取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)
その歌詞の中に感情を落とし込めることができるか
──「もう恋なんてしない」では、低音域を活かして少しぶっきらぼうに歌ってる感じがカッコよかったです。ハンドクラップを含めたゴスペル的な解釈に向かっていて意外なアレンジに感じました。
仲宗根 聴いた方にはよく「これにゴスペル入れるんだ!?」って言われるんだけど、自分の中では逆に「えっ!?」って感じで、ずっと自然にゴスペルが鳴っていました。それで、この曲に限らず、カバーアルバムのすべての声は私だけでやってるんですよ。ゴスペルもめちゃくちゃ大変で、3音を3人ずつくらいやるから、もう何を歌ってるか訳わからなくなってくる(笑)。プラスそこにソロのフェイクみたいなのを入れてるから、もう10人ぐらいいて。でも本当に私は槇原敬之さんを敬愛してるので、すごい尊敬してる槇原さんの曲には、私の大好きなゴスペルを全力で出したいと思って。それで表わしたのが今回の「もう恋なんてしない」ですね。
──「あなたに」も沖縄のバンド、MONGOL800の楽曲で、ここでも島唄的な歌い方を活かしています。島唄ではヨナ抜きのスケールが有名ですが、この曲を聴いて声の強弱が特徴的なんだなと感じます。
仲宗根 う〜ん、そこまで意識してないっていうか……ぶっちゃけ、感覚ですよね。この歌はとりあえずJポップではないなと思ってはいるけど、別に沖縄民謡で歌ってやろうっていうのはなくて。やっぱり沖縄の人が歌ってるアルバムなので、1〜2曲は沖縄っぽくしたいなと思っている中で、じゃあ「あなたに」はそういう風にしましょうと。でも島唄っぽく歌うかどうかまでは最後まで悩んだんです。「ちょっと決めかねてるから、流れた感じでそのまま歌ってみるわ」と歌ったら、あの独特な感じで、かりゆし58の「恋人よ」とは、またちょっと違ったニュアンスで歌えたのかなとは思いますね。
──そして「TRAIN-TRAIN」ですね。僕はアレンジがどこか大陸的というか、少なくとも日本じゃないなって印象を持ちました。北米なのか、ヨーロッパなのか、とにかく空の広い感じ。
仲宗根 あ〜、良かった。
──大陸的ではあるんだけど、歌の解像度としては原曲にすごく寄り添っているような雰囲気を感じるんですよ。甲本ヒロトさんの歌い方に引っ張られることなく、曲を素直に受け継いだというか。
仲宗根 嬉しいですね。本当にこの歌もすごい悩んで、一回アレンジしてもらったんだけど「やっぱ違う」ってなって。そのときに『ライオン・キング』が出てきたんですよ。「サークル・オブ・ライフ」の最初の掛け声のところ。歌詞の内容も自由を叫んだり、トランスジェンダーとかLGBTとかあるじゃないですか。そのことも歌詞の中で書かれている。「人生って何なんだろう?」とか、いろいろ自分の中で考えたときに、その『ライオン・キング』に出てくる、大草原でライオンが「最後は勝つんだ」じゃないけど、自由を求めてやってるイメージがすごい出てきて。「こういう風にやってほしい」とお願いして、あんな感じになりましたね(笑)。
──9曲目は「ラブ・ストーリーは突然に」です。小田和正さんのkeyって女性keyに近いので、逆に女性が特色を出してカバーするのが難しいのかも?と思いました。
仲宗根 たしかに原曲のkeyでは、ちょっと歌いづらかったですね。「歌えるんだけど、なんでこんなに歌いづらいんだろう?」みたいな、不思議な感じなんですけどね、小田さんの場合って。アレンジは悩んだけど、逆に小田さんよりkeyを下げて歌いました。私は低音も全然いけるので。私が低く下げて、ストリングスとかで重厚感を持たせています。小田さんとはまた違った感じの「ラブ・ストーリーは突然に」になればいいなと思って歌いましたね。
──アルバムのラストはスターダスト・レビューの「木蘭の涙」です。こちらは三線も入れていますが、島唄テイストを前面に出しているわけでなく隠し味として使っています。仲宗根さんの歌い方がすごく丁寧で、原曲のメロディの美しさを活かすアレンジですよね。
仲宗根 この曲を歌うときに、ちょうど私のおばあちゃんが亡くなってしまったんです。私はおばあちゃんと一緒に暮らしてきたので「おばあちゃん愛」がめちゃくちゃ強かったんですよね。だから本当に「おばあちゃんにさえ届けばいい」と思いながら「木蘭の涙」を歌わせてもらいました。そうしたらみんなが「これ絶対にアルバムの最後がいい」って言ってくれて。私も曲を並べていて「木蘭の涙」を最後にしたときに、「すべてがきれいに収まった」ではないけれど、「あ、いいかも」と。それで最後に持っていきましたね。
──初回限定盤には、清水翔太さんの「アイシテル」がボーナストラックで収められています。こちらはどんなアレンジになっていますか?
仲宗根 本当に原曲が良いので。彼はR&Bっぽい感じで歌うし、私もR&Bが好きなんで同じような感じになっちゃう。なのでピアノと声のみの本当にシンプルなアレンジにしました。
──カバー曲をレコーディングして、いち視聴者としてどんな化学反応が起きたなと感じましたか?
仲宗根 私は一生懸命やってるほうだから、聴く側じゃないとわかんないですね。自分では精一杯やったと思ってるし、これでいいと思って「めちゃくちゃいい化学反応が起こったんじゃないか?」と思っているけど、私は実際に仕上がっていく様子を知ってるから。知らない人がパッと聴いたときの感想をむしろ聞かせてください、みたいな感じかな(笑)。
──カバー曲をまとめて聴けるライブとか、期待してしまいます。
仲宗根 みんなにも「やってくれ、やってくれ」と言われるんですけど、私はずっとHYの中でしか歌ったことがなくて。なおかつ男性3人に守られながら歌っているイメージがあるんです。さっきも言いましたけど、本当に陽の光を浴びるタイプの人間ではないんですよ。「嘘でしょ!?」って言われるんですけど、本当に恥ずかしがり屋だし、照れ屋で「いやいや、私なんて」って感じの人間なんで。もっと自信がついたら歌おうかなという感じなんですが、でもアルバムが出るからそうも言っていられないので、トークショー(※)をやります。いろんな企画も入ってますし、もちろんアルバムを聴いてきたら、より楽しいんですけど。でもトークショーだけだとさすがにアレなんで、数曲だけ選んで歌いたいなと思っています。
※編注:トークショーはすべて終了しております。
──Vocal Magazine Webの読者には、歌が好きで歌で生きていきたいと考えている人も多くいます。そういう方々へ向けてメッセージをいただけますか?
仲宗根 技術的なことも大事だとは思うんだけど、それよりも、その歌詞の中に感情を落とし込めることができるか。それが「歌がうまい」ってことなのかなと思ったりもするんです。普通に歌ってて、目の前の人に何も届かなかったら意味がない。目の前の人に歌って、その人が「うわ〜、すごいな。明日から自分の人生が変わるわ」っていうぐらいに思ってくれるような歌を、歌い続けたいなって私もずっと思うので。皆さんも「上手に歌おう」ではなくて、歌うときに「その歌詞に合った人は誰かな?」って想像しながら歌ってみたら、自然と歌がうまくなっているし、より歌が楽しく歌えている自分がいると思うので、そういう風にしていってほしいですね。
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<締切:2023年12月25日(月)23:59まで>
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リリース情報
Cover Album『灯 -10 Cover Songs-』仲宗根 泉
2023年11月22日(水)リリース
配信リンク:https://izuminakasone.lnk.to/Tomoshibi
■初回限定盤 <SHM-CD>
UPCH-7653/3,850円 (税込)
・紙ジャケ仕様
・手書きライナーノーツ付き歌詞ブックレット封入
・ボーナストラック1曲「アイシテル」(清水翔太)収録 全11曲
・オンラインMeet Greet応募抽選シリアルコード(※応募終了)
・ SHM-CD仕様
■通常盤<CD>
UPCH-2262/3,080円(税込)
全10曲収録
<収録曲> (オリジナル歌唱アーティスト)
01. Lifetime Respect feat. DOZAN11(三木道三)
02. I LOVE YOU(尾崎豊)
03. バンザイ〜好きでよかった〜(ウルフルズ)
04. 恋人よ(かりゆし58)
05. TRUE LOVE(藤井フミヤ)
06. もう恋なんてしない(槇原敬之)
07. あなたに(MONGOL800)
08. TRAIN-TRAIN(THE BLUE HEARTS)
09. ラブ・ストーリーは突然に(小田和正)
10. 木蘭の涙(STARDUST REVUE)
※初回生産限定盤ボーナストラック
11. アイシテル(清水翔太)
■CDショップ購入特典
https://hy-road.net/contents/662845
フェス情報
『HY SKY Fes 2024』
特設サイト:https://skyfes.net/
●開催日程
2024年
3月22日(金)前夜祭
3月23日(土)DAY1
3月24日(日)DAY 2
5月19日(日)後夜祭(会場:沖縄・琉球新報ホール)
[DAY1・DAY2]10:00開場/12:00開演/20:00終演(予定)
[前夜祭]16:00開場/18:00開演(予定)/キャンプ利用者のみ12:00開場
※前夜祭入場券のみお持ちの方は16:00まで入場できません。
●会場
沖縄県総合運動公園 多目的広場
〒904-2173 沖縄県沖縄市比屋根5丁目3-1
●出演
DAY1:HY、加藤ミリア、水曜日のカンパネラ、スガ シカオ with FUYU、DISH//、槇原敬之、MONGOL800、MASA MAGIC、冨岡愛
DAY2:HY、Awich、川崎鷹也、氣志團、肝高の阿麻和利、ちゃんみな、MONKEY MAJIK、MASA MAGIC、名無し之太郎