取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)
ライブ写真撮影:AYAMI KAWASHIMA
「YOU」はファンモンの中で一番歌うのは難しい曲かもしれない ── ファンキー加藤
──そして、最新デジタルシングルの「YOU」です。こちらはAメロからずいぶんと低い音域で歌っていますね。
ファンキー加藤 低いし、(サビは)高いし(笑)。なかなか歌うのは大変。
モン吉 うん、大変だったね。
ファンキー加藤 もしかしたらファンモンの中で一番歌うのは難しい曲かもしれないですね。
──歌詞に「な行」の言葉を多く使っている気がしたんです。
ファンキー加藤 ホントですか?
──例えばサビではフレーズで《涙》、《流す》、《泣いても》、《逃げたく》などです。「な行」って歌うとき少し鼻にかかるじゃないですか。だからエッジが取れて少し柔らかで優しい感じになるんじゃないかと。
ファンキー加藤 あ〜、なるほど。これは川村(結花)さんが共作してくれたんですけど、仮歌も普通に「ラララ」でしたね。でも、言われてみればそういう子音の響き方で曲の印象って変わりますね。逆にソロのとき、意図的に濁音をつけて強くしたことはあったんです。全部「が行」で行くとか。「が」とか「ざ」ばっかり言ってる曲があって。でも「な行」は考えてなかったなあ。でも、本当にそういう風に響いてくれてるんだったら、すごくいいなと思いますね。この曲は、“とにかく優しい歌でありたい”っていう風に思いながら歌っているので。
──ここまではファンの方もすでに聴いている曲です。さて、アルバムということで、これらの曲に加えて、どんな要素を盛り込むということを考えましたか?
ファンキー加藤 曲調のバランスですね。そこだけはいつも気を付けていて、アップテンポばっかりにならないように、バラードばっかりにならないようにと。なんとなくのバランスだけ考えたら、あとはアルバムは自由にやらせてもらっているので、モン吉はモン吉で“こういう曲調をやってみたい”というのもあったし、いろいろと試しながらチャレンジしていった感じかなあ。
──既発楽曲を眺めると、まずバランス的に求めたのはアップテンポですか?
ファンキー加藤 そうですね。やっぱりライブ映えするようなナンバーで、“ちょっとおふざけで笑っちゃうような楽曲がひとつは欲しいね”って話をしてました。
モン吉 これだと「乙Sound」ですよね。なんか自分たちらしいなっていう感じがあって。
ファンキー加藤 だいたいアルバムに1曲、こうやって明るいメロディにふざけたラップ乗っけて、お客さんに何か言わせるようなゾーンがあって、みたいなのがある(笑)。
──そこで、自ら“オッサン”と言い切ってしまおうと?
モン吉 もう44、45の歳なんで、オッサンですよね。
ファンキー加藤 どうプラスに考えてもオッサンですね。
──めちゃくちゃポジティブなオッサンソングです。
ファンキー加藤 そう、ポジティブなんです。意外とまだ“オッサンあるある”を笑っていられるようなオッサンなんで。やっぱり“笑ってなきゃダメだな”とも思いますしね。そこで本当に肩を落としてるようじゃ、本当に老化の一途を辿るだけなので、ちゃんと“こうやってカラッと笑えるオッサンでありたいな”っていう願いも込めて作りました。
──アッパーでもう1曲、8ビートの「世界一」という曲があります。
ファンキー加藤 いわゆる“ファンモンロック”みたいな感じで作らせてもらいましたね。モンちゃんがサビのメロディを作ることが多いんですけど、ポーンと出てきたメロディが、やっぱり強かったりするんで、そこら辺は再始動しても変わらずだなと思いました。おもちゃみたいなヤマハの小さな鍵盤を出してガーッと弾くんですけど、こういうメロも調子いいときは10分〜15分ですぐ出てくる。
モン吉 (メロディは)早く出たほうがいいんですよね、ヘンに考えちゃうよりは。
──「荒野に咲く花」も、なかなか面白いアレンジですね。
ファンキー加藤 オケがちょっと珍しくて、異国情緒あふれるオケにそのまま素直に寄り添うような感じで、“頭の中にサボテン見えるよね”みたいな話になって(笑)。ちょっとこの世界観に乗っていたんです。あと、これはけっこう珍しく僕がメロディを作りました。
モン吉 「ちっぽけな勇気」(2007年)とかもメロはファンちゃんなんです。そっち系の打ち込みのやつはファンちゃんが得意だっていうのは、10年経っても覚えてたんで、僕も粘らず速攻振りました(笑)。
ファンキー加藤 早かった(笑)。5分ぐらいで“もう無理だ。任す!”みたいな。これは歌詞とメロディとオケの雰囲気がすごくマッチしてね。ライブ映えする曲になったなっていう気がしてます。
モン吉 スタジアムアンセム的な。
ファンキー加藤 そうだね。みんなで合唱できる。
──ライブの画が浮かんで見えますよね。「君だけの歌」は、さっきモン吉さんの話に出たように、ヴォーカルのトラックを複数重ねているように感じます。
モン吉 これは最後まで苦戦してましたね。メロと歌詞は全部あったんですけど、オケとのバランスがうまくいかなくて。言ってみれば、最初は“ザ・Jポップ”的なオケだったんですよ。それでメロディも“ザ・Jポップ”なんで、“ザ・Jポップ”と“ザ・Jポップ”だと、本当に10年前の自分たちみたいな雰囲気になっちゃっていたので、それはさすがにやばいなと思って、オケでうまく調整しようって。
ファンキー加藤 けっこう最初のほうに作り始めて最後にできあがったよね。
モン吉 そうだね。これは珍しくメロから出てきたというか、“降ってきた系”ですね。全然降らないんですけど、僕(笑)。
──ヴォーカルを重ねているのもあるでしょうし、ショートディレイかリバーブのような、まとわりつくような薄いエフェクトもかけられていますね。
モン吉 そうですね。ほかの曲はあまりリバーブをかけずデッド気味なんです、ファンモンって。だけど、これはけっこう広げたりしています。ビートが4つ打ちだったんで、そっちに寄ってもいいかなと思って。
──「ほろり」は、ちょっとソウルフルでレイドバック感もあって。ただ、サビのメロディは“和”の感じもあります。
モン吉 そうなんです。そのバランスがいいなって。
ファンキー加藤 面白いなって。先にこういう素敵なオケがあって、そこにモンちゃんがメロディを叩いたら良いものが降りてきて。オシャレだし、すげえ“和”だなって。
モン吉 意外とキャッチーになって良いなって。はい、やっちゃいました(笑)。
──もう1曲あります。「原宿陸橋」ですが、歌詞世界の“喪失感”がグッときます。
ファンキー加藤 うんうん、そうですね。ちょっと哀愁というか物憂げな雰囲気がありますね。
──個人的に《無駄に上手くなってく 意味のないテクニック》というリリックが、とても印象に残りました。
モン吉 ああ、オジサンたちになると、そこ(テクニック)じゃないところだったりするじゃないですか。
──スキルは得たけれど……。
モン吉 ……本質はそこじゃなかった、みたいな。
──その喪失感って、とても深いなと。
モン吉 ありがとうございます。珍しいよね、こんなに“東京っぽい”のを歌ってるの。基本的に河川敷が見えてるのばっかりだから(笑)。
ファンキー加藤 そうね。河川敷を背負ってるからね。
モン吉 いつも河川敷と校庭ばかりなんで、珍しく東京のど真ん中っぽい雰囲気が出せたらなっていう曲です。
──6月からは待望の全国ツアーが開始されます。少し先にはなりますけれど、どんなステージにしていきたいと考えていますか?
ファンキー加藤 今までファンモンもソロもそうなんですけど、基本的にツアーって夏じゃなくて冬が多かったんですよね。ここまで夏のド真ん中のツアーって初めてで、圧倒的にコンディションが作りやすいんですよ。それこそ乾燥の心配もしなくていいし。冬はとにかく神経をそっちに使って気疲れしちゃうぐらいなんで。ライブでいい汗かいて平日はちょっと休みながら……おそらくモンちゃんは川に行ったり海に行ったりとかして……。
モン吉 せっかくの夏ツアーに行くならば、普段は行けない川とか磯とか……。
ファンキー加藤 僕もジョギングしてキックボクシングして、いい感じで整えながら廻れればなと思っていますね。