関取 花、全国ツアー“激闘編”を完結。再確認した音楽の煌めきと青。

2021.11.8

2021年10月21日 @ 東京キネマ倶楽部
取材・文:田代 智衣里(Vocal Magazine Web)
撮影:AZUSA TAKADA

関取 花が10月21日、東京キネマ倶楽部にて『関取 花 2021 TOUR 激闘編』の最終公演を迎えた。関取は2021年3月にメジャー1stフル・アルバム『新しい花』をリリース。昨年『春の五線譜ツアー』を行なう予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期をくり返した結果、やむなく中止に。5月に『家で五線譜』と銘打ったスタジオ・ライブを配信したが、生の歌声を届ける機会は持ち越しとなった。待望の有観客開催となり、リベンジとも言える今回のツアーは、彼女による弾き語りと、谷口雄(k)、ガリバー鈴木(b)、岡田梨沙(d)が参加するバンド・パートの二部構成となる。

老若男女が集った東京キネマ倶楽部。ジーンズに白いトップスの関取が、ステージ上に手を振って登場した。“どうもこんばんは、関取 花でーす!”と挨拶し、観客が熱い拍手で迎えると、早速お馴染みのトークをくり広げた。“早く歌えよって思うよね”と笑いながらも、まずは一人も欠けることなくツアーを完走できたこと、足を運んだ観客に感謝の言葉を伝えた。

今回のツアーでは、弾き語りパートのセットリストを全公演で変えている。この日1曲目に披露したのは、2011年リリース『中くらいの話』から「塀と宇宙」。首にかけたカズーを間奏で吹き鳴らすと、会場は故郷のような温かさに包まれた。続いて“この時期にライブがあるから歌える”と言って披露したのは、ライブでは何年も歌っていないという「10月のあなた」。生の歌声を“今”聴くことができる感動が沁みわたる。

このツアーで改めて青春を感じ、“青春は年齢ではなく相対的なものだと実感した”と話し披露した「最後の青」、CMソングとして彼女が多くの人に知られるきっかけにもなった「むすめ」を経て歌ったのは、『君によく似た人がいる』から「平凡な日々」。《笑い話にするんだ/笑えないことはそれでいいから/こんなこともあったって/話せたら僕らのもんさ/その先は》という歌詞は、現在の社会情勢において、希望を見出すための救いにもなるかもしれない。

第一部最後の曲は、8月20日に配信リリースされた「きんぎょの夢」。心地よいギターの音色が響きわたり、観客は最後の余韻までしっかり味わうように聴き終えてから拍手を贈った。関取は180度の深いお辞儀をして、ステージをあとにしたのだった。

休憩を挟んだ第二部では、開演アナウンスにバンド・メンバーも加わり、会場は賑やかな空気に包まれる。一瞬暗転すると、リズムに合わせてカラフルなスポットライトが点滅。東京キネマ倶楽部の醍醐味である上段のステージから、関取とバンド・メンバーがひとりずつ登場。観客の手拍子に合わせてコミカルなポーズを取りながら階段を降りてきた。

バンド・セットの1曲目は『新しい花』から「ふたりのサンセット」。“ライブ始まるよー!”の掛け声とともに「はつ恋」、「はなればなれ」、「太陽の君に」を立て続けに披露し、会場のボルテージは一気に加速していく。メンバー紹介では“今回のツアーは中学3年生の修学旅行みたいな感覚で、キラキラして見えた”という谷口の発言に一同が共感し、音楽に対するピュアな気持ちを取り戻したと話す場面も。その言葉通り、音を鳴らせる喜びを噛み締めるように、バンド・メンバーとアイコンタクトを多く取りながら、とびきりの笑顔で光を放った。

「街は薄紅色」でスペシャル・ゲストの齊藤ジョニーが登場すると、「恋の穴」、「それでもいいならくれてやる」、「私の葬式(バンド ver.)」を演奏し、エネルギー満ち溢れるステージに。“齊藤ジョニーと初めて出会った10代の頃はライブに苦手意識もあったが、ライブは楽しいものなんだと初めて教えてくれたのが齊藤ジョニーだった”と話す関取。5人の呼吸が重なり、ライブの楽しさを分かち合うように、メンバー全員がステージから観客ひとりひとりに笑いかける。

「黄金の海で逢えたなら」の演奏後には、齊藤ジョニー活動10周年記念ライブ『Johnny’s Room #17 〜10th Anniversary Party〜 第1部 ゲストの巻』に関取がゲスト出演することを知らせた。今日の続きを行なうと約束し、齊藤は一足先にステージをあとにした。

次に披露した「美しいひと」では、“時代的にシンセを入れたほうがいいのではと悩んだりもした結果、最終的に生音になった。私は私のままで頑張ろうと思えた”と語った。続いて「もしも僕に」、「君の住む街」をパフォーマンス。彼女の凛とした姿勢が、真っ直ぐで透明な歌声に表われる。

ライブが終わりに近づくと、“ツアーが終わったら燃え尽き症候群になっちゃいそう”と別れを惜しんだ。しかし、“ツアーを回りながら次の作品のイメージが見えてきた”という彼女の目は希望に溢れ、観客からは期待の拍手が湧き上がった。さらに、恒例の『年末だョ!全員集合2021』を12月に開催するとアナウンス。“楽しみは声を出せる時に取っておきたいのでアンコールはありません”と前置きし、ラストはアルバム表題曲の「新しい花」を披露した。

軽快なトークでついつい時間が押してしまった約3時間弱のライブだったが、“ライブって最高! 時間押してすみませんでした!”と叫ぶと、会場はまたも笑いに包まれた。最初から最後まで、充実感に満ちた笑顔をくれた関取 花。待望のツアーを締めくくったのだった。

セットリスト
『関取 花 2021 TOUR 激闘編』2021年10月21日(木)東京キネマ倶楽部

第一部/弾き語り
01. 塀と宇宙
02. 10月のあなた
03. 最後の青
04. むすめ
05. 平凡な毎日
06. きんぎょの夢

第二部/バンドセット
07. ふたりのサンセット
08. はつ恋
09. はなればなれ
10. 太陽の君に
11. 街は薄紅色 ☆
12. 恋の穴 ☆
13. それでもいいならくれてやる ☆
14. 私の葬式(バンド ver.) ☆
15. 黄金の海で逢えたなら ☆
16. 美しいひと
17. もしも僕に
18. 君の住む街
19. 新しい花
(☆はスペシャル・ゲストの齊藤ジョニーが参加)

リリース情報

配信シングル【きんぎょの夢】
2021年8月20日(金)配信リリース
<収録曲>
01. きんぎょの夢

アルバム【新しい花】
2021年3月3日(水)発売
<収録曲>
01. 新しい花 (日本テレビ系『スッキリ』2月エンディングテーマ)
02. はなればなれ
03. 恋の穴
04. ふたりのサンセット
05. あなたがいるから (映画『感謝離 ずっと⼀緒に』主題歌)
06. 逃避行
07. 太陽の君に
08. まるで喜劇
09. 女の子はそうやって
10. 今をください(FODドラマ『アンサング・シンデレラ ANOTHER STORY ~新人薬剤師 相原くるみ~』主題歌)
11. スローモーション
12. 美しいひと
13. 私の葬式 (バンドver.)

ライブ情報

『年末だョ!全員集合2021』
2021年12月26日(日)横浜にぎわい座 芸能ホール
開場16:00 開演17:00

『Johnny’s Room #17 〜10th Anniversary Party〜 第1部 ゲストの巻』
2021年11月13日(土)青山月見ル君想フ
出演:齊藤ジョニー
ゲスト出演:関取 花 / daisuke katayama / 西山小雨 / 平井翔馬
開場18:00 開演 / 配信開始18:30

最新情報

ヴォーカルや機材、ライブに関する最新情報をほぼ毎日更新!