クボタカイ、初のバンド編成ワンマンで快進撃。“今日は渋谷で一番最高の夜にしましょう！”

2022.03.24

取材・文：鈴木瑞穂（Vocal Magazine Web）　写真：ヤオタケシ

3月22日、ラッパー／シンガーソングライターなど、さまざまな顔を持つ気鋭のアーティスト、クボタカイがSHIBUYA CLUB QUATTROでライブ『シン・クボタ』を開催した。今回は自身初となるバンド編成でのワンマンライブ。既存の曲もスペシャルなバンドアレンジで届けられ、未発表曲もお披露目されるなど、まさにシン・クボタと呼ぶに相応しい革新的なステージとなった。グッドミュージックが渋谷に鳴り響いた一夜をレポートします。

期待と緊張が入り混じったフロアのステージに、まずはバンドメンバーが登場。木下哲（g）、森谷優里（k）、村田シゲ（b）、GOTO（d）の４人が脇を固める。ほどなくして主役のクボタカイが登場し、スタンドマイクの前にそっと立つ。一息のブレスだけで聴く者の心を掴み、「Wakakusa Night.」をアカペラで歌い始める。流れを汲むようにバンドがインすると、クボタは歌うようにラップし、ラップするように歌う。息を含んだ甘い歌声、クボタにしか出せないあの声色とチルな雰囲気で、あっという間に自らの世界へと引き込んでしまうのだった。

“今日は渋谷の中で一番最高の夜にしましょう！”と「Youth love」で一気にフロアの熱を爆上げし、「春に微熱」で再びチルアウトへ誘う。気怠いサウンドはエモさの象徴。スローテンポの上でゆるりと踏む韻と歌声が最高に心地よく、オーディエンスの横揺れはもはや不可抗力だ。《胸が溶ける様な小春日和に　良く似た横顔が消えぬように》という淡いリリックが、春風のように柔らかく耳に刻まれていく。

畳みかけるように「Sunset City」、「博多駅は雨」、「インサイダー」とカラフルな楽曲を巧みに歌いこなす。「博多駅は雨」ではリリックの一部が、今日の雨の渋谷にちなんで《渋谷駅は雨》にアレンジされ届けられたのを、オーディエンスは聴き逃さなかったはずだ。

東京は暴走族を見たから怖いというMCで場を和ませたあと、バンドメンバーの紹介からそのまま「拝啓（Freestyle）」へ。《いつも通りラップがノリノリ　でも歌詞も飛ばすよなドキドキ》、《俺はそうだなこの２時間のために　生まれてきたような覚悟を持ってる》という今夜だけのフリースタイル。カチッとはまる言葉が気持ち良さを添え、ありのままの心情吐露は臨場感を加速させていく。同時に、フリースタイルをルーツに持つラッパーとしての彼の実力をありありと感じさせるのだ。

「ベッドタイムキャンディー2号」でグルーヴを高めたのちに披露されたのは、未発表曲２曲。「ひらめき」で聴こえた息づかいとファルセットは嘆きのような緊張感を纏い、「ピアス」での優しい歌声からは、主人公の温かくも切ない恋心が浮かび上がってくるようだった。クボタの“新曲、いいでしょ？”の投げかけにオーディエンスは盛大な拍手で答える。

今日はクボタの23歳の誕生日。バンドメンバーがバースデーソングを演奏すると、フロアから拍手が贈られ祝福ムードに。“23歳以下の人？”と問うとオーディエンスの大勢が手をあげたように思う。若い。クボタの音楽とメッセージは、新しい世代へも着々と受け継がれている。

10代の頃に作ったという「TWICE」で硬い韻を踏んで、「MIDNIGHT DANCING」で激しくフロアをバウンスさせる。さらには撮影OKという新曲「ナイトイーター」。中毒性のあるサウンド、“やっちゃうか？”というクボタの煽りも相まってオーディエンスもノリノリだ。「ナイトイーター」は3月23日から配信スタートとなっているのでぜひチェックしていただきたい。

「エックスフレンド」で再びチルなムードへ引き込むと、未発表のバラード「ノンレム」を繊細に歌い上げ、しっとりとした空気が漂う。

“自分の好きな自分になるために、音楽をしているっていうのが自分の中では正しくて。僕もみんなと同じように悩んで……クボタのリスナーならみんな裏アカ持ってるでしょ？（笑）それにつぶやくみたいに僕も歌詞を書いて、そしたらみんなが聴いてくれて。だから、自分の好きな自分になるためには、やっぱりファンのみんなが必要不可欠なんです”。

そう語り歌うのは“この曲が一番想いが伝わると思う”と言う「MENOU」。リフレインする《瑪瑙》がいつまでも儚い余韻を残しながら、「僕が死んでしまっても」へと連れていく。自らギターを構え、鬼気迫るヴォーカルで歌詞を真っ直ぐに貫いて、本編のラストを強烈に彩る。

アンコールでは、「アフターパーティ」をひとり弾き語りで披露。“次の曲で最後だからいきたくないんだよね（笑）”と名残惜しさを滲ませつつも、“みんなの生活に僕の音楽が溶け込みますように”との願いを添え、バンド編成で贈る「せいかつ」。それぞれが奏でる温かい音色の上で、クボタは優しく、語りかけるように歌うのだった。

セットリスト

クボタカイ OnemanLive『シン・クボタ』2022年３月22日 SHIBUYA CLUB QUATTRO
01. Wakakusa Night.
02. Youth love
03. 春に微熱
04. Sunset City
05. 博多駅は雨
06. インサイダー
07. 拝啓 (Freestyle)
08. ベッドタイムキャンディー2号
09. ひらめき（※未発表新曲）
10. ピアス　（※未発表新曲）
11. TWICE
12. MIDNIGHT DANCING
13. ナイトイーター　
14. エックスフレンド
15. ノンレム　（※未発表新曲）
16. MENOU
17. 僕が死んでしまっても
＜アンコール＞
En1. アフターパーティー
En2. せいかつ