【インタビュー】安斉かれん、新作のヴォーカルワークを語る。楽しむことの大切さ

取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)

いろんな歌に挑戦し、楽しみながら、自分らしさを見つけていく

──デビュー曲「世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた」では、すでに自分のスタイルを確立していると感じました。

安斉 もともと音楽を始めたきっかけは洋楽ロックだったりしたので、実はデビューでJ-POPをやるとなったときは少し戸惑ったんです。ただ、逆にあんまり聴いてこなかったから自分の中では新しくて、“こっちも楽しいな!”と感じながら歌うことができました。

実は「自分らしさ」というのはまだ明確に自分の中では見えてなくて。“なにが安斉かれんなんだろう?”というのはずっと考えていたので、今回の7作連続リリースでは毎回ちょっと違った作品を歌ってみようって挑戦しているんです。いろんなものにトライして、好きなジャンルを増やしている最中です!

──昨年9月に第1作「18の東京」をリリースし、現在までで4作を発表していますが、手応えはいかがですか?

安斉 自分の中でも新しいと思う曲ばかりに出会えているので、すごく楽しいです! やっぱり音楽って自分がやってて一番楽しいと思えないとダメだと思うので。

──7作連続リリースは、前作「キミとボクの歌」から約7ヵ月空いてのスタートですが、その間ヴォイストレーニングに打ち込んでいたのですか?

安斉 ヴォイストレーニングはずっと続けていますけど、その7ヵ月間は好きなことに沢山触れていましたね。歌はもちろん、ピアノを弾いたり、絵を書いたり、アートに触れたり。次の作品までの準備期間として、多くの刺激を取り入れる期間でした。

──例えば、言葉の最初にエッジボイスを乗せたり、語尾の最後に喉を絞るような音を入れるといった表現がよりクリアになっている印象ですが、細かいヴォーカルディレクションがあったのですか?

安斉 それはすごくありました。曲ごとに、“ここは誰かに向けて歌うのか、それとも自分自身と向き合いながら歌うのか?”とか、考えながら一緒に作ってもらってます。ディレクションしてくれる方からは具体的な指示も出ますし、まさにエッジボイスの部分のように1音だけ細かく言われたり、こういう感じの声質でやってみようといただくこともあります。

──歌唱で苦労したエピソードはありますか?

安斉 苦労したことはないんですけど、楽しかったのは第2作目の「夜は未完成」です。この曲は今までの雰囲気と違って、ちょっとジャズテイストな歌い方をしているので、新しくて歌うのが楽しかったですね。

──第5作目となる新曲「ちゃんと世界線」は疾走感あふれるポップパンクな楽曲です。

安斉 この曲では世界線や並行世界について書きたくて、そうやって言うとちょっと難しく聞こえるんですけど、そうじゃないんです。昔のカメラロールを見ていた時に、ふと、今私がアーティスト活動をしていなかったら今頃何をしていたんだろう?とか、あんな世界線もあったのかな?と振り返ることがあって。でもやっぱり今を生きていたいなって、過去の選択があっての今だから、過去よりも今をちゃんとしっかり生きていこう!って、改めて感じだと言うか。前向きなメッセージの曲なんです。疾走感あふれるメロディとも合っていて、聴きやすい曲になってるんじゃないかな。

そしてタイトルの「ちゃんと」は自分の言葉から引っ張ってきたんです。私はよく使うんですよ、“わ〜、ちゃんと人間してるね”、“ちゃんと人生してるね〜”みたいに(笑)。それで“ちゃんと世界線してるね”というニュアンスで「ちゃんと世界線」とタイトルにつけました。

──「世界線」という言葉はとても安斉さん世代の言葉だなと感じますが、日常でもよく使いますか?

安斉 めっちゃ使いますね。世界線、世界線ってよく言ってる。“そっちの世界線ね〜”みたいな(笑)。

──詞とメロディはどっちが先にありましたか?

安斉 これはメロディが先ですね。

──2番のBメロ《少し大人になった》はキュッと詰まっている言葉が音の聴こえ方としてカッコいいです。作詞の際、意識的に音数を変えることもあるんですか?

安斉 最近はあんまりしないようにしてます。ここの部分も意識的にではないんですけど、言いたいことを詰めたらそうなりました(笑)。

──歌詞を乗せるときにイントネーションなど注意していることはありますか?

安斉 あります!サビの最初の音は、「ふ」とか「へ」で始まっちゃうとパンチがなくなっちゃうので、「ぼ」とか「が」のほうが聴こえやすいなと思って使ってます。サビの最初はキャッチーな感じにしたいなっていつも考えながら書いてます。

──作詞の際、影響を受けたものはありましたか?

安斉 自分のスマホのカメラロールを見たりしてました。歌詞にも《昔のカメラロールを見ていたんだ》とあるんですけど、それを見ながら“ああ、ここでこうなったんだな”、“ここで歌手を始めたんだな”と振り返りつつ書いていきました。

──その2番Aメロの《昔のカメラロールを見ていたんだ》はノスタルジックさを感じさせる落ち着いた歌い回しになっていますね。

安斉 この曲は前向きでありながらも、自分を見据えてるような現実味のある歌詞になっているので、Aメロ、Bメロは自分自身の呟きという気持ちで歌ってます。

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