【インタビュー】A夏目、新曲から見える声色へのこだわり。“あんまりトゲがない、素直な声”を目指して

2022.11.18

取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)

宅録は、録って消して録って消してを繰り返す

──新曲「青いとばり feat.ハク。」について聞かせてください。Paravi オリジナル番組『恋の Last Vacation』の書き下ろし楽曲ということで、どんな世界観やイメージの曲にしようと考えましたか?

A夏目 海辺でバイトをして恋が生まれるという番組内容だったので、「海辺であること」、「青春」、「恋」などを踏まえて世界観を練っていったんです。お互いの想いが強く繋がっていて、キラキラしたような、そして「海」がちゃんと連想できるようにというイメージで書きました。

──「青いとばり」は何を象徴しているのでしょうか?

A夏目 《青〜いと〜ばり〜♪》というメロディラインなんですけど、最初そのメロディに合う言葉を検索していて、そしたら「青いとばり」が出てきたんです。もの悲しいさまとか、ちょっと悲しい様子を表す言葉なんですよ。それで、そういう意味も込めたし、あと個人的な想像なんですけど、青って青春の色というか。若者たちのかけがえのない時間が「とばり」=「幕」のようなものに包まれてるっていうイメージにもなるんじゃないかなと思って、すごくぴったりなタイトルだと感じたので付けました。

──温かさの中に少し寂しさも感じるサウンドが印象的ですが、トラック制作にあたり、トラックメイカーのTaro Ishidaさんへオーダーしたことはありますか?

A夏目 最初にTaro Ishidaさんから基本的なビートを送ってもらい、そこに仮のヴォーカルデモを録ってTaro Ishidaさんに戻し、そこから一緒に話し合いをしていくっていう流れなんですけど。最初バース入りだったところをサビ入りにしたり、ラスサビ前にひと拍置くところを追加させてもらったり、そういう構成の話し合いはけっこうありましたね。

──トラックを聴いたとき、メロディはスッと浮かんできましたか?

A夏目 バースは案外スラスラ浮かんだんですけど、フックがなかなか浮かばなくて。いろいろなメロディを試したんですけど、なんかビシッと合うものがなくて……。5時間ぐらい考えて、パッと出てきたのがあのメロディだったんです。

──その5時間は、インスピレーションを広げるために別のことを行なったり?

A夏目 いや、ずっとブースに入っていて。ふとした瞬間に無意識に声(=メロディ)が出るんです。ただそれがビートに合ってるかはわからないじゃないですか。でも今回は合わせてみたらバシッと合ったんですよ。

──ビートを流してない状態で考えていたんですね。

A夏目 そうですね。ビートを聴きすぎて、頭の中で自然とそれに合うメロディがポッて出てきたというか。

──ブースというのは家のブースですか?

A夏目 家のクローゼットに作った宅録ブースです。

──レコーディングも宅録ですか?

A夏目 そうですね、僕は宅録で。

──今回ツインヴォーカルに大阪出身ガールズバンド・ハク。のアイさんを迎えています。レコーディングの際、アイさんの歌声を意識したり歌い方を工夫したことはありましたか?

A夏目 出だしのサビなんかはビートの音がけっこう少ないので、僕が1オクターブ下で歌ってアイさんの声をしっかり主張したり。次のサビはビートも弾ける感じになってるんで、僕も同じ旋律で歌って、迫力を出すようにしたり。あとメロディ作りの段階で、サビはアイさんが気持ちよく、のびのび歌えるようにというのを意識して、ちょっと高めに作ったりしてます。

──A夏目さんパートのテイクはどのくらい録りましたか?

A夏目 テイクは……僕、めちゃくちゃ多いんですけど、たぶんサビだけで50テイクとか。

──つるっと録るより部分ごとに録っていく?

A夏目 そうですね。ひとりなんで録って消して録って消してをめちゃくちゃするっていうか。普通のレコーディングスタジオだったらエンジニアさんもいらっしゃるんで、そんなに何回もやってられないですけど。宅録では自分が納得するまでレコーディングを繰り返すっていう感じです。

──録るときは緻密に歌い方を考えますか? それとも、気持ちに任せて歌いますか?

A夏目 最初はなにも考えずに歌ってみて「これいいじゃん!」ってなったら、そこから自分がいいなって思う声をいろいろ入れていったり。あとはレコーディングをしていて、中盤ぐらいからめちゃくちゃ声の調子が良くなるときがあるんですよ。「今の声のほうがいいから、最初からやろう!」って録り直したりとか(笑)。そういうのですごく時間がかかります。

──宅録だからこそレコーディングもDIYな感じで。

A夏目 そうですね。なんとなく歌ってみたときのテイクが良かったら、また全部録り直したり。同じ箇所でも、自分のヴォーカルのダメなところが絶対にあるんですよ。ここが掠れてるとか。それを直すために何回も録ったりします。

──歌へのこだわりを感じます。これから身につけたい歌い方やラップのテクニックはありますか?

A夏目 もうちょっと通る声というか、透き通った伸びる声にしたいというのはあります。ボイトレでもそれを目指して練習していますし、パァッて広がるような声を出せるようになったら、オートチューンもプラスして、より綺麗でさわやかな感じになるんじゃないかなって思ってます。

──さわやかの究極を突き詰めるみたいな。

A夏目 あははは! そうですね。お客さんが一発聞いて「うわ、好きだ!」って思えるような歌になればいいなって。

──アーティストとしての抱負はありますか? また、20代はどのように過ごしていきたいですか?

A夏目 ヴォーカルの向上もそうですし、歌詞もそうなんですけど、全体的に曲のクオリティを上げて、皆さんに届くチャンスがあったときに、好きだって思ってもらえるような曲作りをしていきたいです。そして、20代はより飛躍的に全国を飛び回れるようなラッパーになりたいです。

──そこの肩書きはやはりラッパーとして、なんですかね。

A夏目 ああ、ラップも好きなんですけど、メロディアスな曲も好きなので、それは自分の中でどっちがやりたいか、うまく消化しながらやっていきたいです。お客さんに求められてるものと、自分がやりたいことをしっかり見つめ合いながら、なお、いい曲はいい曲として、クオリティ高い曲を作って届けられたらいいなって思います。

──誕生日前日の11月20日に開催するライブでは、どんな自分を見せたいですか?

A夏目 僕にとっては10代最後の日で、そんな日にお客さんが一緒にいてくれるんで、お客さんにとって最高の思い出になるように精一杯やりたいっていうのと、やっぱり今までで一番いいライブをするっていうのは絶対で。歌の部分も含め、またここから「今後のA夏目楽しみだな」って思ってもらえるようなパフォーマンスができたらいいんじゃないかなって思ってます。


リリース情報

新曲「青いとばり feat.ハク。」
2022年11月9日配信リリース
ストリーミング:https://anatsume.lnk.to/aoitobari

ライブ情報

『Special Live “TEENAGERS”』
チケット情報: https://eplus.jp/anatsume/
日時:2022年11月20 日(日) OPEN 16:30 / START 17:00
会場:CIRCUS TOKYO
料金:一般3,500円 / 学割2,500円

プロフィール

A 夏目(アナツメ)
熊本県出身在住の19 歳ラッパー。メロウなサウンドに独特のリリックが、聴き手に大きな印象を残し、加えてアートワークも自ら手掛けるなどマルチな才能を見せている。2020年から音楽制作を開始。ABEMAのオリジナル番組『恋する♥週末ホームステイ 2020 冬 Tokyo』に参加し、制作した「東京の冬」は、LINE MUSIC ソング Top100 にて 初登場 1 位を獲得。2022年7月にリリースされた「What’s up」では、同じROOFTOP所属のRin音、クボタカイ、asmi とともに初のタッグを組み話題を呼んでいる。
Instagram:https://www.instagram.com/anatsume1121/
Linkfire:https://anatsume.lnk.to/music
TikTok:https://www.tiktok.com/@anathume1121
Twitter:https://twitter.com/anatsume1121
Website:https://www.jvcmusic.co.jp/anatsume/

1 2 3

最新情報

ヴォーカルや機材、ライブに関する最新情報をほぼ毎日更新!