取材・文:鈴木 瑞穂(Vocal Magazine Web)
“リード曲にしたい!”ってビビッときました。歌詞の通り《イナズマが走った》感じです。
──1曲目の「水色とセーラー服」は疾走感のある“THE・青春”というイメージの爽やかな曲で、アルバムの初っ端からグッと惹きつけられます。
浜口 すごく華やかな1曲でイントロのインパクトも強いと思うので、アルバムのど頭から掴みになる曲を考えたときにこの曲しかない!ってぐらいの勢いで1曲目にしちゃいました。
──力強い歌声を基本にしつつも、細かい歌い回しが印象的で、例えばサビの《ハロー》の反復フレーズは、1回目は強く、2回目はファルセットで儚く歌っています。こういったアプローチは自分で考えているんですか?
浜口 ボイトレの先生と2人で話し合って決めていきました。そういう部分はひとつひとつ違う表情で歌いたいなと思ってやっています。
──伸びやかな歌声の中に細かくビブラートを入れていますよね。
浜口 これは完全にクセですね。自分が気持ちよく歌ったときにああなっちゃうって感じです(笑)。
──続く「ラストラブレター」は、シャッフルビートのキラキラした曲調の中で、サビの《「あっ」って》という擬音語に重なるコーラスが、ゴスペルのような豊かな広がりを感じさせます。
浜口 このコーラスワークは一緒に曲を作ったSUNNYさんが提案してくださったんです。華やかな感じにしたかったのでコーラスワークをいっぱい入れました。コーラスはすべて僕の声で録っています。3つ4つぐらい声を重ねるということも今までしたことがなかったので、新しくてすごく面白かったです。
──アルバムのリード曲「寝ても覚めても」は、ノスタルジックなメロディと“寝ても覚めてもまた君に恋をする”というロマンチックな歌詞で、心がじんわり温かくなる1曲です。
浜口 曲を作ってる時にポロッと歌い出して最初にサビが出てきたんですけど、その時点で“リード曲にしたい!”ってビビッときました。歌詞の通り《イナズマが走った》感じです。何年も何十年も愛される楽曲になってほしいなという想いがありますね。
──特にビビッ!と思うフレーズを教えてください。
浜口 ラストのサビがまるまる全部大好きです。この曲は、普段の自分だったら書けないような言葉がスラスラ出てきたんですよね。なので、良い意味で距離感が近くもあり遠くもあり、そして最後はちゃんと寄り添ってくれるという1曲になりました。
温かい曲が好きなので、言葉ひとつひとつを大事に歌いたい
──「doubt girl」はエッジの効いたギターサウンドとリズムの複雑な変化が病みつきになる1曲です。リズムをとるのは難しくはなかったですか?
浜口 他の曲と雰囲気がまったく違うし今までになかったテイストなので、難しかったですけど、すごく楽しかったです。もう感情をぶつけるのみだと思って、女性特有の怒りだったり、男性特有の謝罪だったり、そういったところをうまく歌で表現できたかなと思ってます。
──《SOLDOUT告知なんていい〜》以降、あえてメロディラインから外れて“しゃべり調子”になっていく歌い方がユニークですよね。
浜口 アコギで歌っているデモの時点からイメージは決まっていて、そこから形にしていきました。レコーディングはちゃんと表情がつくよう、部分ごとに録りましたね。
──テイクはどのくらい録りましたか?
浜口 そんなにテイクは重ねなかったかもしれないです。こういう粗い感じの曲のほうが、パッと勢いで行けたりするので。逆に「ラストラブレター」は忙しい曲で、言葉もせわしなく詰まっていて難しかったです。自分の中で“この1行はこういうイメージで歌う”というのはあらかじめ決まっているので、納得するまで録っていきました。
──アルバムラストの、歌とアコギを中心とした“素”の音が際立つ「ゆれる」では、冒頭に入る環境音(アコギを構える音)が楽曲の世界観をより引き立てています。スタジオでセッション的な感じで録ったんですか?
浜口 ここは別録りで、家感を出したくて、環境音だけ別に録りました。曲に入ってからは普通にレコーディングしましたね。
──特にこの曲では浜口さんのハスキーで優しい歌声にじんわりと包み込まれます。声の作り方で“息を多めに入れる”などこだわっている部分はありますか?
浜口 温かい曲が好きなので、言葉ひとつひとつを大事に歌いたいというのはあります。自分が一番歌いたい歌い方で歌ったらああなるというだけで、息を乗せるとかはあまり気にしていませんね。この曲は自然体な感じで、家で歌っているような感覚で歌いました。
──改めて、浜口さん的なアルバムの聴きどころをお願いします。
浜口 初のフルアルバムで、全11篇のドラマチックなラブストーリーが詰まった1枚になっていて、ひとつひとつにストーリー性があるので、最後まで飽きずに聴いてもらえるんじゃないかなと思います。いろいろな場面がありますし、大いに自身と重ねて聴いてもらいたいなって思ってます。