バンド・ヴォーカリストのためのアーティキュレーション大作戦!【集中連載】『ロック・ヴォーカリスト“THE BIBLE”』Vol.4

文:本山nackeyナオト(SMDボーカル教室)

ヴォーカリストのための滑舌トレーニング

 みんなはスタジオと同じくらいの声量で、自宅で発声練習ができるかな?
 実は「個人練習の場所がない」というヴォーカリストはとても多い。声を出すことは最も大切だけど自宅だとなかなか大きな声が出せないよね。

 今回の連載では無声、もしくは小さな声でOKなものもあるし、スタジオに入った際に発声を楽しむものも両方用意した。今すぐ実践してみよう。
 また、表情筋や舌筋のトレーニングは、高音域がラク~に発声できるようになること……のみならず、さまざまな効能がある。

◆小顔効果

 表情筋や舌筋は顔を引き締める効果があり、その筋トレの影響は顔も小さくするのだ。顔のエラ張りの原因として、下顎角(かがくかく)と呼ばれる下顎が小さかったり、外側に広がっていたりすることが挙げられる。
 また咬筋も関係してくる。咬筋とは耳の下から頬にかけて広がっている筋肉で、「咀嚼筋」と呼ばれる筋肉群に含まれており、自分の意思で動かすことができる。表情筋や舌筋のトレーニングは、このストレッチ効果が認められている。

◆若返り効果

 老けた顔ってどんな顔かな?
 しわとか、たるみだよね。ほうれい線に代表される、しわやたるみの原因は、主に加齢による肌のハリ・弾力の低下や、表情筋の衰えによって起こる。
 そのため表情筋を正しく鍛えることができれば、肌が引き上がってハリがアップし、シワやたるみの改善が期待できるとされている。歌手のみならず、アナウンサーや女優さんは実年齢よりみ~んな若く見えるよね!

◆落ち込み予防・うつ病予防

 ポルトガル・リスボン大学の研究者らは、うつ病もしくは抑うつ状態と表情筋の関係を調べた。(歌うことで)抑うつ症状を軽減させることがわかったそうだ。
 つまり、今回のトレーニングで表情筋力アップを図ることで、精神的な落ち込みを防ぐ可能性があるし、うつ症状に悩まされている人や、やる気や元気が出ない人も、気持ちが上向きになるわけだ。

さあ、一緒にトレーニングしていこう!

 先にも少し触れたが、滑舌を良くしたり舌筋を鍛えることはハイトーンの発声に効果がある。高音域で思うように発音できない原因はいくつか考えられるが、声帯の使い方が誤っているかもしれないし、舌や顔周りの筋力トレーニングが足りないのかもしれないよね。
 また、高音を出そうとして緊張している可能性もあるだろう。まずはリラックスできる環境を整え、適度に脱力した状態を意識しよう。
 余分な力が入っていると声帯をコントロールする筋肉が硬くなり、舌の動きもぎこちなくなるよね。結果、声が出しづらくなるため、身体全体をリラックスさせることは何よりも大切なんだ。

 まずは下記動画で(最初だけでいいので)リラックス&コンセントレーションを高めてほしい。

簡単にできる!ボイトレ前のウォーミングアップ

簡単にできる!ボイトレ前のウォーミングアップ【ボイトレナッキー】ナッキーベース#004

 ハイトーン発声や滑舌には、舌の筋肉だけが重要だと考えていないかな? 実は口周りの筋肉や表情筋も滑舌に大きく影響するのだ。
 正しい発声には言葉に適した口の形が必要なので、口周りがうまくコントロールできていないと、いくら舌を動かしても思う声にはならない。

 また、舌筋と表情筋は密接に関係する。必ず覚えていてほしいのは「負荷をかける」、「ほぐす」をセットでトレーニングすること。これは通常の筋トレでも、ボイトレでもまったく同じ。トレーニングと言われているものすべてにおいて、この考え方をシェアしてほしい。

 まずは前回の復習でもあり、ウオーミングアップに最適でヴォーカル滑舌(アーティキュレーション)のトレーニングには欠かせない、リップロールとタングトリルをもう一度見直してほしい。

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