取材・文:藤井 徹(Vocal Magazine Web)
ライブ写真撮影:AYAMI KAWASHIMA
モン吉の声はやっぱすげえ強いですよね。まずスタミナ……持久力がある ── ファンキー加藤
──いきなりものすごい駆け足で話を進めてしまうと、2004年にFUNKY MONKEY BABYSを結成し、2013年に解散。おふたりはソロ活動に入りました。グループ時代と歌い方などの面で変えようと思ったことはありますか?
ファンキー加藤 歌い方が丁寧になったかなあ。ちょっと考えて変えなきゃ“もたないな”っていう感覚がありましたね。ファンモンのときは、モンちゃんはすごく声にスタミナがあるんで、歌の力強さを最後までキープできるんですよ。僕は短距離走タイプで、スタートで会場に火をつけるのは僕の役目、最後まで火をくべてくれるのがモンちゃんの役目って感覚があったんですよ。だからフェスとかでも最初の2曲ぐらいで僕、声をつぶすんです。でも、それだけ叫んでシャウトして煽ってというのをファンモン時代はずっとやってたんですね。
最悪、僕の声が出なくなったらケミカル(DJケミカル)がうしろから出てきて、ヘッドセットでめっちゃ盛り上げる、メンバーがカバーしてくれてたんですよ。僕もそこに頼ってたし、がむしゃらに序盤から飛ばしていたんですけど、ソロになってからはそうはいかなくなって。ソロライブは声が出なくなるとライブが終わっちゃうからというので、ちょっと前半は抑えるとか、スタミナのペース配分とかしていたんです。でも、最初はすごくそれが嫌でしたね。
──自分らしくないから……。
ファンキー加藤 そう。“らしくないな”と思いながらも、でも“ソロってこういうことか……”って。がなる、シャウトする癖も少し抑えるようにしました。ファンモンの最後のドーム公演まではイヤモニしてなかったんですけど、ソロになって本格的にイヤモニをするようになり、ちょっと自分の声をセーブするようにしたりと、僕はけっこう意図的に変えましたね。
モン吉 僕は基本的に変わってないかもしれないですね。ライブも変わってないし。楽曲制作に関してファンモンの場合はスタッフを含めてみんなで“どういう曲を作ろう、こういう曲にしよう”みたいなのがあるんですけどソロは、気持ち的なところは自由でしたね。実際作ってみて作り方も変わらないし、ファンちゃんの声が乗ってないとか、ファンちゃんの歌詞が乗ってないとかっていうぐらいの違いかな。そんなに意図して変えようとかは、僕はあまりなかったですね。
──お互いのソロ作品を聴いての感想はありますか?
ファンキー加藤 あんまり聴いてなかったかな、ハハハハハ(笑)。
モン吉 ええ〜、俺は新しいアルバムが出たら聴いてるからね。《♪タタタ タラタ〜》って。
ファンキー加藤 ああ〜、「輝け」ね(笑)。
モン吉 そう、すごくいい曲だねって話をしたの覚えてない?
ファンキー加藤 ……うん。僕がモンちゃんのアルバムを聴いちゃうと“もっとこうしたい!”ってなっちゃうから。特に歌詞の面で……ファンモンのとき、ずっとサビの歌詞とか書いてたんで、“僕だったらこう書くなあ”って(笑)。余計なことを思っちゃうから、それは失礼だなと聴かないようにしてたというか。でも、LITTLE(KICK THE CAN CREW)くんとのフィーチャリング曲(「八王子〜地元愛の賛歌」)は聴きましたよ。
モン吉 もっと聴いてくださいよ、お願いしますよ(笑)。
ファンキー加藤 はい、わかりました(笑)。
──モン吉さんは、加藤さんの歌い方が変わったとか、気づいたりしましたか?
モン吉 やっぱり(自分の声が)合わさらない声で聴くとなると、“ファンキー加藤なんだな”とは思いますね。
ファンキー加藤 ああ、それは僕も思いますね。ソロ曲を聴いたときに“モン吉の声すごいな”って。正直、ソロのときは必死で、そんなに余裕がなかったんですよ。ファンモンの影というか思い出がデカ過ぎて……。そこに引っ張られるのも嫌だし、それを振り切るように前に進んでいかなきゃいけなかったんで、あんまり心のゆとりがなかったんですよね。
──お互いの声の魅力とは?
ファンキー加藤 モン吉の声はやっぱすげえ強いですよね。まずスタミナ……持久力がある。もちろん、その日の体調にもよるんですけど、モンちゃんが本当に調子を崩したのは、今まで5〜6回あるかないかじゃないかな。ずっと“モン吉の声のまんま”だし、僕と同じラインを歌ってても高音域の声の成分が多いんですよね。とにかくスコーンと声が抜けてくる。モンちゃんの声はやっぱりすごい武器です。それはずっと前からで、カラオケ行ってもうまいし、声の抜けがちょっと他のラッパーとは違った。それがファンモンを結成するひとつのきっかけとなったので。一緒にやれば“強いな”と思ったのは、やっぱり声の強さですよね。
モン吉 ありがたいですね、ニマニマしちゃいますね(笑)。ファンちゃんは唯一無二な感じですかね。けっこうカラオケとかモノマネで気持ちよくなっちゃうタイプなので、サザン(オールスターズ)をどれだけ寄せるかって(笑)。
ファンキー加藤 “どれだけ声をかすれさせるか”ってね(笑)。
モン吉 サザンに関しては、たまに本人を超えてるんじゃないかって……。
ファンキー加藤 ハハハハハ。あまりにも気持ち良すぎてね。
モン吉 俺の言ってること、わかるでしょ?
ファンキー加藤 わかるわかる(笑)。
モン吉 やり過ぎだよってぐらいにやったりするんで。でもファンちゃん自身は逆にモノマネしづらい声っていうか。
──確かに、わかります。
モン吉 あ、何となく言ってる意味わかります? もともと地が違うというか、持ってる個性みたいなのが強いと思いますね。
──モノマネの番組って多いですけど、ファンモンやるコンビとかいないですよね。
モン吉 たまにいるんですけど、あんまり似てないんですよ(笑)。仕草さや熱さのモノマネはありますけど。
ファンキー加藤 ケミカルの真似をやってる人は、よくいましたね(笑)。
モン吉 声が似てるとかは、あんまりないですよね。
──加藤さんは2019年に『OUR MIC FES』を主催されましたね。自身と近いスタイルのアーティストを集めたフェスでしたが、そこで他の方と話して感じたことはありましたか?
ファンキー加藤 思った以上にファンモンフォロワーっているんだなって思いましたね(笑)。「昔から目標にしてました」みたいに言ってくれる人が多かったし。あと「このジャンルのフェスを開催してくれてありがとうございます」みたいな言葉はすごく多かったですね。何と形容したらいいかわかんないジャンルですけど、いわゆるクラブシーンのコアなヒップホップ層でもないし、かと言ってバンドマンたちがやるようなライブハウスのイベントともちょっと違うし……。ファンモンも昔そうだったんですけど、自分たちの居場所が見当たらないぞ、みたいな。
夏フェスに出てもちょっと外様な気持ちになるし、デビュー当時に行っていたいわゆるヒップホップ層のイベントも、やはりちょっとだけ居心地が良くないし……っていうので、おそらくそういう気持ちを抱いている後輩たちは多いだろうなと思ったのも、フェスを開催したひとつの理由だったんです。とにかくみんなすごく自分のホームというようなニュアンスで楽しんでくれてたんですよね。全国から集まって来てくれたんで、そこで交流が始まって。連絡先交換したり、お互いのイベントに呼び合ったりとか、けっこう始まっていたので、“ああ、やって良かったな”ってシンプルに思いましたけどね。
──モン吉さんは、どう見てましたか?
モン吉 あのー、僕も「やるなら出させてくれ」って言ったんですけど、「自分でやってくれ」って言われちゃって(笑)。
ファンキー加藤 ハハハハハ。「モンちゃんはもう自分でやる立場だよ」って。
──残念なのは、そのあとコロナ禍になってしまったことですよね。
ファンキー加藤 いや、本当にそうなんですよ。イベント自体も成功したし、お客さんもすごい反響があったから、“2年に1回だな。次は2021年だ!”と思ったんですけど、すぐにコロナ禍で、新木場スタジオコーストもなくなってしまって……。あそこの会場こそ良かったんですよ。いくつもステージ組めるようなところで……。いまだに後輩たちから「またやってください」って言われるんですが、もうちょっと落ち着いて、良い会場が見つかったときには、第2回も開催したいと思うんですけどね。