【インタビュー】YU(I Don’t Like Mondays.)、『ONE PIECE』主題歌で魅せた新しい歌唱表現。詞に込めた人生の挑戦と葛藤
取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine web)
僕は歌い回しをコンディションによってもけっこう変えるんですよ。ライブでは昨日ファルセットだったところを地声で歌ったりとか。
──曲の歌い回しについても聞かせてください。今回は、あえてグルーヴィには歌わずストレートに歌われているように感じました。歌唱アプローチはどのように考えていきましたか?
YU ストレートなアプローチを心がけて、突き抜けるイメージで歌っていきました。でも、明るいだけの前向きな曲ではないものを作りたくて、2番は葛藤みたいなものを表現したかったので、その雰囲気をヴォーカルワークでどうやって出すかというのを意識しながら作りました。じゃないと自分ぽくないというか。
──ラスサビの《暗闇の蹴っ飛ばして》のところは強い意志をイメージさせるコブシの効いた歌唱になっていますよね。
YU 後半に向けて盛り上がるような感じで、ちょっと真似したくなるようなものにしたいなとは思いました。この部分はスタッフにもよく真似されてます(笑)。
──Aメロのリズムアプローチが1コーラス目と2コーラス目で変わっていますが、歌唱の変更点はありましたか?
YU トラックを聴きながら歌うので、基本的にはそれに寄り添う感じで。そういう意味では2番のほうがちょっとグルーヴを意識していますね。メロディはほぼ一緒なんでノリを変えるという意味で楽器隊も変えてるんで、僕もその変化を意識して録りました。
──今回、サビの高音をファルセットではなくて地声で行ったのはあえて?
YU そうですね。ファルセットだときれいになり過ぎちゃうし、突き抜ける勢いを大事にしたかったところなので地声で。……高いですね、あれ(笑)。男性だとすごく高いよな〜。
──地声の高音は得意ですか?
YU いや……それが大変でしたね。デモの段階では相当キツかったんですけど、本RECはその2〜3ヵ月後でその間にライブとかもあったので、ちょっと地声のレンジを広げてから録りましたね。
──レンジを広げるというのはボイトレとかでしょうか?
YU ボイトレは定期的にちょこちょこしてるんですけど、それ以外にも自主ボイトレというか、地声で高音やミックスボイスを使ってファルセットと地声の間を行き来するところは強化しておかないとちょっと歌えないなと思ったので、普段から出す意識をしていました。
──具体的にはどういう練習をされたんですか?
YU 例えば誰かのカバーでも、今までファルセットで歌っていたところをあえて地声で行ってみるとか。あと、意外とレコーディングで決めた“ここはファルセット”、“ここは地声”という歌い回しを変えない方も多いと思うんですけど、僕は自分の曲の歌い回しをコンディションによってもけっこう変えるんですよ。レコーディングは決めてやるんですけど、ライブでは昨日ファルセットだったところを地声で歌ったりとか、地声のところをファルセットとか変えてます。……あまり気づかれていないかもしれませんが(笑)。
──レコーディングは歌い方をあらかじめ決めて臨むんですか?
YU いや、そんなに決めてはいないですね。あんまり決めていくとそれの清書になっちゃうんで。プリプロの段階である程度は決まるのですが、ブースでレコーディングしながら何パターンか決めていって、メンバー含めてブースの外から聴いてもらってディスカッションしながら進めていきますね。この曲もそうかな。
──メンバーの方からのディレクションは?
YU めっちゃしますね。うるさいよって思うぐらいするときもあります(笑)。
──ディレクションが一番くるのはどのメンバーからですか?
YU 一番してくれるのはSHUKIかな。でも、してくれないと自分ではわかんなくなっちゃうんで、こっちのほうがいいよって言ってくれてありがたいです。あと迷ったときはプロデューサーのEIGOさんにも客観的にどう思います?って意見をもらったりします。
──Twitterに掲載されていた「MR.CLEVER」のREC風景では歌詞カードに書き込むシーンがありましたが、どんなことを書いてるんですか?
YU ずっと歌っていると“ここは息苦しくなるな”とかがわかるのでブレスの位置や、意外と録ってみたら“ここは張り上げたほうがいいな”とかを書き込んでます。
──文字でがっつり書くんですか?
YU いや、書かないです。ピッと印で“ここは上げる”、“ここはファルセット”とか、ちょっとピッチを気にしながら歌ったほうがいいところだけチェックしたり。
──テイクは大体何回くらい録りますか?
YU ぶっ通しで何回か歌って、ヴァースごとに録っていく感じですね。その中で良いのがあれば最初から録るといった感じで、レコーディング自体は1日です。
──レコーディングの前に発声方法のルーティンはありますか?
YU 自分だけで声を出していてもチューニングはできないので、ピアノでやるか、YouTubeで検索して出てくるもので声を出してから録ってます。
昔は朝走ってからレコーディングしていたこともあるんですよ。スポーツの場合って一番いいコンディションで挑んだほうが良いパフォーマンスが出るじゃないですか。だけど歌が難しいなと思ったのは、あるときすごく喉がイガイガしていて全然声が出なくて、午前中からラジオの生ライブがあってガラガラの状態で歌ったんですよ。“これはやばい……”と思っていたら母親がたまたまそのラジオを聴いていて、“今日めちゃめちゃ良かったよ!!”って言ってくれて……難しいな〜と思いました(笑)。音楽ってホントわかんないと思って。
真面目にやり過ぎるときっとその真面目な雰囲気が歌にも出るんですよね。だから変にカッチリし過ぎず、余白を残してあげたほうが現場でそれが出る。それに気づいてからは“超コンディションを整えてから歌う”というのをやめましたね。
──普段、体づくりや習慣にされていることは?
YU 今は前ほどはやってないですけど、週1でちょっとしたジムトレーニングぐらいです。
──控えている食べ物とか、喉ケアで気をつけていることはありますか?
YU お酒を飲んだら歌わないと決めてます。歌わなきゃいけないときはしょうがないですけど、喉には悪いですね。
──ライブ前は飲まないとか?
YU 僕は飲まないです。多分弱くて。なかには飲んでも声出る人も全然いるんで、それがすべてじゃないですけど、僕の場合はお酒飲んで歌って次の日ガサガサになるタイプなので、これはダメだなと(笑)。ストイックだから飲まないというわけじゃなくて、キーを当てるのが辛くなってそのライブを楽しめなくなってしまうので飲まないだけです。