【インタビュー】コニー 後編〜”歌ってみた”をiPhoneで録音する方法(YouTube動画連動)

取材・文:永島聡一郎(Vocal Magazine Web)
撮影:八島 崇(製品写真を除く)


「rain stops, good-bye」を録音

それではここで、コニーが特別にヴォーカル・マガジン・ウェブのために製作してくださった”歌ってみた”動画、「rain stops, good-bye」(作詞/作曲:にお)のカバーをご堪能いただこう。

この曲は2008年に投稿されたボカロの名バラードで、これまでに多くのヴォーカリストにカバーされてきた。オリジナルの動画はニコニコにアップされているので上記の原曲URLをぜひチェックしてほしい。

なお、多くのボカロ曲と同様にこの曲のオケも公開されているが、今回はコニーの友人でもあり、オリジナル楽曲のプロジェクトにも関わっているナオがアコースティックギターでアレンジを施したオケでの歌唱となった。

録音機材については前ページで紹介があった通り、iPhone+オーディオインターフェース+マイクというシンプルなもの。録音用のアプリはiPhoneに付属するGarageBandで、アコースティックギターのオケも事前にその中に取り込まれていた。

コニーはオケを再生しながら2〜3回、通して歌っただけですぐに本番に突入。録音はあっけなく終了したが、その完成度の高さは動画をご覧になった通りだ。どうすればこのような歌唱ができるのか。録音直後のコニーにお話を伺った。


バラードにおける強弱の付け方

──「rain stops, good-bye」は2008年の投稿ですから、長年愛されているボカロの名バラードということになりますね。

コニー まさに名曲ですね。私自身が歌う回数が多い曲トップ3に入ると思います。とはいえ、前回歌ったのは2年くらい前なので、今回は久しぶりでした。バラードって最近のボカロシーンでは少なめですが、2008年当時はボカロによるバラードの全盛期だったように思います。その中でも「rain stops, good-bye」は、“あーなんていい曲なんだ!”と思った1曲ですね。

──キーは原曲と変えていらっしゃるんですか?

コニー カラオケのキーで言えば原曲からマイナス5にしています。もう少し音楽的な言い方をすると2音半下げているということになりますね。ボカロ曲は女性の音域に合わせたものが多いので、そのままだとどうしても高さが厳しかったりするんです。ですから、キーを変えてアレンジし直したりして、聴き苦しい歌にならないようにしています。

─歌唱にあたって表現の面で特に意識された点はありますか?

コニー この曲に限ったことではないのですが、私はバラードを歌う時に音量の強弱で感情を表現するようにしています。それは今回も同じですが、あえて1番と2番で強弱の付け方を変えました。それに伴って2番ではメロディにアレンジも加えています。

──確かにサビのメロディを2番では原曲から少し変えていらっしゃいますね。

コニー そうなんです。1番は私がバラードを歌う時によく行なう、ニュアンスを重視した音量コントロールを行なっています。あまり声を張らず、サビでの語尾処理も口の中で広がるようなイメージでふわっと余韻を持たせました。夜中にすぐ近くでアコギを弾きながら歌っているような雰囲気と言えば伝わるでしょうか。近所迷惑にならないような感じです(笑)。

──おっしゃる通り、1番は声量をものすごく抑えているという印象を受けました。

コニー はい。それに比べて2番はギターの音数も増えてくるので、それに合わせて歌い方も変化させています。私は本来、原曲を大切にしたい人間なんですけど、”歌ってみた”の遊び方の一例としてメロディをアレンジしてみたんです。ただ、ちょっとやり過ぎましたね。ここまで変えるとうるさいですし、くどいです。結果、悪い例になりました(笑)。ただ、1〜2ヵ所だけちょっとメロディをアレンジしてクセを付けるというのはよくやります。

─最後のサビを繰り返す部分は、コニーさん本来の声量を出して歌い上げているところから、グっと音量を落としてささやくように歌う、いわゆる“落ちサビ”への流れが素敵ですね。

コニー ここは音量差で言えば数十倍は違うと思いますが、サビと落ちサビの対比をはっきり付けると歌の振り幅が広がります。こういう小さな声はカラオケなどだと、どうしても聴こえなかったりするのですが、録音が前提であればあとから音量を調整することできれいに整えられるんですよね。

──そう言えば、録音前に歌っていらっしゃる時、語尾を気にされているようにお見受けしたのですが、あれは何が問題だったんですか?

コニー 語尾のヴィブラートを何度かミスってたんです(笑)。ヴィブラートはピッチを細かく上下させて声に揺らぎを作るテクニックですが、最後の音は下がって終わったほうがきれいに聴こえると思っているんですね。高い音で終わると跳ね上がったようなニュアンスになって、特にバラードでは良い雰囲気にならないんですよ。でも、そのためには長く息を続かせないといけないから難しいんです。

──今回、久しぶりに「rain stops, good-bye」を歌った感想をあらためて教えていただけますか?

コニー 唯一無二の曲ですね。ボーカロイドの世界のみならず、日本の音楽の歴史の中にしっかり残っていく1曲だと思っています。におPさんは天才ですね。そういう天才の方々をリスペクトしながらカバーさせていただける”歌ってみた”って本当に面白い世界だと思います。


教えて!ヴォーカリストの“こだわり”

最後にヴォーカル・マガジン・ウェブ定番のヴォイトレ系インタビューをお届けしよう。コニーさんは日々、どんなトレーニングやケアをされているのかチェックしてみてほしい。

●トレーニング
毎日ではないんですけど、歌う前に行なうトレーニングがあります。これは皆さんにもぜひやってみてほしいです。もともとはエリックさんというヴォイストレーニングの先生がYouTubeで紹介されている内容なんですが、私が知ったのはニコニコ動画です。翻訳字幕を付けて転載されている方がいるんですよ。

そのトレーニングはというと、「ドレミファソファミレド」で発声練習をするというのはどこかで観たことがあるかもしれませんが、それをヤ(Ya)とガ(Ga)で発声するんです。「やがやがやがやがや」と。しかも、その時には口を開けて、舌を出して、アゴを固定します。舌は出すけどアゴは動かさないのがポイントです。舌を出すことによってノドが開くんですね。

これを1〜2分やっただけで、低い声が身体の中に響いてきます。私の一番のオススメです。エリック先生の動画をぜひチェックしてみてください。

●飲み物
昔はオリーブオイルを飲むとか、マヌカハニーをなめるなど、いろいろ試しましたけど、結局はノドを湿らせておくことですね。1回歌ったら、すぐに水を口に含みましょう。理想は水蒸気です。

●ノドのケア
私は2020年、ノドにポリープができて手術したんですよ。それまで自分のノドはめちゃめちゃ強いと思っていたんですね。どんなに歌っても、かれることはほぼなかったので。

でも手術してからはノドが疲れるまでが短くなりました。手術して1年経って、ようやく歌えるようになってきたなという感じです。その経験から言えば、ノドは壊す前に優しくしておくことが大事です。ノドが疲れた時はすぐに歌うのをやめましょう。とにかく無理をしないことです。

あとは湯気もくもくで換気扇も回さずにお風呂に入るとか、水を飲むとかですかね。ノドを湿らせておくことが重要なので、理想は睡眠時もマスクをしていればベストだと思います!



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プロフィール

コニー
1992年11月13日生まれ。山形県出身。2010年2月11日にDECO*27の楽曲「キミ以上、ボク未満で“歌ってみた”シーンにデビュー。ボカロからJポップまで幅広い楽曲をカバーして人気を博す。2016年からはインターネットミュージックシーンのアーティストを一堂に集めたサーキット型ライブハウスフェス、「i-STAR FESTIVAL」を主催。2021年にはオリジナル曲制作のプロジェクトを始動させ、11月に第一弾となる楽曲「フラット」を、12月には第二弾となる「Wonderful Life」を2ヵ月連続リリースするなど、精力的に活動している。


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