4月発売の「ODDTAXI feat. PUNPEE」の時期には、もうスランプを脱出していたのですか?

澤部 いやいや全然、ちょうどスランプでした。曲を作ったのが2020年の6月ぐらいだったんじゃないかな。一番スランプの時期に息も絶え絶えで作ったんですよ。そういう意味ではPUNPEEさんがいてくれて本当によかった。自分ひとりだったら絶対あそこまでできてないと思います。何回か締め切りも破っちゃいましたし、ホントに超ギリギリでできあがった曲です。

──PUNPEEさんがいて良かったというのはどんな部分で?

澤部 共作だったんで穴を埋めてくれるんです。なんか自分が冷静じゃなかったところも見抜かされてるような気がして(笑)。より良い方向に一緒に作っていけましたね。

──曲のアイデアはスランプの中でどのように生み出していったのですか?

澤部 この曲は今までにない作り方をいっぱいしてるんですよ。普段だったらギターを弾きながらメロディとコード進行が同時に出てくることが多いんですけど、このときはかなり珍しくコード進行だけ最初に作ったんです。でも「さあ、どうしよう」みたいになっちゃって(笑)。次に詞を書いたんです。そこからメロディを1回作ってみるかってやったら、ほぼ1回であのメロディが出てきたんじゃないかな。

──いつもと違う作り方をしたんですね。

澤部 コード進行が先というのは自分の中では珍しいし、ましてやコード進行の次が歌詞で、最後がメロディなんてことはめったにないですね。

──アルバムには新たなアレンジバージョンが再録されていますが、今回のアレンジでこだわった部分はどんなところですか?

澤部 こだわってというよりかは、ちょっと肩の力を抜くぐらいの気持ちはどこかであったかもしれないです。なんでかと言うと、これ一度PUNPEEさんを迎えてライブでやったんですね。そのときが妙に楽しかったんで、そういう感じをレコードに残しておいたら、みんなも喜んでくれるかなって。

──ライブ感を詰め込んだと。

澤部 そうです。そこにPUNPEEさんがエディットやアレンジを加えてくれて、また既発のバージョンとは違った面が見えるものになったかなと思ってます。

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