【インタビュー】ウォルピスカーター、さらなるハイトーンヴォイスの進化を魅せた2nd EP。“無意識の動作の繰り返しが高い声の習得に繋がる”

取材・文:田代智衣里(Vocal Magazine Web)

歌い手・ウォルピスカーターが、2nd EP『分身 -Bunshin-』をリリースした。今作では初のコラボとなるナユタン星人、Noz.、髙木ます、さらに盟友のシンガーソングライター神谷志龍とタッグを組んだオリジナル曲に加え、本人選曲のボカロカバー4曲を収録。自身最高音の壁に挑んでいる。

“高音出したい系男子”の異名を持つウォルピスカーターは、もともと高音で歌っていたわけではない。地道な努力によって磨き抜かれた歌声の軌跡はニコニコ動画に残されており、現在の累計動画総再生数は3億回を超えている。

ヴォーカル・マガジン・ウェブでは、高音の開発、歌ってみた初期から現在の録音機材、2nd EP『分身 -Bunshin-』での新たな挑戦など、進化し続けるハイトーンヴォイスを深掘りする。

できるかどうかわからないけど、やれてる人がいるんだからどうにかなるんじゃないか?って

──音楽専門学校卒業後、独学で高音を出す方法を探していたというウォルピスカーターさん。まずは、ハイトーンヴォイスに興味を持ったきっかけを教えてください。

ウォルピスカーター 興味を持ったきっかけは、高い声を出す人が漏れなく喉の筋肉について話をしていたことでした。もともとインターネットで高い声を出している人に直接アタックして、“どうやって出してるんですか?”って聞いたりしてたんです。

そうやって情報収集をしていたら皆さん喉の筋肉や声帯の話をしていたので、やっぱりそういうことにも詳しくないといけないのかなぁ……と思って、いろいろ調べたのが始まりでしたね。そこからは自分の感覚とすり合わせながら勉強していきました。

──声帯まわりの筋肉については、インターネットで調べて理解していったのですか?

ウォルピスカーター そうです。最初は喉の筋肉がどう動いているのか、全然わからないじゃないですか。当時も動画サイトはあったんですけど、今と違って現役のヴォイストレーナーさんが喉の筋肉について解説する動画もなかったですし。だから、もしかしたらこの筋肉がこう動いてるのかもなぁ……と、ゆるい感じで覚えていきました。

その後YouTubeでヴォイストレーナーさんが動画を出し始めたのを観てから、“やっぱりこうだったんだ”とか、“自分で思っていたのとは少し違うな”とか、時間をかけて理解していきましたね。

──“高音は生まれ持った人だけの特別なものではない、努力でも手に入れられるものだ”と伝え、体現していると思うのですが、最初は少しでも手がかりや実感がないと、なかなか信じられないところもあると思うんですけど。

ウォルピスカーター それはそうですよね。

──最初に小さな、でも確かな手応えを感じた瞬間はどんなときでしたか?

ウォルピスカーター ある日突然(高音が)出るようになるんです。“昨日できなかったことが今日は少しできるようになっていた”とかではなく、僕の場合はある日突然ダッッとできるようになって、5音ぐらい突然声が高くなったんですよね。だから、その瞬間を迎えられるかどうかかなって。

──小さく進歩するというより、成果が出ない日が続いても忍耐強く継続する中で、急に変化する?

ウォルピスカーター そうなんです。成果が出ない日のほうが多いと思います。1年間毎日練習して、その中でたった1回だけ。そんな感覚が開ける瞬間が1回あればいいかなって思うぐらい。

──最初の壁を突破するのには1年以上かかりましたか?

ウォルピスカーター 1年どころじゃなかったですね。2〜3年ぐらいやって初めて1回目の壁を越えました。ある日突然やり方がわかるようになるんですよ。なんで今までこうやらなかったんだろう……?ってぐらい、急にわかる瞬間があって。

たぶんそれは経験値が溜まって、おそらく喉の筋肉と声の出し方の感覚、全部が育って合致した瞬間なんでしょうね。全部の条件が揃うまで、声はゆるやかに伸びるものではないと僕は思ってるんです。

──最初の壁を越えるまでの間は、“絶対出るようになる!”と思っていましたか? “わからないけど、やってみよう”って気持ちだったのですか。

ウォルピスカーター がむしゃらでしたね。高音が出るようになるかどうか、わかっていなかったです。当時、高い声を開発しようって人がいなかったんですよ。今でも全然いないんですけど。

高い声が出る人って、元から高い声が出る人がほとんどなんです。いろいろお話を聞いてみても、“わからないけど出るよ”とか、“なんか大きい声出したら高い声になりますけどね”と言っていたり……元から持っているもので戦ってる人が多かったんです。

だからもう、できるかどうかわからないけど、やれてる人がいるんだからどうにかなるんじゃないか?って気持ちでした。

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