【インタビュー】エッジヴォイスと低音を武器に──。PAREDが切り拓く“艶ある男性ヴォーカリストの声”に満ち溢れた1stアルバム!

2022.03.25

取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)

個性を出すためにも、下(の音域)を意識して伸ばすようにしました。

──PAREDと名づけた理由は?

PARED 僕自身が声マネから入って桑田佳祐さんとか玉置浩二さんとか、いろんなアーティストさんを聴いて影響を受けているので、“その人たちの色を自分の中で合わせて個性にしよう”と。キャンバスの中でいろんな色が混ざってひとつの色になれる、どんな色にもなれる多様な個性を持つという意味でパレットという名前をつけました。

──投稿初期からYouTubeの楽曲概要欄に、“がなり声と低音が武器”と自己紹介されています。最近は“男性ハイトーンヴォーカル全盛時代”と言える状況ですが、だからこそ売りを低音に寄せたほうがいいとか、いろいろ考えた部分はありますか?

PARED 正直、けっこうコンプレックスな部分はあったので……。もちろん人によりますけど、高い声のほうがやっぱり聴いていて気持ちいいなって、僕自身が思うんですよ。憧れがある反面、“その人たちになくて僕にあるものって何だろう?”と考えたときに、やっぱり低音とちょっとエッジの効いたヴォイスだなと思って。

そうやって低音路線で勝負しているアーティストの音楽を聴くと、曲がらない信念を持った歌い方をしている。僕もその人たちみたいに自信を持って、自分のコンプレックスを逆にポジティブに、プラスに変えていこう。“低音”と“がなりヴォイス”を前に出して売っていこうという決意になりましたね。

──そこを磨こうと決めてから、心がけていることは?

PARED 低音って、いろんな人に聴かせるとなると、ちょっとだけ盛り上がりに欠けたりする部分がある。例えば、“サビは必ずファルセットを入れて高めにいく”という流行の中で、どうやれば低音で盛り上げられるだろうと考えて、僕はエッジヴォイスを活用することにしたんです。そのエッジヴォイス自体を伸ばすには、もとよりAメロBメロを低く落として歌うことによって、ちゃんとサビで僕が出しやすいキーになるようにと。高さを伸ばすんじゃなくて、個性を出すためにも、下(の音域)を意識して伸ばすようにしました。エッジヴォイスの出し方で言うと、“あ〜〜〜”っていう地声の状態で(がなり声で)歌えるような練習はしています。

──なるほど! 800万回再生をしている「天ノ弱」って、確かにボカロの原曲とはかなり異なるアレンジ、歌い方でカバーしていますよね。今の話がすごく参考になったんですけど、PAREDさんの内面では、この曲はどういう思考回路のもと、キー設定を含めてカバーに落とし込んでいったんでしょうか?

PARED 昔からある曲で大好きだったんですけど、正直、あまり(BPMの)速い曲が得意じゃなかったんです。どちらかと言えばバラードでしっかりと歌い込みたいっていう想いがあって。当時バラードで「天ノ弱」をカバーしている方もいらっしゃったんですけど、1フレーズを聴いたときに、これ男性側のほうだと、またニュアンスとか雰囲気が全然違うんじゃないかなと感じたんです。むしろ「男性のほうがいい」と言ってくれる人もいるはずで、そこで勝負に出ようって。

確かキー設定はあえて原曲キーのオクターブ下で行った気がします。無理にエッジヴォイスも使わず、“出せるところを出す”って感じで歌いました。高すぎて出ないところも、“出ないからこそ感情が込み上がっている”というニュアンスにもなるので、あえて気持ち的にキツくひねり出すような歌い方をしています。

──意図したことかわからないですが、コメント欄を読むと、ヴァースの最も低い声を出した部分が高く評価されていますよね。あそこまで低く通る声を聴いたとき、みんな新鮮だったんだろうなと。原曲からのギャップもあったでしょうし……。

PARED 原曲があるからこそだと思うんですが、自分の工夫した部分を評価してもらえたのは、やっぱり嬉しかったですね。

──女性アーティスト曲のカバーが多いことも、そういった工夫が活かされるからでしょうね。

PARED そうですね。本当に曲によるんですけど、“サビはもうちょっとガツンと行ったほうがいい”と思うときは、keyをプラス3〜4上げて男性keyに合わせることもありますけど、基本的にはけっこう低めで歌います。でも、インストの具合によるかもしれないですね。僕は低音で攻めたいからこそ、カバーはあえてピアノアレンジ、アコースティックアレンジにすることが多いんです。やっぱりそこで勝負したいからっていうところはありますね。

──バンドアレンジでいくと、美味しい声の音域がベースとギターの間に入っちゃうから?

PARED そう、そうです。

──ヴォイストレーニングに通った経験は?

PARED 1〜2回オンラインで練習の仕方を教えてもらったことがあります。その後、家で続けてやっているので、知識として一生残るものを教えてもらった感じですね。発声練習はレコーディング前に10〜15分くらいやるようにしています。僕は滑舌があまり良くないので、(プルルルルとしながら)リップロールで1個ずつ順に音を上げていきます。プルプルさせることによって唇に力を入れないことでブレスが安定するんですよ。この練習が5分ぐらい。残りがちゃんとした声出しというか……話すとちょっと長くなる感じの発声のルーティーンがあります(笑)。

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