“今流行りの歌い方”に寄せるイメージは常に持っている

──Penthouseはツインリードヴォーカルというスタイルも特色ですが、バンドの成り立ちからお聞きできればと思います。

浪岡　最初はどっちがヴォーカルをやるかはあんまり決めずにメンバーを集めたんです。だから僕がギターを弾くパターンもあると思っていたんですけど、作った曲をふたりで歌っていくうちに（今の形に）決まりました。

──当時、声の相性については意識していましたか？

浪岡　全然声が違うので大丈夫かなぁ……って思ってたんですけど、意外とハモる。

大島　意外にね（笑）。浪岡の声がけっこう特徴的というか、すごく鋭くてパキッとしていて、誰が聴いても浪岡の声だとハッキリわかる声だと思うんです。相性を選ぶタイプの声質で、最初はすごく模索したんですけど、作品を重ねていくごとにちょっとずつ声の相性が良くなっていったんじゃないかなと思ってます。まだまだ探求中です。

──模索する中でお互いに歩み寄ったり、調整することもあったのでしょうか。

浪岡　僕からはあんまり歩み寄りはできないんですけど、真帆さんに頑張ってもらっている感じですね（笑）。

大島　彼が（曲を）作ってるので、そこはプロデューサー特権です（笑）。でも、浪岡は声だけじゃなくて歌い方も日本人離れしている。彼は海外の曲にルーツがあって、影響を受けている歌い方なので、そこに合わせるのが最初はめちゃくちゃ大変でしたね。

──お互いの声を初めて聴いたのはどんなシーンだったんですか？

浪岡　大島　新人ライブ……？

浪岡　僕らはサークル出身で同期なんですけど、１年生は最初に新人ライブをやるんです。たぶん、そこなんじゃないですかね。

大島　そうね、10年前ぐらいかな。懐かしい（笑）。

──お互いにどんな印象を持ちましたか？

浪岡　あぁ、でも、“上手だな”みたいな。まぁ、“うまい人がいるな”って。

大島　ほんとかよ！あははは（笑）。浪岡はすでにけっこう有名で、“すごいやつがいる”って前評判があったんです。私は当時尖ってたから“どんなもんじゃい”みたいな穿った見方をしてましたけど（笑）。

でも、同世代でこれだけハードロックを歌いこなせる人は初めて見たので、けっこう衝撃を受けました。こんな子いるんだな、世界は広いなって気持ちになりましたね。

──その頃の歌声は、今とは違いますか？

浪岡　僕はけっこう変わったと思います。真帆さんは僕ほど変わり幅はないけど、当時とはだいぶ変わってるんじゃないかな。

大島　確かに、浪岡は声のバリエーションがめちゃくちゃ増えたよね。

浪岡　当時はハードロックを歌ってたんですけど、今はいろんな歌い方ができるようになったとは思いますね。

──このバンドをやるにあたって浪岡さんはより多くの人に聴いていただけるように意識しているそうですが、そういった中で試行錯誤しながら歌のバリエーションを増やしていったんですか？

浪岡　そうですね。やっぱり“今流行りの歌い方”ってあって、それが洋楽寄りというか。エッジをちょっと前に立てて、しゃくりをあまり大げさにやらずに、かつ日本語はハッキリしすぎないように、ちょっと母音を曖昧にして……みたいな歌い方がトレンドだと思うので、それに寄せるイメージは常に持っていますね。

大島　私が苦手なやつなんですけど（笑）。

──浪岡さんの分析を聞いて、試行錯誤されたり？

大島　もう、レコーディングするときにめちゃくちゃダメ出しされるんですよ。やっぱり何十年も歌ってきた中で積み上げてきた私の歌い方が確立されちゃってるところがあるので。

ただ、浪岡はトレンドの歌い方だったり、現代でたくさん評価を得ているアーティストの方の音楽を彼なりにすごく分析して、こういうほうがより幅広い層の方にもウケるんじゃないかって勉強しているので、そこを取り入れてチャレンジしていこうって精神が強いんです。

私もそれに柔軟に対応していきたいという気持ちはあるんですけど、積み上がってきちゃったものがあるので、そこは今模索中ですね。これからリリースする曲でご期待いただければと（笑）。

浪岡　あははは（笑）。