取材・文:森朋之
撮影:西槇太一
構成:田代智衣里(Vocal Magazine Web)
シンガーソングライターの山本彩から、4thアルバム『&』が届けられた。
前作『α』以降にリリースされた「ゼロ ユニバース」、「ドラマチックに乾杯」の収録曲、デジタルシングル「yonder」、「Don’t hold me back」、「あいまって。」、さらに新曲「Bring it on」、「劣等感」など12曲を収録。
人の多面性、多様性を認めることの大切さを『&』というワードで表わした本作は、彼女のさまざまな感情をダイレクトに体感できる作品と言えるだろう。音楽的な振り幅、ヴォーカル表現においても広がりを感じさせる本作について、彼女自身の言葉で語ってもらった。
自分のいいところも悪いところも出せた作品
──前作『α』(2019年12月リリース)以降、コロナの影響でライブができない時期が続きました。ステージで歌うことに対するスタンスにも変化があったのでは?
山本 コロナ禍を経て、“今”どう感じているか?ということですよね? 私も実際にツアーが中止になってしまったし、私自身もお休みしたことで、ライブができない状況が続いてたんです。お休みしている間はライブのことを考える余裕はなかったんですけど、しっかり充電できたぶん、「ライブをやりたい!」という気持ちがすごく強かったですね。
──昨年12月には『SAYAKA YAMAMOTO LIVE 2022 “now” at EX THEATER ROPPONGI』を開催。約1年ぶりのライブだったわけですが、ライブに向けてどんな準備をしていましたか?
山本 復帰を発表したのが2022年の6月で、7月、8月くらいから活動を再開したんですけど、そこからライブに向けてトレーニングも始めました。声を戻すというのかな。コロナ禍もそうだったんですけど、お休みしている時期も“今日は誰とも話さなかったな”という1日もあって。まずは「声を使わないと」みたいな感じでしたね。
──ライブの手ごたえはどうでした?
山本 ブランクとは言えないかもしれないけど、久しぶりのライブだったし、ちょっと怖さもありました。でも、それ以上に「ライブができる!」という楽しみと喜びがあったし、むしろそっちのほうが強かったです。本番前も今まで感じたことがないような高揚感があったし、すごく吹っ切れていて。不安や心配も解消されて、晴れ晴れとしたライブでしたね。
──当たり前ですけど、精神状態やテンションは歌に影響しますよね。
山本 めっちゃ影響しますね。特に私は気持ちに左右されやすいところがあって。少しずつコントロールの仕方もわかってきましたけど、やっぱりナマモノなので(笑)。
──アルバム『&』のヴォーカルからも、山本さん自身の感情がダイレクトに伝わってきました。
山本 ありがとうございます。自分のいいところも悪いところも出せた作品になった気がしますね。悪いというか、嫌いなところかな。何も隠さず表現できたんじゃないかなと。
──自分自身をリアルに表現するのは、勇気が必要じゃないですか?
山本 でも、書かないと自分がしんどいままなので。聴いてくれる方も、私とまったく同じじゃないとしても、近い感情みたいなものは多くの人が抱えているんじゃないかなと思っていて。そういう人たちに“この曲があってよかった”みたいに感じてもらえたらいいなという気持ちもあります。
──アルバムタイトル『&』については?
山本 今回のアルバムに新曲が2曲(「劣等感」、「Bring it on」)入っていて、対照的な楽曲になってるんです。まったく違う気持ちを歌っているんだけど、どちらも自分自身だなって感じていて。このアルバムもそうだし、自分という人間もそうなんですけど、ひとつの要素だけじゃなくて、いろんな要素があって、いろんな側面があるんですよね。それをしっかり表わせたアルバムかなと思っています。“あれもこれも”という意味で『&』というタイトルにしました。
──実際、喜怒哀楽がビビッドに出てますからね。歌詞を書くときは“今の気持ちをしっかり表現しよう”という意識をしている?
山本 そうですね。ざっくり「こういうことを書きたい」というところから始まって。途中で「やっぱり違うかな」と思って内容を変えることもあるんですけど、基本的には“そのまま”書こうと思ってます。