【インタビュー】ひとみ(あたらよ) 1stアルバムに詰め込んだ多彩な歌唱表現。進み続ける中でも、ブレない自分の「芯」
2022.03.24
取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)
この人たちとだったらきっとやりたいことが表現できる。そう感じて結成した「あたらよ」
──あたらよは専門学校のメンバーで組んだバンドだそうですが、どうやって結成したんですか?
ひとみ あるとき、私がTwitterに「10月無口な君を忘れる」の弾き語り動画を1コーラスくらい乗せたんですよね。その時、たまたまギターのまーしーとドラムのたなぱいが一緒にいて、その動画を観たそうです。“これはバンドでやらないともったいない!”と思ってくれたみたいで、いきなり電話がかかってきて、気づいたらスタジオに入っていました(笑)。
本当は、シンガーソングライターでやろうかなと悩んでいた時期だったので、あんまり前向きではなかったんです。でも、いざみんなで音を出したら、ヴォーカルがちゃんと聴こえるのに周りには迫力があって、“バンドをやりたい!”と思った当時の私が憧れた“のぐちさんの立ち位置”に自分がいたような気がしたんです。この人たちとだったらきっと私のやりたいことができる。そして同じ学科のベーシストのたけおも誘って、今の4人になったという感じです。
──「10月無口な君を忘れる」がきっかけだったんですね。ひとみさん的には、メンバーのどんなところが魅力だったのですか?
ひとみ 前に組んでたバンドでは、例えば優しくソフトに歌いたいところに激しいギターを入れてくるということもあったので、自分のやりたいことが100%届けられていない気がしたんです。でもあたらよは、私の弾き語り動画を聴いて“届けたい”と思ってくれたメンバーで結成したバンドなので、各々のやりたいことを出してはいるんですけど、第一優先として“歌をちゃんと届けること”を大事にしてくれていて、すごく嬉しいです。
──そこからミュージックビデオが生まれるまでには、どんなストーリーがあったんですか?
ひとみ 学校では定期的にオーディションがあって、そこで賞を獲るとレコーディングができて、学校が作るCDに楽曲を載せられるんですね。あたらよを組んだのは卒業間近だったんですけど、“せっかくだし最後に出てみようよ”という感じで、「10月無口な君を忘れる」を仕上げていきました。結果、賞をいただくことができて、レコーディングもしてもらったので、ちゃんとしたバンド音源を作ることができたんですけど、それが私たちのゴールになっちゃってて……。
──おっと。それで、どうしたんですか?
ひとみ 卒業して私は一度、就職しました。配属先が遠くの小田原ということもあって、1年ぐらいはスタジオ練習も2ヵ月に1回という状態で。ある日、仕事終わりに家で SNS をチェックしてたら、サカグチヤマトさんという好きなクリエイターの方が動画作品を上げていたんです。それを観ていたら、「10月無口な君を忘れる」とすごくリンクしたというか、“この人に MVを作ってもらったらどうなるんだろう”ってワクワクしちゃって(笑)。なんの前触れもなくメンバーに「ねえ、MV作らない?」ってLINEを送ったんです。そしたらメンバーも「ひとみがやっとやる気になったか!」と、すごく前向きに受け入れてくれて。
そこからダメモトでサカグチさんにお願いしたら、“ぜひ一緒にやりましょう”と快諾してくださって、仕事の休みを駆使して進めていきました。MVで海での演奏シーンがあるんですけど、あれは小田原の海で撮ってるんですよね。仕事が忙しすぎて小田原から動けなかったんで、メンバーがわざわざ楽器を運んで来てくれて。そうしてできあがった作品をYouTubeに投稿したという感じです。
──そういった経緯であの大ヒット作品が生まれたんですね。
ひとみ いやぁ、本当に。想像もしてなかったですね。
──以降、コンスタントに楽曲やEPをリリースして、この1年はかなり忙しかったんじゃないですか?
ひとみ そうですね。もともと MV を作りたいって思ったのも、いろんな人に「あれいい曲だよね」って言ってもらってるのに、知られないまま埋もれていくのは可哀想だなって、楽曲が世に存在してることを記念に残そうという気持ちで作ったんですよね。まさか1曲目であんなになるとは思っていなくて。じゃあ2曲目もリリースしましょうとなったときに、ストックがゼロだったんです(笑)。自転車操業みたいな感じで、作っては出して、作っては出して……とやっていたので、かなり忙しかったです。
──夏には『THE FIRST TAKE』へも出演を果たしました。「夏霞」はひとみさんのアカペラから始まる大胆なアレンジでしたね。
ひとみ 『THE FIRST TAKE』はすごく歌を聴くイメージがあったので、“『THE FIRST TAKE』だからこそ聴ける”という部分を作りたかったんです。なので、最初はあえてアカペラにしました。
実は緊張して声が震えちゃったりするかなって思ったんですよ。でも、ヘッドホンをして、そこから流れてくるメンバーの雰囲気を聴きながら歌うっていうのは、レコーディングの雰囲気に近かったんです。なので、緊張はしましたけど、思ったほどはアガらず、意外と普段通りに歌えたなって逆にびっくりしました。『THE FIRST TAKE』に出たことはバンドにとっても大きなことだったと思います。良い自信になりましたね。
──音源のほうの「夏霞」には美しいピアノの旋律が入っていて、これはひとみさんが弾いているそうですね。
ひとみ 作曲はギターでやったんですけど、絶対ピアノを入れたらいいなーって思っていたんです。それで、デモにはアコギと歌と、そしてピアノを重ねて入れてメンバーに送りました。
私はギターの単音弾きはできなくて、コードでしか弾けないんですけど、ピアノだとレンジも広いし難しいリフもわりと弾けるので、作曲の幅が広がるなって思います。
──作曲スタイルはおもにギターですか?
ひとみ ギターで作ることが多いんですけど、たまにピアノで作ったりしてます。
──曲作りで影響を受けたアーティストはいますか?
ひとみ メンバーがひとみの作るメロディは覚えやすいって言ってくれるんですけど、高校生のときにK-POP をたくさん聴いていたんですよね。K-POP のメロディって頭に残るじゃないですか。そういうところは影響を受けてるのかな。
──K-POPのコードを分析したこともあるんですか?
ひとみ 分析したことはないんですよね。コードはあまりわからなくて、自分の気持ちいい音を並べて作ってるので。ちゃんと分析しなきゃなとは思ってるんですけど。