【インタビュー】FIVE NEW OLDのHIROSHIが結成12年目の新たなる一歩『Departure : My New Me』を語る

2022.09.23

取材・文:荒金良介

小さなアップデートを繰り返せば、新たな形式ができる

──今作のサウンドの方向性に関してもメンバーと話し合ったのですか?

HIROSHI 最初はそれを共有したうえで、感覚的にやりたいことを探求しようと思いました。今回はバンドサウンドだったり、オルタナティブな音に回帰した印象はありますね。それが今やりたいことであり、同時にFIVE NEW OLDに出会ってくれた人が好きなところ、求めるところでもあるだろうから、それをどうアップデートしようかなと。

──なるほど。まずバンドサウンド、オルタナティブな音楽性に回帰した理由は?

HIROSHI グランジやシューゲイザーも好きなんです。破壊的だけど、美しいみたいな。そういうものに魅力を感じますからね。楽曲で言えば、「Happy Sad」、「Goodbye My Car」はそうですね。前者は“はっぴいえんどがパンク始めました”みたいなノリなんです。

──発想が面白いですね(笑)。

HIROSHI アネモネという花をモチーフに人間模様を描こうと。テンポがいいから、“頑張るぜ!”みたいな内容ではなく、そこに憂いを入れたくて。僕たちが思うオルタナティブはそういうものなんですよ。相反するものをどうやって共存させようかなと。

──サウンド的には温故知新じゃないですが、古き音楽を検証して、新しいものを作ろうと?

HIROSHI バンド名もFIVE NEW OLDだし、それに引っ張られている部分はありますね(笑)。「Happy Sad」はコードがボサノヴァっぽくて、そこに軽快なビートを入れて、アネモネの《あなたを信じてる》という純粋的な部分と、もうひとつ花言葉に裏切りという意味もあるんです。表裏一体のそういう感じも入れたくて。今回はColin Brittainというアメリカ人のアレンジャーが入ってくれて、途中で入ってくるサビ後のギターフレーズはスウェディッシュポップ、バンドで言うとカーディガンズっぽいですからね。今作は各所にそういう部分が折り込まれています。

──「Happy Sad」はギターが前面にフィーチャーされてますね

HIROSHI 僕たちはルーツにパンクがありますからね。昔から知ってる人は帰って来たねと思うだろうし、知らない人はオッ!と思ってもらえるんじゃないかと。

──「Goodbye My Car」はロックサウンドに仕上がっています。

HIROSHI ロックサウンドだけど、きれいな印象もあるんですよね。ロードムービーの夜明けの景色に、ふと流れてくる音楽みたいなイメージなんです。これも夢破れた青年の歌で、なよなよした男子っぽさが出てるかなと(笑)。僕はそういうのが好きですからね。この曲のヴォーカルはしゃべってるようなトーンで始まり、サビがけっこう高いんですよね。アレンジする中でジーザス&メリー・チェインの『サイコキャンディ』みたいな、UKっぽいシンコペーションを使ったら、サビに躍動感が出たんですよ。練習しているときに自然と声を張り上げたら、そのキーが出ることに自分でビックリしちゃって、今の形になりました(笑)。     

──そんな過程があったんですね。

HIROSHI なぜバンドサウンドに回帰したかと言うと、人を驚かせたい気持ちが常にあるんです。横ノリのFIVE NEW OLDの良さを感じてくれた人に、実はこういうのもあるよって。でも悪い意味では裏切りたくないんですよ。同じことはやりたくないけど、僕たちにとっていい節になっていればいいのかなと。例えばサザンの桑田さんの歌い方とか、同じメロディが別の曲にあっても、その人の節になっているじゃないですか。そこで小さなアップデートを繰り返せば、新たな形式ができると思うから。

今回はそれ以上に伝えたい思いも多かったので、日本語詞も多くなりました。より鮮明に歌の景色や、届けたいメッセージを入れたいと思いましたからね。それもアップデートのひとつです。「Home」、「Script」、「LNLY」にはそれが反映されているかなと。極めつけは「My New Me」ですね。タイトル曲で“新しい私”と言いながら、「By Your Side」というメジャーデビューのときに最初に書いた曲の系譜なんですよ。だから、楽曲的にはファンにとっても一番馴染みのあることをやっているんです。それが自分たち的にも面白くて。     

──天邪鬼ですねえ。

HIROSHI はははは。狙ったわけではなく、勝手に引き寄せられたんです。

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