【ライブレポート】声優・千葉千恵巳＆宮原永海、シンガーソングライター・Runeによる歌と朗読劇のイベント「水瓶に浮かぶ魚が歌えば」

2023.03.2

日時：2023年２月19日（日）、会場：JZ Brat SOUD OF TOKYO（東京・渋谷）
取材・文：藤井徹（Vocal Magazine Web）

TVアニメ『おジャ魔女どれみ』春風どれみ役、NHK『ぐーチョコランタン』ズズ・マリー & ガリー・マリカ役などで活躍する声優・千葉千恵巳。

『おジャ魔女どれみ』飛鳥ももこ役、『イナズマイレブン』木暮夕弥役などの声優で活躍し、歌手としても活動する宮原永海。

プロ野球選手の登場曲や、北海道サッカー協会公式応援ソング「Heat Up」をリリースしているシンガーソングライターのRune。

親交の深い３人の女性アーティストが集い、2023年２月19日（日）に渋谷JZ Brat SOUD OF TOKYOにて『水瓶に浮かぶ魚（うお）が歌えば』を開催した。
リラックスした親しみ深いトークと、高い音楽性で魅せた宮原とRuneの歌唱、千葉の書き下ろし脚本で披露された朗読劇の模様をお届けしていこう。

　今回の会場であるJZ Brat SOUND OF TOKYOは、渋谷セルリアンタワー２階にあるダイニングクラブ。オシャレでありながら堅苦しくなく、カジュアルな雰囲気で楽しめる空間でどの席からでもステージが見やすい。今回はステージを見下ろす位置の席に座り、マリゲリータをオーダーして開演を待つ。

　1stステージは13時にスタート。バンドに続いて３人が舞台に登場し、口々に“こんにちは”と挨拶すると、満員の客席が大きな拍手で応える。

　オープニングMCでは、年長の千葉が独特の“ゆるさ”で進行して、それをしっかり者のRuneと宮原が支えるという流れ。

　まずは３人がライブを行なうことになったいきさつからで、千葉と宮原は『おジャ魔女どれみ』での共演がきっかけ。当時の声優陣で宮原が最年少で、千葉いわく（宮原が）“お腹を出して歩いていた頃”から長い付き合いが続いているそうだ。
　また、千葉のボイトレの先生として知り合ったのが、本誌連載でもお馴染みの小泉誠司（ニューベリーサウンド）で、その門下生であるRuneとは朗読劇の楽曲制作などを通じて仲良くなっていったとのこと。

　今回のライブは宮原が千葉に「ライブやらない？」と話を持ちかけたことを皮切りに、しっかり者のRuneを巻き込んで、“様子のおかしい（千葉談）”３人によるイベントが企画された。
　続いて３人を支えるバンドメンバーを紹介。ピアノの安保一平、ギターの渡邉幸啓、パーカッション＆コーラスの稲葉“やすべえ”康典（cozycozy）という面々だ。

　トップバッターを務めるのは宮原永海。１曲目は2003年のアルバム『REASON』から「このまま…」を披露し、ボッサのリズムに乗せて伸びやかな声で会場を魅了していく。地声の芳醇な響きにプラスして、エンディングは見事な英語歌唱によるフェイクで聴かせてくれた。

　２曲目はアルバムのタイトル曲でもあるデビュー曲「Reason」。“発売当時は大人っぽく感じていたけれど、今になって自分がやっと着いてきたなと感じる、私の大好きな曲です”と紹介して歌い出した。
　R&Bテイストのスローバラードで、パーカッションと歌だけでクールにスタートし、ピアノとギターが加わっていく。宮原の歌唱が演奏と溶け合い、徐々に熱を帯びていく様子にオーディエンスもゆっくりと身体を揺らしながら楽しんでいるようだった。

　続いて登場したのはRune。最初に演奏したのは「2021」というナンバーで、コロナ禍に感じた想いを書き残しておきたいと作り上げたバラード。張りのある太く力強い声とファルセットによる切なさの切り替えで、感情の揺れを表現するテクニックはさすがで、演奏後は大きな拍手が届けられた。

「2021」Rune

　２曲目は読売ジャイアンツの鍵谷陽平投手の登場曲である「Key Man -施錠完了-」。鍵谷投手の名前と３アウトを掛けた《One Lock、Two Lock、Three Lock》のリフレインでは会場も一体となり盛り上がっていく。

　３曲目は２月14日にリリースされた、北海道サッカー協会の公式応援ソング「Heat Up」。チャントとしての盛り上げ部分では腕を振り上げ、メロディアスな箇所では秘めた力強さを表現してみせた。エレキに持ち替えた渡邉幸啓のギターソロもスピーディに駆け巡っていく。

　すっかり会場が温まったところで、千葉と宮原が合流。トーク後に３人による朗読劇「雨の祠」がいよいよ始まった。

　山上に棲む水の神である龍（宮原）の元へ、麓の小さな村から幼い娘（千葉）が雨乞いをお願いするために登ってくる。息遣いだけで山登りの険しさを、村のため生贄にされることも厭わない覚悟と怯えを同時、かつ一瞬にして声だけで聞き手に届ける表現……これがトップ声優の力なのだと驚かされる。

　それを受けて低く落ち着いた声で山の神を演じる宮原。こちらもひと声で龍の大きさや懐の深さをオーディエンスの脳内に生み出し、物語へグッと引き込んでしまう。

　朗読劇に初挑戦というRuneはナレーションを担当。抑揚をつけた読み方を聞いていると、とても初めてとは思えない。さらに劇中音楽、挿入歌の作曲など彼女が果たす役割が非常に大きかったのは言うまでもない。

　楽器陣が生演奏を加えながら、物語は進んでいく。おとぎ話の世界観にアコースティックサウンドが心地よい。Runeを含めたナレーションやBGMと、台本を手に演じる二人との掛け合いはアイコンタクトではなく、まさに「呼吸」そのもの。稽古で染み込ませているとはいえ、その違和感のなさにこそ、プロフェッショナルの技が凝縮されている。

　傷ついた龍（水の神）と、献身的に看病を続ける村娘・シロのやり取りを経て、物語はクライマックスへと近づいていく。自らの鱗を毟り取り身を削って雨を降らす龍に《やめて！死んでしまう！》と泣き叫ぶシロ。迫真の演技に客席が息を呑む。

　その後、龍が傷つかずに村人を救うため、湖から村への水路を作り始めたシロ。村人の手伝いを求めるため意気揚々と麓に降りて行ったのだが……。

　ラストは本作のために宮原が作詞、Runeが作曲と編曲を担当した「約束の詩」を３人で歌唱して舞台は幕を下ろし、会場は大きな拍手に包まれた。

　朗読劇は終了し、オーラスとしてRuneが千葉のために書き下ろした「おとぎうた」を披露。客席のハンドクラップに合わせてギターソロが鳴り響いたのち、美しいコーラスをともなってサビが繰り返される。千葉が出演者とスタッフを紹介して「水瓶に浮かぶ魚が歌えば」の1stステージは盛況のうちに終了した。

公演情報

『水瓶に浮かぶ魚が歌えば』
日時：2023年２月19日（日）
会場：東京・渋谷JZ Brat SOUND OF TOKYO
出演：千葉千恵巳、宮原永海、Rune
演奏：安保一平（p）、渡邉幸啓（g）、稲葉“やすべえ”康典（perc）
プロデュース：小泉誠司（ニューベリーサウンド）

朗読劇「雨の祠」
脚本：千葉千恵巳／音楽：Rune
挿入歌「約束の詩」
作詞：宮原永海／作曲・編曲：Rune

リリース情報

北海道サッカー協会　公式応援ソング「Heat Up」Rune
2023年２月14日（火）リリース

＜収録曲＞
01. Heat Up
02. Heat Up（Instrumental）
作詞・作曲：Rune　編曲：籠島裕昌

Runeオフィシャルサイト販売リンク
https://runeshop.theshop.jp/items/71640168

Heat Up／Rune（仮MV）

イベント情報

宮原永海&千葉千恵巳のラジオ風トークイベント
「whispersラジオ vol 15.16」

2023年３月５日（日）
会場：Under the mat
〒153-0061 東京都目黒区中目黒３丁目６−７河田ビル２F
vol 15／11:00開演
vol 16／14:30開演（ともに30分前開場）

予約について

本年もwhispersラジオよろしくお願いいたします✨
新年1回目は
2023年3月5日（日）
宮原永海&千葉千恵巳のラジオ風トークイベント
「whispersラジオvol 15.16」
予約2500円＋1ドリンク
当日3000円＋1ドリンク
vol 15/ 11:00開演
vol 16/ 14:30開演
（共に30分前開場）
場所Under the mat
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— 🐈千葉千恵巳🐈 (@ChiemiChiba) January 1, 2023