【インタビュー】YU(I Don’t Like Mondays.)、『ONE PIECE』主題歌で魅せた新しい歌唱表現。詞に込めた人生の挑戦と葛藤
取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine web)
2022年1月9日(日)、I Don’t Like Mondays.がTVアニメ『ONE PIECE』の主題歌となる新曲「PAINT」を配信リリースした。
疾走感溢れるサウンドと、キャッチーなメロディライン、そして作品をリスペクトした歌詞のワードチョイスはまさに『ONE PIECE』の世界観を感じさせる。さらには「困難も自分の色で塗り替える」というメッセージが込められたYUの歌詞と、力強くストレートな歌唱表現は、多くの人の背中を強く押すだろう。
“アイドラっぽさ”から一線を画し、I Don’t Like Mondays.としての新たなアプローチを魅せた部分と、作品と“自分らしさ”がリンクする部分まで落とし込み、YUらしい表現へと昇華させた作詞とヴォーカルアプローチ。そんなYUの「PAINT」で試みた新しい挑戦と葛藤について、詳しく聞いた。【最後にプレゼント情報あり】
ヴォーカルのキーは思い切ってDでいこう、モンキー・“D”・ルフィの意志があるぞ!と。
──新曲「PAINT」が『ONE PIECE』の主題歌に決まったということで、オファーを受けたときの率直な感想を教えてください。
YU オファーをいただいたときは、メンバーもスタッフも喜んでいたんですけど、僕は喜びより不安のほうが大きかったです。『ONE PIECE』という、自分が中学生くらいから読み続けている大好きな世界的作品に見合う曲や詞を、果たして自分が生み出すことができるのかと不安でしたね。
──真っ直ぐな歌詞と爽快なサウンドからまさにワンピースの世界観を感じました。『ONE PIECE』をどんな風に紐解いて曲に落とし込んでいきましたか?
YU 最初はおよび腰になっていたというのが正直な心境で……。でもとりあえずは取り掛からなきゃと。すごく悩んで、まずは『ONE PIECE』をもう一回読み直しました。最初はクリエイターとしての目線で読んでいたんですけど、途中でそれを忘れて楽しんでしまって……(笑)。でも読み直す中で、やっぱりルフィ含め麦わら一味が強敵を倒し突き進んでいく姿に素直に勇気づけられました。そういう意味で、いただいた大きなチャンスを僕がおよび腰で取り組んでちゃダメだなと感じて、どうにかトライしよう!と前向きな気持ちになりました。
そこから作詞の段階で、僕が今伝えたいことはなんだろうと考えた時に、コロナで時代が混乱してる中で、特に音楽業界では今まで当たり前だったことが当たり前じゃなくなって混乱していたんですよね。それを切り開いていくにはどうしたら良いんだろうって自分たちのバンドを通して考え直して、結局自分が好きなものって音楽だしバンドだなって、“やっぱりこれでやっていきたい”と再認識したんです。そうして好きなものに打ち込むとまた新しい扉が開いていくというのも実感していたので、その想いを曲にしようと思いました。
また、アニメが始まってタイトルがバーンと出てくるオープニングの映像をイメージしながら、パッと開けるようなワクワクする世界、冒険感、スピード感、コード感といった部分で『ONE PIECE』の世界を曲にちりばめながらも、その世界だけで終わっちゃう曲は嫌だなと思ったんです。見終わったあと、曲を聴き終わったあと、自分の人生に活きるようなメッセージが残せるものを作りたいなっていうのが、僕自身が『ONE PIECE』を読んで感じたことだったので、それを曲単体でも表現できないかなと考え始めました。
──楽曲コンセプトを作るにあたってメンバー内ではどんな話し合いをしましたか?
YU 試行錯誤はあったんですけど、サウンド面では『ONE PIECE』の主題歌ということで変化球でなく、どストレートな直球を投げようというのが全員一致してあって、そこはブレなかったですね。自分たちの色やアイドラっぽさを前に押しつけるんじゃないなと。
メンバー全員が大好きでリスペクトしている作品なので、作品に本当に似合う曲じゃなかったら僕らが歌う価値もないし、曲が選ばれる意味もないので、まずはそこを目指しました。僕らはバンドだし絶対バンドサウンドがいいね!というところから、やっぱりギターリフで始まるワクワク感は絶対入れたいよね!といった感じで、けっこうロジカルに順序だてて進めていけたところですね。
──具体的にどういった順序で楽曲制作を進めていったんですか?
YU まずはテンポ感あたりから決めたかなと思います。ギターやバンドサウンドでいきたいといった、やりたい要素はいくつか決まっていて、その上でテンポ感は絶対疾走感が欲しいよね!と。オープニングの物語が始まるところで、パーッと開けて海がバーンと見えるようなイメージにしたいし、敵を倒しに行くぞ!感も作りたいから、そういったドラミングから考え始めて、ひとつひとつ組み立てていきました。
──歌のメロディラインはキャッチーさがありつつも心に染みるメロディになっていて。こだわった点を教えていただけますか?
YU 一番はサビですかね。突き抜けるイメージのメロディラインを作りたいねって悩みました。こだわったポイントは僕のヴォーカルをどのキーにするのかというレンジ。この曲はキーがDなんですけど、今まであまり使ってこなかったキーなんです。普段だったら明るすぎちゃうから1個下げてD♭にしていて、D♭の曲はいっぱいあるんです。でもそこは思い切ってDでいこう、モンキー・“D”・ルフィの意志があるぞ!と(笑)。なので、僕のヴォーカルが今まで以上に高くて、おそらく今までの中で一番高いです。ヴォーカルワークがすごく問われる部分で、レコーディングでどこまで自分が発揮できるかもあったし、きっとこの曲はライブでも歌っていくことになるので、それが果たして大丈夫かという懸念があったんですけど……レコーディングは無事にできました。自分の声の特徴と、この曲の明るさや勢いといった部分にかなり気をつけて考えていきました。