【インタビュー】ヒグチアイ 新作『最悪最愛』から紐解く、歌にしかならないもの(撮り下ろし写真掲載)

2022.03.2

取材・文:鈴木 瑞穂(Vocal Magazine Web)
撮影:HayachiN

小説でも漫画でもない、歌にしかならなかったもの

──「悲しい歌がある理由」はピアノ弾き語りの一発録りだったそうですね。ピアノと一緒にレコーディングするのと、歌だけのときでは、音の感じ方や意識が変わりますか?

ヒグチ 全然違いますね。ピアノを弾いていると、やることがあるので安心する。でも、(歌だけで)立って歌うほうが声は扱いやすいです。足まで使えるので、“このやり方で出ないんだったらこのやり方で出そう”といった、(姿勢を変えたりする)選択肢がたくさん増える。座ってピアノを弾いて歌っていると、お尻から上までの感覚で出そうとするので、“これで出なかったらどうしよう”みたいな気持ちになっちゃうんです。ただ、ピアノがあると安心感がある。うん、どっちもいい面と悪い面がありますね。

──「悲しい歌がある理由」には、悲しみと向き合わせてくれる強さと背中を押してくれる優しさの両面を感じます。この曲にはどんな想いを込めましたか?

ヒグチ “悲しい歌を書いてしまうのはなんでだろう”っていう悩みがあったんです。“ヒグチアイの曲は悲しくなるから聴きたくない、つらくなるから聴けない”っていう声をちょこちょこSNSで見てて。本当だよねと思って(笑)。でも、自分でも悲しい曲なんか聴かないのに、なんでそういう曲を書いちゃうんだろうって思って、“悲しい曲がある理由”を本当に考えて、作ろうと思った曲です。

──この曲に続いて3ヵ月連続でリリースされた「距離」と「やめるなら今」も、それぞれの曲の中で、自分自身と真っ直ぐに向き合わせてくれる温かい心強さを感じました。ヒグチさん自身、例えば目を背けたくなるような現実でも“向き合う”ということは大事だと思いますか?

ヒグチ 思います。目を背けて良かったのは、その瞬間だけだなって思うので。何事も解決したほうが先に行けるので、そっちが結果的には楽だなと思って、向き合うほうが多いですね。

──言いにくいことも直接言えるタイプですか?

ヒグチ 言えないです。本当に言えなくてどうしようって思うときがありますけど(笑)。言えないから、自分で解決するのが上手になったんだと思います。

──その想いを歌詞に書くという部分もあるんですか?

ヒグチ でも、すごく嫌な人がいたとしたら、そんな人のことを曲にするのはもったいないなって思っちゃうので。うーん、とにかく悪い噂を流したりしますかね。ってそれは冗談で(笑)。いろんな人に愚痴を聞いてもらったりして、曲にはしなくなりました。昔は曲にしていたけど、なんかそんな人が形に残るのは嫌だなって思うようになって。その人じゃなくて、自分の気持ちをどうしたらいいかっていうところを曲にすることはありますけど、けっこう解決してから書くことが多いので、ちゃんと理性的に曲は書くようにはしてます。

──最後に、ヒグチさんとって「歌」とはなんでしょうか?

ヒグチ なんだろう、すごく苦手なことのひとつなので、曲を作れて、歌詞を書けて、ピアノが弾けて良かったなってすごく思います。自分のやっていることは、詩集にするものじゃないし、歌にしかならないものだと思うので。小説でもない、漫画でもない、歌にしかならなかったって考えると……うん、苦手なことのひとつだけど、やらなきゃいけないことのひとつだなっていうものだった。全然、ひと言じゃないですね(笑)。

──ありがとうございます。核心的なことを教えてもらえた気がします。バンドセットと弾き語りのライブもそれぞれ楽しみにしています。

ヒグチ ぜひ。会場に来ていただければ何かわかると思います。なんかアイツ大変そうだなって感じとか(笑)。自分の気持ちの面では、バンドは楽しいです。弾き語りは楽しくないです。弾き語りはどちらかというと自分と対峙するって感じなので。たぶんそれが伝わると思うので、ぜひ遊びにきてください。


リリース情報

4thアルバム『最悪最愛』
2022年3月2日(水)発売

■初回限定盤 [CD+DVD]PCCA-06116/4,950円(税込)
描き下ろしイラスト巻き帯仕様(作画:MAPPA)
短編小説『最悪最愛』収録

■通常盤 [CD Only]PCCA-06117/3,300円(税込)
短編小説『最悪最愛』収録


【収録内容】
<CD収録曲>
01. やめるなら今
02. 悪魔の子
03. 劇場
04. 縁
05. ハッピーバースデー
06. 距離
07. 悪い女
08. まっさらな大地
09. サボテン
10. 火々
11. 悲しい歌がある理由

<DVD収録内容> ※初回限定盤のみ付属
ヒグチアイ 5TH ANIV 独演会 [ 真 感 覚 ]
2021.11.26 atよみうり大手町ホール
01. 悲しい歌がある理由
02. 東京にて
03. mmm
04. やめるなら今
05. 前線
06. 備忘録
07. 劇場
08. 縁
アルバムご予約はこちらから:
lnk.to/higuchiai_CD

■法人別特典
音源ランダムDLコード付ポストカード
【TYPE-A】Amazon.co.jp
【TYPE-B】タワーレコードおよびTOWER mini全店、タワーレコード オンライン
【TYPE-C】全国HMV/HMV&BOOKS online
【TYPE-D】楽天ブックス
【TYPE-E】その他法人
DL音源:2021年11月26日(金) 東京・よみうり大手町ホールにて開催の
「ヒグチアイ 5TH ANIV 独演会 [ 真 感 覚 ]」より「悲しい歌がある理由」「やめるなら今」「劇場」

※ダウンロードできる音源はランダムで、上記のうちいずれか1曲です。
※ポストカード裏面にダウンロードコードが印字されます。
※ダウンロードには有効期限があり、2022年8月31日(水)までとなります。
※ダウンロード方法等詳細につきましてはポストカードへ記載いたします。
※タイプによりポストカードの表面絵柄が異なります。
※特典は先着の付与となりますので、なくなり次第終了となります。 予めご了承ください。
※一部店舗に取扱いのない店舗がございますので、ご予約・ご購入時にご確認ください。
※ECサイトでご予約の場合、特典付き商品をご希望の場合は必ず特典付きカートからご注文下さい。
(一部ECサイトでは予約済み商品がキャンセル不可の場合がございますのでご注意ください)

ライブ情報

◆ワンマンライブ情報
HIGUCHIAI band one-man live 2022 [ 最悪最愛 ]
2022年
3月11日(金) 東京・EX THEATER ROPPONGI
3月27日(日) 大阪・umeda TRAD
全席指定:前売 5,500円(税込)+1Drink
チケット一般発売中
e+  https://eplus.jp/higuchiai2022/
ローソンチケット https://l-tike.com/higuchiai/
チケットぴあ [東京] https://w.pia.jp/t/higuchiai-t / [大阪] https://w.pia.jp/t/higuchiai-o/

◆弾き語り全国ツアー
HIGUCHIAI solo tour 2022 [ 最悪最愛 ]
2022年
4月9日(土) 高松・LIVE HOUSE 燦庫 -SANKO-
4月16日(土) 広島・Live Juke
4月23日(土) 神戸・海辺のポルカ
4月24日(日) 福岡・ROOMS
4月28日(木) 金沢・もっきりや
4月29日(金・祝) 名古屋・BL cafe
5月1日(日) 長野・長野市芸術館 アクトスペース
5月6日(金) 京都・磔磔
5月8日(日) 東京・早稲田奉仕園スコットホール(講堂)
チケット一般発売中
https://eplus.jp/higuchiai-solotour2022/

*各公演、地方自治体/会場ごとの感染拡大防止ガイドラインに従い開催させていただきます。状況により、開場/開演時間が変更になる場合がございます。予めご了承の上ご購入をお願いいたします。


プロフィール

ヒグチアイ
平成元年生まれのシンガーソングライター。2歳のころからクラシックピアノを習い、その後ヴァイオリン・合唱・声楽・ドラム・ギターなどを経験、様々な音楽に触れる。

18歳より鍵盤弾き語りをメインとして活動を開始。2016年、1st ALBUM『百六十度』でメジャーデビュー。「FUJI ROCK FESTIVAL」、「RISING SUN ROCK FESTIVAL」など大型フェスへの出演も果たす。2022年、TVアニメ『進撃の巨人』エンディングテーマに起用された「悪魔の子」が、世界中のランキングを席巻し大ヒットを遂げた。

メロディアスに歌うようなピアノに乗せた、まっすぐに伸びるアルトヴォイス。独特の視点で綴る歌詞世界は、ありふれた日常の風景を短編小説のようにドラマチックに昇華させる。

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