【インタビュー】Novel Core 磨きあげるヴォーカル・アプローチ 足掻きながらも戦い続ける理由

2021.12.15

取材・文:鈴木 瑞穂(Vocal Magazine Web)

絶望した時はきっと人生の1シーンの撮影の最中

──「PANIC! feat. SKY-HI」では、「A GREAT FOOL」とはまた違った色気ある歌い回しが印象的でしたが、この曲の歌唱面ではどんなところに気をつけていましたか?

Novel Core この曲は、自分がファンの人達に音楽を通じて“まだ見せてない顔ってどんな顔だろう?”と思った時に、ぶっちゃけ1,000パターンくらいあって(笑)、その中で今一番見せたいなって思ったのが、声に艶を出してちょっと色気がありつつも部分的にがなったり、ファルセットとミックス・ヴォイスの間を行き来するといったもの。強弱を入れたり、ちょっと面白くて、かつ最近の日本の音楽シーンであんまりこのタイプのヴォーカルは聴かないんじゃないかなと、自分が思っていた部分を意識して使いました。

──SKY-HIさんとのフィーチャリングですが、楽曲はどうやって作っていったんですか?

Novel Core この曲は少しヨレたルードな感じを出したかったので、Matt Cab & MATZのお二人にトラックをお願いする際に“サーカスのイメージで”と伝えたんですよね。ピエロのようなヨレたルード感を表現したくて。できあがったデモトラックを日高さんと一緒に聴いたら、イメージはぴったり合ってたんですけど、“上に乗せるヴォーカル・アプローチが少し固定されるかも”という感じがあって。正解だねっていうアプローチしかできなくなる気がちょっとだけしたんです。

なので、もう一度Matt Cab & MATZさんと僕の3人でスタジオに入り直して、イチから新しくトラックを作っていきました。ヴォーカル部分も、僕がブースに入ってフリースタイルでメロディ部分を乗っけて、日高さんもフリースタイルでラップ部分を宇宙語で乗っけていって、その2つを組み合わせて歌詞を作ってレコーディングする感じでした。

──トラックも含めて、セッション的な感じで作っていったと。

Novel Core そうですね、完全即興のセッションって感じでした。

──今回、SKY-HIさん以外にも豪華なアーティストの方々とフィーチャリングされてますよね。「WIN feat. AK-69」ではHIPHOP界のKING、AK-69さんを迎えていますが、実現に至った経緯を教えてください。

Novel Core AK-69さんは本当にもうずっとやりたくて。僕が『フリースタイルダンジョン』というフリースタイルバトルに出た時に、ライブゲストがAK-69さんだったんですよ。Instagramに“自分のバトルのあとにAK-69さんのライブ流れるのやべー!!!”って、AK-69さんへメンションをしつつUPしたら、AK-69さんが“放送でラップ聴いたぜ。お前の世代が盛り上げてくれたら俺も嬉しいし”って連絡をくださったんです! そこからちょこちょこ連絡を取って、フェスとかでもバックステージに呼んでくださったり、すごく良くしていただいてたんです。

やっぱりHIPHOPシーンのKINGだと思うし、アスリート・シーンにも大きな影響を与えていたり、音楽の持ってる“人を鼓舞するパワー”を体現している方で、ぜひいつか作品で一緒に声を乗せていただく機会を作りたいなと思ってたんですけど……。AK-69さんの名前がフィーチャリングで並ぶというのはやはりすごく大きなことで、横に入っていても恥ずかしくないと思えるぐらいのアーティストになってからじゃないとできないなと、今回のアルバムも実は諦めていて最初オファーしてなかったんですよ。ただ、アルバムを制作休止して3ヵ月間お休みいただいた中で、アルバムに対する想いがより一層強くなって、逆にこのタイミングでAK-69さんに声を入れていただくことが、3年後5年後の自分にとって大事なことになるんじゃないかなと思って、AK-69さんに直接連絡して自分の気持ちをお伝えしたら“やろうぜ!”とふたつ返事で引き受けてくださって、実現に至りました。

──レコーディングはフェイス・トゥ・フェイスですか?

Novel Core 途中までリモートだったんですけど、ちょうど3ヴァース目がパスし合う掛け合いだったので、その部分は一緒にスタジオに入って録りました。本当に楽曲のとおり僕が先に4小節のリリックを書いて録って聴いてもらって、次にAK-69さんが4小節を書いて録って一緒に聴いて……をくり返しながら、キャッチボールみたいな感じでレコーディングしていきました。

──改めてAK-69さんの好きなテクニックはどんなところですか。

Novel Core まずはなんと言っても歌詞ですよね。正真正銘、AK-69さんしか歌えない。この曲の中で出てくる《車 ジュエリー 貸すぜ俺の使わねぇの 取りに来るか上に》とか、《58階 ペントハウス ROMANEE-CONTIで乾杯》って……、そんなラッパーはAK-69さん以外日本にいないよ!!みたいな(笑)。レコーディングもAK-69さんが所有しているビルにお邪魔したんですけど、ラッパーとして成功して武道館やアリーナといった大きなステージに立って、いまでもなおトップに君臨していて、なおかつ稼いだお金でビルを建てヴォーカル・ブース作って、若い世代にも還元してみたいな、HIPHOPシーンで、あるべきサイクルを作り出してる人はAK-69さんがダントツだと思うので。“この、人やっぱり、とんでもない人だ”っていうのは、レコーディングしながらひしひし感じましたね。

──後続の「PERIOD.」では《フラカンの深夜高速》という歌詞が気になりました。

Novel Core おー、そこツッコんでもらえて嬉しい(笑)。フラワーカンパニーズは中3ぐらいの時にたまたま見つけて好きになって、「深夜高速」とか「感情七号線」が特に好きです。「SOBER ROCK」の歌詞にも《時給960円の夢》って自分の夢を表現する歌詞が出てくるんですが、それも「感情七号線」に出てくる《六畳一間のロックンロール》という歌詞からインスパイアを受けて書いてたりします。自分が死にたくなったり諦めてしまいたいと思った時に、自分の心に再度灯火をつけてくれるのがフラカンの音楽だったことが多かったので、今回もちょうど一番苦しかった時期にフラカンの「深夜高速」を聴いていたことを思い出しながら書いた感じでしたね。

──“死生観”は以前と今とで変わっていますか?

Novel Core 高校1年生の時は人格が分裂してるぐらいおかしくなってた時期もありました。MCバトルや路上パフォーマンスで多くの人に見ていただいて、たくさん応援してもらったり逆に心ない言葉を浴びせられる中で、当時の自分はただの15歳で思春期でもあったので心の成長も追いついていなかったし、若いうちにスポットライトを浴びて人前に立って生きていく中で感じた底知れない恐怖やトラウマはいまだに心の中に強く残っていて。

ただ、その時は死にたいと思ったこともあったけど、どうにか踏ん張って乗り越えた結果、今みたいな素晴らしい日々に繋がっている。20歳の自分が15歳の頃の自分に会ったらなんて声をかけるかなって考えたら、たぶん“今、頑張れ”って言うだろうなって思ったので、それをそのまま歌詞にしました。死生観も180度変わりましたね。

──Novel Coreさんの歌詞は、韻も踏みつつもストーリー性もしっかりとある印象を受けますが、歌詞を書く時に意識していることは?

Novel Core 昔から意識として持っているのは、文章として読んだ時でも、何が言いたいのかがちゃんと伝わるものにしたいと思っています。もちろん表現として比喩や少し遠回しな言い方が正しいこともあるし、僕も使うんですけど、できる限り脚色せず真っ直ぐ表現したくて。自分の中にあるピュアな気持ちをそのまんまみんなに伝えるにはどうしたらいいんだろうって考えながら歌詞を書いてるので、文章として読んでも人にちゃんと伝わるように、常に意識してます。

──そして最後の曲「THANKS, ALL MY TEARS」は、先日のライブのMCも感動的だったのですが、この曲にはどのような想いが込められていますか。

Novel Core この曲はみんなに対してでもあるし、未来の自分自身に向けたファイトソングでもあります。特にこのアルバムでは制作期間中に3ヵ 月お休みしたことが自分的には大きなマイナスで、めちゃくちゃ悔しかったです。ちょうどその間に、日高さんもリリースが続くし、BMSGも立ち上がったばかりで勢いがあって、『THE FIRST』もスタートして……。その中で自分が何も行動を起こせないことへの苛立ちや情けなさを死ぬほど感じました。

何かふと、もし今自分が急に音楽を投げ出したらとか、もし自分が死んじゃったら明日からこの世の中はどうやって回っていくんだろうって余計なことを考えちゃった夜があって。でも、15、6歳の苦しかった時期を乗り越えた結果、今こうやってスタッフさん達やファンの皆と出会えて、音楽で感動を分かち合えている訳で。ということは、もし数年後にまたつらいことがあった時、こうやって頑張って乗り越えたことを思い出したら、また踏ん張れるんじゃないかと思って。生きていく中で心に影が落ちた時、“今は人生のエンディングを盛り上げるために、挫折したり絶望するシーンを撮影してる最中なんだな”って思って踏ん張れるよう、未来の自分に向けて、そして自分と同じような気持ちを味わっているすべての人たちに向けて応援歌として作った曲です。

──ピアノを基調としたスローテンポで歌唱を目立たせる構成になってますよね。

Novel Core もともとオーケストラ・サウンドでサビもパーっと広がるサウンドだったので、もっとポジティブな印象の曲にしようと思ってたんです。結果的に休んだ期間中に書き直して、ネガティブとポジティブが共存する歌詞になりましたが、この歌詞をちゃんと表現するためには背景色がどんなものがいいのかを改めて考えたんです。《ボロクソに負けて》とか挫折的な歌詞のうしろで、逆にバックのピアノがすごく跳ねてたりホーンが高らかに鳴っていたり、勝利を想像させるようなポジティブな音色を入れて、歌詞との良い矛盾を意図的に作っていく作業をプロデューサーのUTAさんとしていきました。

──サビではヴォーカル音域が高くなっていきますが、喉や身体の使い方はラップの時と違うんですか?

Novel Core もう180度に近いぐらい歌モノとラップで変わってますね。

──どんな感じで違うんですか?

Novel Core 口の中の使う空間やベロの位置もけっこう変えてます。あと、ラップは頭から鳴らすというよりマイクに対して声を真っ直ぐぶつけにいく感じを意識するんですけど、歌モノで、特にこの曲のようにサビでパッと開く感じでファルセットに切り替わるところは、鼻の付け根の辺りから声が飛ぶように意識したかったので、ブースの中で直接手を当てたり、身振り手振りつけながらレコーディングした覚えがあります。

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