【インタビュー】Daoko、自身初のバンド、QUBITの1st AL『9BIT』を語る。“機械と人間の狭間”で挑んだ楽器的解釈のヴォーカルスタイルとは?

取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)

15歳でニコニコ動画デビューして以来、インディーズ、メジャーを経て、2019年からは自身のレーベルを立ち上げて活動するDaokoは、独自の世界観とスタイルを持つヴォーカリストとして、唯一無二の存在感を放ち続けている。そんなDaokoがヴォーカルを担当するスーパーバンド、QUBITの1stアルバム『9BIT』が、11月22日(水)にリリースされた。

QUBITは、Daoko(vo)、永井聖一(g)、鈴木正人(b)、網守将平(k)、大井一彌(d)の5人組で、ツアーやレコーディングなどを通してDaokoをサポートしてきた強力な面々だ。高い演奏能力と音楽性を備えたミュージシャンのサウンドと、どんなスタイルの楽曲でも歌いこなすDaokoの声によるケミストリーは凄まじく、早くも各所で話題をさらっている。

Vocal Magazine Web初登場となるDaokoに、その独特なスタイルを生み出したルーツや、自身が大好きだという「声」を「楽器の一部」として認識していることなど、さまざまな角度から話を聞くことができた。必見のインタビューとなっている。

自宅で練習してスナックで披露する。これで歌が向上しました。

──Daokoさんは、高校1年生で彗星のごとく登場した印象でしたが、シンガーの面とラッパーとしての面のそれぞれの原点について聞かせてください。

Daoko 15歳からインディーズレーベルのLOW HIGH WHO? PRODUCTIONに所属していたんですけど、その前の一番初めに音楽をやる側になったきっかけが、ニコニコ動画にボーカロイドの楽曲などで「歌ってみた」を上げたことでした。ラップについては「歌ってみた」内での差別化というか、自分なりに“見つけてもらおう”としたこととニコラップというジャンルに興味を持った結果、徐々にラップへ移行していった感じです。

小さい頃から音楽をやっていたという経歴があまりないし、もともと“音楽で食っていくぞ!”というわけもなく、全然違う職業に就こうとしていたんですけど、そのニコニコ動画との出会いがすごく大きかったですね。プロとかアマチュア関係なく、誰もが投稿できるっていうプラットフォームが自分的には新しく、始めやすかった感じはあります。“みんな動画を上げているし、私もやってみたいな”みたいな気持ちで始めましたね。

──まわりと一緒にワイワイやっていて「私もやる!」みたいな感じでした?

Daoko いやいやいや、全然(笑)! 登場人物ひとりっていうか、ひっそりとです(笑)。学校から帰ってきてニコニコ動画を観るのが趣味で、すごい楽しみにして生きていたので……。周りにインターネットをやってる友達が多かったっていうのはあるかもしれないですけど、学校の友達にはもちろん内緒にしてましたし、こっそりやってました。

──そうだったんですね。でも、周りに知られなかったぶん、自由に世界を広げられた面はあるかもしれないですね。

Daoko そうかもしれないですね。結果的にここまで音楽を続けられているっていうことは、良かったなと思います。

──過去のインタビューを読むと、椎名林檎さんの影響が大きかったということですが。

Daoko 歌い方とか音楽の世界観に関しては、畏れ多さプラス全然タイプが違うと思うんですけど。なんだろうなあ……林檎さんは影響というか憧れ的な……今もそうですけど、“林檎さんのことを考えると創作意欲が湧いてくる”みたいな。神的存在です。

──確かに、歌い方で強く影響を受けている雰囲気が感じられなかったので、メンタル的なものというか、もっと違う何かなのでしょうね。

Daoko そうですね。林檎さん然りなんですけど、けっこう世界感の強いアーティスト……平沢進さんとか、女王蜂とか……。そういう唯一無二の、その人にしか出せない世界観を持っている人にすごく惹かれる傾向にありますね。

──ニコニコ動画に配信していた初期の頃は、どんな機材環境で配信していたのですか?

Daoko 初めて投稿したときから1年間くらいは、ずっとMacの内蔵マイクを使ってました。中学生で自分のパソコンも持ってなかったものでしたから、リビングの家族共用パソコンで家族がいないときに内蔵マイクでGarageBandを通して録るっていう。かなりフィジカルな感じで(笑)、今だとあんまりないと思うんですけど。

──では、ほぼ無編集みたいな?

Daoko 一応GarageBandで感覚的にリバーブをかけたりしていたんですけど、かなり生々しかったとは思います(笑)。恥ずかしくてもう残してないんですけどね、当時の音源は。オーディオインターフェースっていうのがあるんだとか、コンデンサーマイクを使ったら音が良くなるんだ、みたいな感じで、ちょっとずつやりながら学んでいきましたね。

──ボイストレーニングについてはいかがですか?

Daoko メジャーレーベルに所属した頃から始めて、17〜18歳くらいからは、同じ先生のところに通わせていただいていますね。

──どのぐらいの頻度で通われていますか?

Daoko 忙しさに比例してしまうところはあるんですけど、理想としては週1で、必要なときは週2日ぐらいで詰めて行ったりします。テレビ収録だとか生歌で歌わないといけない現場の前はコンスタントに通って、声が出るように筋トレ、ストレッチ的な感じで行くようにしている感じですね。

──ボイトレを続けることで、変わったなと思う部分はどこですか?

Daoko 私の場合は(家で)こっそり内蔵マイクに近付いて歌ってたのが、“結果的にウィスパーヴォイスだった”っていう感じだったんです。そのスタイルで始めたっていうのと、もともとそんなに歌が得意なタイプではなくて……。本当に「歌ってみた」を始めるぐらいから歌うことに意識が向いていった感じだったもので、か細いというか、息継ぎが多かったりしていたんです。ボイトレの先生に「息を吸うときに、そんなに大きく音を立てなくても吸えるよ」みたいに音楽的な息の吸い方とかを教えてもらって。“なるほど!”って感じで徐々に変わっていったかなと思いますね。

あと最近は歌い方が変わったなっていうのも感じます。年齢的なもの、精神の太さとけっこう比例してくるなっていうのはあるんですけど、友達の影響でスナックとかカラオケをすごい好きになって……。昨日もスナックへ行ってたんです。スナックっていうものが、けっこう私の中ですごい歌を向上させました(笑)!

──スナックですか! めちゃくちゃ意外です。当然他のお客さんもいる場で歌われるんですよね?

Daoko そうです。人がいると「ちゃんときれいに歌わなきゃ」とか、「ちゃんとうまく歌いたい」とか思うんですよ。あとは「次までにこの曲歌えるようになりたい」みたいな感じで、歌謡曲とか自分の曲ではない曲を、家で練習したりとかしています(笑)。

自分のkeyに合った声質の方、私で言うと松田聖子さんの曲とか歌いやすくて。聖子さんはすごく歌がお上手でいらっしゃるから、そういうところからフロウをマネしてみたり……。あ、歌うときはモノマネではないんですけど、「こういう風に歌ったらきれいに声が出るな」とか、そういうのをひとりで練習して、スナックで披露するみたいな感じですね(笑)。もちろん普通にカラオケも好きなんですけどね、歌詞も見られるし……。スナックもカラオケも、音楽と触れる場所だと思ってます。

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