取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)
メロディがしゃべるんですよ。ってちょっと頭おかしい人みたいですけど(笑)
──作詞についてもお聞きしたいのですが、「グッバイ蕎⻨ (中村正人より)」は《グッバイラブ》を歌いつつも、《ニハか十割で悪いのはキミだけ》など“お蕎麦”に関連したワードが散りばめられ、遊び心も溢れる1曲です。大塚さんが作詞される前に、中村正人さんのメロディが先にできあがっていたのでしょうか?
大塚 そうですね。
──最初に浮かんだのはどんな言葉でしたか?
大塚 ひたすらずっとメロディを聴きながら……メロディがしゃべるんですよ。ってちょっと頭おかしい人みたいですけど(笑)。メロディが言葉を連れてくるので、それが聴こえてくるまでエンドレスで聴くだけなんですよね。それで聴こえてきたのがこれだったんで、それを書いて。
──サビから浮かびましたか? それともAメロから順に?
大塚 まずはサビを書けばそこから広がるというか。あとは昭和歌謡の面白さを入れたいなと思っていたので、そこはこだわったかなという感じです。
──お蕎麦の関連ワードとかけるところは、メロディを聴くタイミングで浮かんでいたのですか?
大塚 蕎麦ネタは以前からあって「いつか蕎麦やりたい!」と思っていたんですよ。ようやくやれました(笑)。
──マイクは今回どんなふうに選びましたか?
大塚 基本的には自分で持ってるイーラム(TELEFUNKEN/ELA M251)をメインに、水野くんの楽曲だけ800G(SONY/C-800G/9X)を使っていました。それ以外も、もしかしたら違うのを使ったか……ちょっと記憶がないな。でも基本イーラムですね。
──いつもレコーディングではそのマイクを使っているのですか?
大塚 最近はそうですね。「なんか違うんじゃないか」っていう歌以外は全部イーラムを使っています。
──イーラムのどんなところが好きですか?
大塚 私の声がちょっと抜けが悪いので、そこを引っ張りつつミディアムの部分をすごく膨らませてくれるんです。声を立体的にするところを出してくれながらも、品が良いんですよね。表現が難しいですけど。
──何年も使われているんですか?
大塚 そうですね。5枚目のアルバム(『LOVE LETTER』)ぐらいから使い出しました。初期は800Gを多用していたり、あとブルーや、149(NEUMANN/M149)だったりもしました。何個か試しながら「あ、イーラム良いな。欲しいな」って思って。
──「東京スパイラル(水野良樹より)」で800Gを使ったのはどうしてだったんですか?
大塚 私がこの曲のヴォーカルの色をすごく悩んでいてどういう声が良いのかなって考えたときに、声にちょっと湿気が多いので、その湿気を打ち消したほうがいいんじゃないかということで、イーラムよりもちょっとキラッとする成分の多い800Gを使おうとエンジニアさんと相談しながら決めましたね。
──今作を聴かせていただく中で、語尾にきれいな細かいビブラートをかけるアプローチが耳に残りました。昔よりビブラートをかけるようになったとか、変化を感じる部分はありますか?
大塚 ビブラートに変化はあんまり感じていなくて、曲によってもビブラートが邪魔なときがあるのであえてしないようにしたり、ビブラートが似合う曲は使う感じです。全部にはかけないようにしていて、部分的にも「ここはうるさいな」と感じたらかけないですし。
──確かに「FREEKY (蔦谷好位置より)」のサビはパーンと真っ直ぐ伸びる歌唱です。一方で「マイナーなキス (川谷絵音より)」は語尾のビブラートが印象的ですが、かけたほうが楽曲にマッチする感覚でしたか?
大塚 「マイナーなキス (川谷絵音より)」のちょっとファンキーな部分にはすごくビブラートが合うなと思って、たぶんそのまんまにしてるんですよね。「FREEKY (蔦谷好位置より)」は少しダンスチューンだったりするので、あんまりくどくすると個人的にはちょっと鬱陶しいなと思う気持ちがあったり。
──なるほど。「FREEKY (蔦谷好位置より)」のヴォーカル表現を考える際は、ヴォーカルディレクションをされた蔦谷さんの意見もありましたか?
大塚 ヴォーカル表現は仮歌の時点でいったん自分で考えたコーラスを全部入れていて。それで、「ここのコーラスが変な気がするんですけど」というところに関しては、蔦谷さんに「じゃあこのラインに変えてみようか」と言っていただいたり、それ以外の気に入っていただいた部分はそのまま採用しているという感じです。
──レコーディング時のヴォーカルディレクションもわりと自由な感じだったのでしょうか?
大塚 蔦谷さんはホントそんな感じでしたね。ずっと「良いんじゃない!」って言ってくださって、こっちが心配になって「本当のこと言ってください」って言うぐらいでした(笑)。
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