取材・文:田代智衣里(Vocal Magazine Web)
歌詞を何回も書き直したんですけど、ここだけは絶対これにしようって
──新曲「魔法」がリリースされますが、ドラマ『魔法のリノベ』オープニング曲ということが決まったときはどんなお気持ちでしたか?
さとう マジかぁ……って。すごく嬉しかったです。
──曲はオファーがあってから制作したのですか?
さとう はい。まだ脚本が完成していない時期だったので、原作の漫画を読んで書き始めました。
──ドラマのタイトルにも“魔法“という言葉が入っていますが、最初からこの言葉をテーマに作っていきましたか? 原作を読んだイメージから“魔法”に行き着きましたか?
さとう 最初にテーマだけはいただいていて、それが“変化”だったんです。先にメロディだけを作って進めていたんですけど、決まったのは本当に最近です。最初は思いついてもいなかった形にどんどん変わっていって、最終的にこのメロディになりました。
半年間ぐらいこの曲だけを頑張っていて思い入れがあり過ぎたのもあって、それから歌詞が完成するまでは早かったですね。意識することもなく自然に「魔法」になりました。
──“魔法”という言葉自体にはどんなイメージを持っていましたか?
さとう 最初は魔法使いとか、ファンタジーなもののイメージだったんです。でも、今回の曲を書いているうちに、“魔法”というものはけっこうリアルというか、現実だなと思うようになりました。
──デモは、打ち込みで作ったのですか?
さとう 今回は弾き語りでデモを作って、アレンジは編曲家の方がイチから作ってくれました。
──大学に入ってから初めて好きな人ができて、歌詞を書くようになったというエピソードがありますが、歌詞を書く前とあとで、自分で歌の表現が違うと感じることはありますか?
さとう あぁ、あるかもしれません。昔は自分の曲も少なかったんですけど、なんとなくリズムとか言葉の音のほうをイメージして、そっちに重きを置いていました。なんとなく聴こえがいい感じがいいなって。歌詞にもあまり興味がなかったので、そういう気持ちでやってたんですけど、だんだん自分の想いとか、伝えたいってわけでもないんですけど、残しておきたいことがたくさん出てきたんです。
それを言葉にするようになってからは、歌うときも歌詞を感じるようになりました。1曲1曲に対しても、なんとなく作ったとかじゃなくて、本当に子供のような、大切な宝物みたいな気持ちになって。1曲1曲に向き合えているから、歌もまた違うような感じがします。
最初はリズム系に重きを置いて、途中で歌詞のほうに重きを置く時期を経て、最近はやっぱり両方大切だなと思うんです。いろんなバンドメンバーと演奏していく中で、それをすごく感じているので、両方を今できるように頑張っています。
──歌詞では、この母音を使っているからこそ、この音が映える、など考えながら制作することもあるのでしょうか?
さとう はい。最初にメロディを作るときに、あんまり歌詞をつけずにフェイクイングリッシュで作ることが多いんです。それが自然と気持ちいい音になっているので、それに合わせて歌詞の言葉を選んだりしています。
──「魔法」も、最初は英語のように歌って作っていったのですか?
さとう そんな感じでした。サビ前は、フェイクイングリッシュじゃなかったんですけど、《いいですか?》と言いたくて。歌詞を何回も書き直したんですけど、ここだけは絶対これにしようと決めていました。
──レコーディングは、最初から最後まで通して録っていきましたか?
さとう いつも通して録っているんですけど、この曲は最後にすごく高い音があるので、そこは丁寧に分けて録ったりしましたね。
──ヴォーカルテイクはどのように選んでいますか?
さとう 大体5回ぐらい歌うんですけど、ディレクターさんが“この行は1テイク目がいい”などメモしてくれているので、それを聴き比べて決めていきます。
──「魔法」で、特に意識して歌ったポイントはありますか?
さとう Aメロの《捨てられないな》とか、《涙のビーチで溺れてたけど》ってところです。けっこう音が低くなって、声の出し方が急に変わることに気を取られる部分なので、そこを気をつけようと意識して、歌詞カードにも書き込んでいました。
──アレンジに関して、希望を伝えるなどのやりとりはありましたか?
さとう 今回の曲は、最初のアレンジからガラッと変わったんです。最初はドラマの曲ということを意識して作ってくださって、J-POPっぽさを前面に出したアレンジだったんです。でも、私の声で歌うと普段の曲との違いが大きいと思ったので、“もうちょっとファンキーな感じで”とお願いしました。確か2回ぐらい話し合いをさせてもらったんですけど、最終的には会ってお話をしました。