【インタビュー】超学生、「こんなこともできます!」を欲張って集めた最新アルバムでの歌唱表現とこだわりを語り尽くす

2023.02.20

取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)

“ガナリヴォイス”が特徴の21歳注目のヴォーカリスト、超学生が2月15日にメジャー1stアルバム『超』を発売する。
小学生の頃から“歌ってみた”動画の投稿を始め話題を集めてきた彼は、現在YouTubeチャンネル登録者数68万人を突破し、2022年10月28日にはPrime Video『仮面ライダーBLACK SUN』の主題歌「Did you see the sunrise?」でメジャーデビューを果たした。
本アルバムは、メジャーデビュー曲に加え2022年に発表したオリジナル曲を含む、色とりどりのジャンルレスな全11曲が収録されている。
今回Vocal Magazine Web初登場となる超学生に、歌声を形作ったルーツや本作のレコーディング・エピソード、ヴォーカリストとしてのこだわりを語ってもらった。

歌い方に正解なんてない。でも“どれを選択するのが正解なんだろう”って悩んだ時期もあった

──最初に、低音の豊かな広がりやガナリヴォイスが魅力的な、超学生さんの声色を形作ったルーツから聞かせてください。

超学生 歌の入りは小学校5年生ぐらいです。当時は声変わりしてなかったので女の子みたいな高い声で歌ってたんですけど、中2の頃に声変わりして1オクターブぐらいガッと下がりました。

2、3年前からYouTubeに少しずつ頻度を上げて“歌ってみた”を投稿していくようになったら、ありがたいことに皆さんからコメントをいただけるようになって。それを見るのがめちゃくちゃ好きだったので、“ここの歌い方が好き”みたいなコメントを見て“こういうのがみんな好きなんだ”というのを集めていったところ、“ガナリ”とか“ちょっと激しめの歌い方”とかが多かったんです。それでだんだん寄っていったというか、その歌い方が増えていって、今の僕のスタイルになったという感じですね。

──“歌ってみた”に興味を持ったのはいつ頃だったんですか?

超学生 10年前ぐらいです。Google ChromeのCMに初音ミクが取り上げられていて、kzさんが書き下ろした「Tell Your World」が流れているのを観たのがきっかけです。そこでボーカロイドを知ってからYouTubeなどを見漁っていく中で、「歌ってみた講座」のような動画に出会いました。“歌ってみたって何?”というところからだったんですけど、動画を観ながら“ちょっと僕も作ってみようかな”って興味本位で始めたんです。

父に「マイクが必要らしいんだけど」って相談したら、ちっちゃいピンマイクを用意してくれたんですよ。それを使ってやってみたのが“歌ってみた”に興味を持った時期でもあり、自分で始めちゃった時期でもありって感じです。

──当時は何のソフトを使っていたんですか?

超学生 RadioLineです。あとSoundEngine。途中Audacityも使おうとして、でもRadioLineのほうが使いやすいなと思って。RadioLineは4トラックしか録れないんですけど、僕はそれで録ってました。

──初めてご自身の声を聴いたときはどんな印象でした?

超学生 みんなそうだと思うんですけど、“自分ってこんな声なんだ”という違和感はありました。でも自分でミックスをやろうと思っていたのもありましたし、わりと序盤で慣れたんじゃないかなと思います。

──当時憧れていたアーティストはどんな方々でしたか?

超学生 高音系男子の方々をたくさん聴いてました。赤ティンさん、まふまふさん、鋼兵さんとか。

──超学生さんは低音ヴォイスの魅力が特に際立っているので、ハイトーン系にルーツがあるとは意外でした。低音を武器にしようと意図的に考えたことはありましたか?

超学生 いや、もう歌いやすいのがこのキーだったというか。僕が“歌ってみた”を聴き始めた頃から数年間、歌い手さんたちの世界は“原キー至上主義”というか。原キーで歌えたらすごい、高い声が出たらすごいみたいな場所だったんで、僕も高い声で歌いたいなと思っていたんです。でも声変わりしたらめちゃめちゃ低くなったんで、まあ自分のキーで無理せず歌おうかなと。無理やり高い声を出して歌うよりは、自分のキーでうまいほうがいいのかなという気持ちだったので、自分の武器は低い声だ!って意識したというよりは、普通に歌いやすいキーがこれだったんです。

──巻き舌やガナリを習得し始めたきっかけはありますか?

超学生 投稿動画のコメントの反応が良いものに寄せていったらだんだんという感じだったので、意識的にガナリとか巻き舌を練習したことはなくて、いろんな歌い方をしていく中で自然と身に付いていきました。

──ガナリをやってみたい読者の方に向けて、発声するときのコツを教えてくれませんか?

超学生 文字で伝わるかわからないですけど、僕の場合は“咳払いの延長”です。「ヴヴンッ」っていうのを伸ばしていくイメージ。いろいろな出し方があると思うんですけど、それこそ他の方で言うと小林私さんみたいな声の出し方をしたい人。それはまた別の方向で、きっともっと上のほうで声をひっかけて、ちょっと声を二重にする。仮声帯と言うらしいんですけど、そういう種類の声の出し方もあるみたいなので、ガナリをカッコよくやりたい方は無理せず、自分に合う声の出し方をやるのがいいんじゃないかなと思います。

──ボイトレの経験はありますか?

超学生 はい。中学2年生の頃から通い始めて、今も行ってます。でも、そんなにガッツリってわけじゃなく、特に最近は遊びにというか、ほとんどしゃべりに行ってるだけなんですけど(笑)。

──ボイトレに通う中で“これは役に立った”と感じる練習方法はありますか?

超学生 いろいろあるんですけど、もし喉に力を入れたくないって悩んでる方は、頭のうしろで手を組んで首に当てて、首をゆっくり左右に振りながらロングトーンや歌うのがお薦めです。そうすると(喉を)脱力して歌えるっていうのがあって。

──初めて聞きました。ありがとうございます。今は主にメンテナンス目的で通ってますか?

超学生 そうですね。(歌い方が)変な方向に行ってないか?とか。あとやってみたい曲があったときに、今までやってこなかった、例えばメロウなシティポップやバラードの曲だったら、その王道としての歌い方や発声的に正しい歌唱を教えてもらうこともあります。ボカロ曲だったらある意味正しい歌い方じゃないほうがカッコよかったりもするじゃないですか。でも王道で行きたいときは、逆に自分はそれを知らなかったりするので、先生に聞いてます。

──日々の自主トレーニングはどんなことをしていますか?

超学生 毎日30分走ってます。でも趣味で走ってるだけなので歌に意味があるかはちょっとわからないです(笑)。あと“歌の練習するぞ!”と思って毎日トレーニングしたりはしてないですけど、ほぼ毎日録音したりミックスしたりしてます。

──毎日何かしら歌っているということですよね。

超学生 そうですね。毎週“歌ってみた”動画を上げているんですけど、大体2、3日ぐらいいろいろ録音して、自分でミックスして、録り直したいと思ったらもう1回録って。1週間何かしら録音してます。

──かなりハイペースに投稿しているんですね。超学生さんのような歌い手活動に憧れている方に向けてアドバイスを届けるとしたらどんなことが浮かびますか?

超学生 あんまり偉そうなことは言えないですけど、無理に勉強したり練習するよりかは、好きで自然に続けるほうが身につきやすいとどこかで聞いたことがあるんです。実際、僕もそうだと実感することが多いので、流行りの曲をやるのももちろん素敵なんですけど、自分の好きな曲調や好きな歌い方っていうのを突き詰めて歌っていくのがいいんじゃないかなと思いますし、僕はそうしてます。

──ありがとうございます。ちなみに超学生さんは壁にぶつかった経験はありますか?

超学生 昨年1年ぐらいがずっと壁にぶつかっている感じでした。ある程度いろんな歌い方ができるようになった時期で、逆に“この曲を歌います”ってなったときに要所要所でどの歌い方を選択して歌うのがいいんだろうって迷ってしまって、ものすごい大変でしたね。“自分のスタイルじゃないんじゃないか?”みたいな。今思うと別に歌い方に正解なんてないんですけど、そのときは“どれを選択するのが正解なんだろう?”って悩んでました。

──歌い方の武器がありすぎて逆に自分のスタイルを模索してしまったと。今はあまり悩まなくなりましたか?

超学生 そうですね、今はやっとというか。ミックスやレコーディング技術の向上ももちろんあるんですけど、ある程度どの歌い方を使ってもいいから好きに歌おうって思えてます。なんとなく経験というか、これを歌う選択が良いんじゃないかとか、1曲ずつやりたいことが以前よりちゃんと見据えられるようになって、録音する前に“今回のテーマに基づくとこの歌い方がいいんじゃないか”みたいなことがスムーズに選択できるようになりましたね。

最新情報

ヴォーカルや機材、ライブに関する最新情報をほぼ毎日更新!