大塚 愛

【インタビュー】大塚 愛、声色を七変化させた新作『marble』から紐解く、ヴォーカルに向き合った20年の曲折

2023.09.9

取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)

今年9月にデビュー20周年を迎える大塚 愛が、豪華アーティスト・プロデューサーたちとのオリジナル“コラボ”アルバム『marble』を2023年9月9日(土)にリリースする。

今作には大沢伸一(MONDO GROSSO / RHYME SO)、川谷絵音、蔦谷好位置、中村正人 (DREAMS COME TRUE)、⻑屋晴子(緑⻩色社会)、水野良樹 (いきものがかり)、ミト (クラムボン)が参加。今まで自作詞作曲を続けてきた大塚 愛が、時代を牽引するアーティスト・プロデューサーの提供曲を歌う、自身初の“ヴォーカリスト・大塚 愛”の作品が誕生した。

Vocal Magazine Webでは、この記念すべきタイミングに大塚 愛へ初のインタビューを実施。新たな表現を開拓した今作の話はもちろん、「さくらんぼ」、「プラネタリウム」など多彩な声色を届けてきた大塚の“ヴォーカル論”のようなものを聞いてみた。そこで、声に向き合ううえでの大きなヒントを教えてくれた。

新しい感じもあり、どこか自分にしっくり落ちるような不思議なアルバム

──今作にはアッパーチューンからアダルトなナンバーまで、幅広い楽曲と多彩なヴォーカル表現が収められています。改めて大塚さんにとってどんな1枚になりましたか?

大塚 愛 すごく新しい風が吹くのかなと思って、でも、新しい感じがあるんですけど、どこか自分にしっくり落ちるような不思議なアルバムだなと思いました。(コラボした方の中で)自分で歌を歌われている方と、制作に重きを置いて歌わない方とでも違うと思うんですけど、自分で歌われている方の曲は本当にその方が歌ってる感じが聴こえてくるんです。でもあたかも私の曲みたいにしっくりきているのが不思議で、面白いところだなと。

──これまでご自身で行なってきた楽曲制作を、自分だけで作らないことへのチャレンジもあったと思います。20周年を迎えるタイミングというのもきっかけのひとつだったのでしょうか?

大塚 20周年はあんまり関係なくて、9枚目のアルバム(『LOVE POP』)を出し終わったことが大きかったですね。自分の中でひと区切りついた感覚があって、ちょっと1回自由なことができる期間だなと思って。

──アーティスト/プロデューサー陣へのお声かけはどういうふうに決めたのですか?

大塚 よく「好きなアーティストさん誰でした?」という質問をされるんですけど、挙げきれないというか、全員になっちゃうぐらいどのアーティストさんのことも「すごいな」と思ってきたので、(今作も)とにかく自分がすごいなって思う人たちなんです。

スタッフとも相談しながら「この人だったらやってくれるかな……?」「この人はきっと厳しいだろうな……?」と思いながら声をかけせていただいたのですが、こんなにすごい方たちが参加してくれることになったんです。

──バラエティに富んだ楽曲が揃っていますが、各曲の方向性は大塚さんから「こうしたい」とオーダーしましたか?

大塚 そうですね、全部ではないんですけど「どんな楽曲が良い?」と聞いてくれた方には、「これが良いかな」と返答しました。えのぴょん(川谷絵音)だったり、水野くんだったり、蔦谷さんの曲だったり。それ以外の曲はもうご本人にお任せという感じで。

──ヴォーカルや声色表現も一緒に考えていったのでしょうか?

大塚 楽曲が来たら仮歌を入れる時点でヴォーカルの装飾的なものは全部やってお返ししてるので、そこはあんまり一緒にやってないんです。

──では、ご自身でヴォーカル表現をプロデュースされている感じなのですね。

大塚 基本的にプロデューサーはいないので、全部自分で判断してやっていますね。

──ヴォーカルレコーディングに時間がかかったなど、いつもと違う点はありましたか?

大塚 ヴォーカルディレクションをやりたいと言ってくださったマサさん(中村正人)、蔦谷さん、水野くんの曲は、実際に(曲を)作った方がディレクションをすることになったんです。私がけっこう緊張するタイプなので、やっぱり緊張なのかちょっと普通じゃない感じがありました。一番良いのは自分ひとりで歌う仮歌だと思ってるぐらいです(笑)。

──特に歌唱がチャレンジングだった曲はありますか?

大塚 水野くんの曲(「東京スパイラル(水野良樹より)」)は、声の色をどこに置こうかなとずいぶん悩みました。それ以外の曲は、自分の声をどう使ったら着地できるかというのはけっこう見えていて。あと、蔦谷さんの曲(「FREEKY(蔦谷好位置より)」)もどういう性格にしようかなとちょっと迷いましたね。

──同い年の水野良樹さんとは「ふたたび(with 大塚 愛)」でもご一緒されていて、そのときの対談トークで「ここはこうだよねと感じるポイントにシンパシーを感じる」というコメントもありました。今回の「東京スパイラル(水野良樹より)」でもそう感じた瞬間はありましたか?

大塚 私が上げた歌詞に対して、水野くんが「ここはこう思ったよ」という修正ポイントを全部入れて返してきてくれたんです。そんな人今までいなくて、良い意味ですごい細かい人だなって思いました(笑)。でも、自分はもともと瞬発力はあって歌詞を書くのにそんなに時間はかからないんですけど、やっぱり雑なところがあって。なので「ここの言葉の語尾はこっちのほうがいいんじゃない?」って水野くんが言ってくれたときに、「ああ、確かにそうだね」って素直に納得したんですよね。「あ、こういう人がいると楽だな」とも思ったり(笑)。

──歌詞のリライトは何ラリーも?

大塚 いや、「あ、そうだな」と思ったところは素直に修正して、譲れないところは「私はこの言葉は大事だと思ってるから変えたくない」って言って戻しましたね。

──サビには水野さんのコーラスが入っていて、《銀座の街が似合うようになった》と歌うジャジーで大人な本作の雰囲気をグッと引き上げています。一緒に歌うアイデアはどんなふうに生まれたのですか?

大塚 なんか水野くん、私とやるときに歌いたがるんです。ってそんな言い方したら「語弊があるよ!」って怒られそうですけど(笑)。経緯は細かく覚えてないんですけど、入れることになって、「じゃあ歌おうよ! 良いじゃん!」って言うと、急に「邪魔しないほうが……」とか言って。最後のレコーディングでも「ホントに俺、歌うの? 歌っていいの?」って言いながらブースに入って、ブースの中でも「ホントにいいの?!」みたいなことをずっと言っていましたね(笑)。

──楽しそうなやり取りが浮かんできます(笑)。「ふたたび」も「東京スパイラル」でも、おふたりの声の混ざり合いがすごく合っていて。

大塚 そうですね、声の相性はすごく良いと思います。

──逆にツルッとヴォーカル録りができた曲はありますか?

大塚 「マイナーなキス (川谷絵音より)」や「マゼンタ (ミトより)」ですかね。

──ミトさん作詞作曲の「マゼンタ (ミトより)」では、カントリー調のサウンドにぴったりな軽やかでかわいらしい歌唱が印象的です。

大塚 もう曲の個性がすごくハッキリしていたので、特に悩むことなく「この声でいけるな」と、曲を聴いたときから見えていた感じでしたね。

──「マイナーなキス (川谷絵音より)」は曲の展開に合わせて歌い回しも激しく変わっていきますが、レコーディング前に歌い回しは決め込んでいたのでしょうか?

大塚 決め込んだというか、もう「この声だよね」というのが考える余地なくあったんです。えのぴょんの曲はどのパーツもハッキリしてますもんね。「ここはこうなんだ」っていうのがちゃんとしっかり決まっていて、転換してくれているので。

>>次ページは「メロディがしゃべるんですよ。ってちょっと頭おかしい人みたいですけど(笑)」

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