取材・文:森朋之
撮影:西槇太一
構成:田代智衣里(Vocal Magazine Web)
歌の中でもっと遊んでもいいし、表現的にも幅を広げたい
──山本さんにとってのヴォーカリストとしての理想像は?
山本 そうですね……。何を歌っても自分のものにできるし、どんなジャンルの歌も歌えるヴォーカリストになりたいと思っています。個人的にはR&Bやソウルミュージックをカッコよく歌えるシンガーに憧れるんですけど、自分が歌うのは違うのかなとか。そこは諦めず、いろんな楽曲に挑戦したいなと。あとは以前、“歌が優等生だね”って言われたことがあって。自分的にはその言葉を“悪くはないけど、面白味がない”と受け取ったんですよね。歌の中でもっと遊んでもいいし、表現的にも幅を広げたいという気持ちもあります。
──歌に対して真面目なのはすごくいいことだと思いますけどね。ちなみにライブでもピッチやリズムは気になります?
山本 めっちゃ気になります。気にしすぎるのもよくないなって思うけど、曲によってはピッチやリズムが大事な場合もあるし、細かいところは気にせず、遊んじゃったほうがいいときもあって。使い分けですよね。
──6曲目「yonder」のアレンジは、SIRUPさんやiriさんなどの楽曲を手がけるMori Zentaroさん。ネオR&B、エレクトロの要素を取り入れたナンバーですが、歌ってみてどうでした?
山本 リラックスして歌えましたね。力を抜いて身を任せるというか。歌詞の内容もそういう歌い方が合うのかな、と。歌詞もMori Zentaroさんと一緒に書かせてもらったんです。お互いに書いたものを持ち寄ったんですが、結果的に1番がMoriさんで、2番が私になって。
──歌詞のコライトというか。
山本 そうですね。曲を書くときは孤独というか、自分との闘いみたいなところもあるんですよ。コライトは全然そうじゃないし、楽しみながら制作できるなんて、そんなに幸せなことはないので。自分以外の人のアイデアを曲に落とし込めたり、プラスしかないなって。吸収できることもたくさんあるので、どんどんやっていきたいです。
──「あいまって。」は作詞・作曲ともにyonkeyさんとの共作ですね。注目の若手アーティストですが、どんなふうに制作されたんですか?
山本 まさにコライトですね。その場で話しながら「こういうテーマで、こういうストーリーで」というのを決めて。そこから曲のプロットを作って、メロディや歌詞を一緒に考えていきました。yonkeyさんは20代半ばなんですけど、すべてがイマドキの人って感じでした。若干のジェネギャを感じつつ(笑)、すごく面白かったですね。とにかく音楽が大好きで、“普段から楽しくやってるんだろうな”と思って。現場の雰囲気もすごく良くて、音楽って楽しいものなんだなって思い出させてもらいました。ヴォーカルのディレクションもyonkeyさんがやってくださって、丁寧に細かく指示してもらって。普段はわりと自分主導なところがあるので、新鮮でしたね。新たな自分を引き出してもらったというか。
──どんなディレクションがあったんですか?
山本 「今までの自分を消して歌ってみてください」みたいな感じだったんですよ。自分ではそんなつもりはなかったんですけど、「ちょっと“コブシ”が入ってるから、全部なくして、ビブラートもなしで」とか。無機質というか、自我を消すような感じでしたね。最初はちょっと恥ずかしさもあったんですけど(笑)、普段の自分とは全然違う歌い方ができたし、聴いてくれた方から“これはこれでいいね”って言ってもらえることもけっこう多いんですよ。
──普段、ビブラートは自然に入っちゃうんですか?
山本 癖に近いかもしれないです、私は。意識しないでやってるので、(ビブラートを)入れないほうが難しいんですよね。