取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)
サビは勢いを大事に「全部歌い切る!」っていう意識で歌ったほうがうまくいく
──今作の中でスタジオでレコーディングした曲はどれですか?
超学生 「ルーム No.4」、「Fake Parade」、「Untouchable」、「Did you see the sunrise?」がスタジオでした。他は全部宅録です。
──それぞれ別のスタジオでしたか?
超学生 そうですね。
──マイクも別々のものでしたか?
超学生 それぞれ覚えてますよ! 「ルーム No.4」と「Untouchable」はBlueのBottle SLで、「Fake Parade」と「Did you see the sunrise?」はSONYのC-800G/9Xでした。
──レコーディングに一番時間がかったのはどの曲でしたか?
超学生 「Let’s go」ですね。実はハモリが各場所、例えば上だけで4つ同時に鳴ってるとか、場所によっては16個同時に声が鳴ってるという指定があったので、もうレコーディングがめっちゃ大変でした(笑)。メインを1本録るだけでも難しかったんですけど、ダブリングが4つ鳴ってるとか、オクターブ下が2個いて、上も2個いて、ハモリが上下4つずつ付いてみたいな感じだったんで、ホント純粋に量が多くて。
──確かに多重コーラスのボリューム感と華やかさが印象的です。それがアレンジャーさんからの指定ということですよね。
超学生 そうです。こういうふうに録ってくださいっていうトラックの指定があって。
──さわやかなダンスナンバーにマッチした伸びやかな歌唱も素敵です。歌い方の指示もあったんですか?
超学生 「Let’s go」は自宅で録ったので特になかったです。それで言うと「Did you see the sunrise?」は作詞作曲の松隈ケンタさんが細かい歌い方や発音に関してたくさんディレクションしてくださったのですごく勉強になりましたし、普段やらない歌い回しの発見もあったりして貴重な経験でした。
──歌唱のポイントを歌詞カードに書き込んだりしますか?
超学生 スタジオで録らせてもらうときは歌詞カードとペンをもらいますし、ディレクションをしていただくので、言われたことを忘れないようにたくさん書きます。でも宅録では全然しないです。
──なるほど。先ほど「Let’s go」は録らないといけないヴォーカルトラックの数が多かったとお伺いしましたが、メイン歌唱を録るのにたくさんテイクを重ねた曲はありますか?
超学生 「けものになりたい!」です。最初サビをめちゃめちゃポップに可愛く歌ってたんですけど、宅録で録った音源をピノキオピーさんに送ったら「ちょっと強い歌い方のほうがいいんじゃない?」ってご提案をいただいて、何回も録り直しました。
──サビで入るガナリも、跳ねるような可愛いサウンドへの良いエッジになってます。サビのテイクはどのぐらい重ねたのですか?
超学生 あんまり定かではないんですけど、20ずつぐらいじゃないかな。リテイク前後で合計40ぐらい。
──レコーディングは部分部分で録ることが多いのでしょうか?
超学生 曲にもよるんですよね。「けものになりたい!」はわりと部分部分でしたけど。例えばつるっとAメロ全部歌うテイクを何回か録って、いい部分を息継ぎのタイミングでクロスして繋げるみたいなこともありますけど、多いのは部分ごとのテイクですかね。でもうまくいってるときはヴァース全部歌っちゃったりもしますし。あとサビは分けないで歌うことが多いですね。
──それは何かストーリーを意識してのことですか?
超学生 サビはひとつひとつをうまく歌おうというよりは、勢いを大事に“全部歌い切る!”っていう意識で歌ったほうがうまくいくことが多いんです。
──そうなんですね。今作の中でスルッと歌えた曲はありますか?
超学生 「サイコ」は歌いやすかったです。すでにリリースしていた「ルーム No.4」から繋がってる世界観の曲というのもあって、主人公がどういう視点を持ってるのかがもともと入っていたし、すりぃさんの楽曲でどういう歌い回しが合うのかっていうのも「ルーム No.4」での経験があったぶん、活きたんじゃないかなと。
──逆に歌うのがチャレンジングだったものは?
超学生 「Give it to me」ですかね。技術的に難しいというよりは、グルーヴとか感情表現とか、僕の中にないものが多かったので一番大変でした。
──ブラックミュージック感漂うゆったりと踊れる1曲です。Aメロではラップ寄りのアプローチが印象的ですが、歌と比べて難しさはありましたか?
超学生 それはあまりなかったかもしれないですね。むしろ歌のほうがメロディラインとして今まで歌ってこなかったものが多かったです。ラップの部分は強いて言うならスローテンポだから、リズムがちょっとズレてもけっこう顕著に現われちゃうっていうのは大変でした。ヴォーカルエディットがあるにしても元のリズムが合ってるに越したことはないので、メトロノームにしっかり合わせることを意識して歌いましたね。
──“歌ってみた”動画ではご自身でミックスされるなど、ミックスにもこだわりのある超学生さんですが、今作でエンジニアさんへミックスのオーダーをすることは多かったですか?
超学生 「ここの音程を数セント上げてほしい」といったオーダーや「もうちょっとサチュレーションかけた感じにザラっとできませんか?」といったものまで、本当に細かくお願いさせていただきました。
──“この曲のココは特にこだわった!”というのはありますか?
超学生 やっぱり「サイコ」のヴォーカルの音作りですかね。細かくエッジヴォイスが入ったりちょっとしゃがれたりみたいな、いろんな歌い方をキャラクターに合わせて入れたので、それがしっかり前に出るようにしてほしかったというのがありました。ミックスをかなり細かめにやってもらったので、“ヴォーカルの質感の変化”というところに注目していただきたいです。
──さまざまなこだわりが詰まったアルバムですが、改めて聴きどころを教えてください。
超学生 いろんな曲がたくさん入っている色とりどりのアルバムになっていて、“1曲ぐらいお気に入りの曲が見つかるでしょ!”っていうコンセプトで作ったので、みんなのお気に入りの1曲を見つけてほしいなと思ってます。
──幅広いジャンルの楽曲にチャレンジしたと思いますが、今後歌ってみたいジャンルはありますか?
超学生 それで言うと、この中に含まれていないカテゴリーのもので、次回のアルバムはわりと統一したものを作りたいと思っていて。ちょっとまだ内緒です。
──楽しみにしています。3月のワンマンライブ『入学説明会』はどんなライブになりそうですか?
超学生 普通のライブはすでにみなさんたくさんやられていると思いますし、歌い手を長く応援されてる方もたくさんいらっしゃると思うので、今まであまりなかったような、ちょっと奇妙なライブにできたらなと思ってます!
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