【インタビュー】w-inds. 2人の歌声が生み出す新たな歌詞世界と鋭敏なサウンドの響き(撮り下ろし写真掲載)

取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)
撮影:菊地英二

“ああもう終わっちゃった、もう一回聴きたい”って思ってもらいたい

──「With You」ではエレクトロなアップサウンドに合わせて、ヴォーカル・エフェクトも効果的に使っている印象を受けました。

 「With You」ではオクターブで厚みを出してるんですけど、実は今回のアルバムは今までよりかけてなくて、わりと生っぽく聴かせるようにしてるんですよね。やっぱりメッセージ性が強かったんで、しっかりと言葉が聴こえるよう、全体的に自分たちの声はヴォーカル・エフェクト少なめを意識しましたね。

──レコーディングの時はヴォーカル・エフェクトをかけずに録りますか?

 EQで自分の録る時の声を聴きやすくするぐらいですね。

──1回つるっと録って、部分的に録り直していくんですか?

 涼平くんの場合はつるっと歌ってもらって、そのあとAメロから何回も歌ってもらって、良いテイクを選ぶ。それでもできあがらなかったら、“もう一回ここだけお願い”とか、段階的にですね。僕も同じで、自分で一回歌って、なんとなくニュアンスを掴んで全体像が見えたあとにAメロから録っていく感じ。

──歌い回しはそれぞれで決めてきますか?

 涼平くんは最近決めてこないですよね。

千葉 そうですね。前は決めてくる感じだったんですけど、その場でニュアンスの違いをもらうと、けっこうしっかり入れてきちゃってたんで、それに引っ張られちゃって(笑)。それはあんまりだなあと思って、2人になってから決めていかないですね。

 メロディだけ覚えてきてもらって、ニュアンスは録りながらやる感じが多いですよね。

──仮歌は歌詞入りですか?

 あんまり歌詞ないよね。

千葉 ないね。

 録る時に、歌詞をこういう風に乗せますというのを覚えてもらって。

千葉 “あっ、こっちかぁ”みたいな(笑)。

──現場で初めて歌詞を見るんですか?

千葉 歌詞はもらってるんですけど、こういう乗せ方かなって自分で想像しておくんです。

 歌詞が乗った完成形の仮歌はないわけですもんね。たまに僕が言ったのと違う乗せ方もあって、“あっそれいいね! そっちでいいよ!”みたいなこともあって。

──クリエイティブですね。ちなみに、レコーディングに使用したマイクは?

 今回はSONY C800G9Xを使ったんですよね。自分の声には合わないなと思っていたんですが、せっかく持ってるなら使おうと思って、ほぼそれで録りましたね。

──どんな印象なんですか?

 女性の声やR&B系にはすごく良いんですけど、僕の声だとトラックが重なった時の抜けが個人的にはあんまり好きじゃなくて。でも涼平くんにはすごく良かった。いろんなマイクが家にあるんで、曲によって使い分けてますね。

千葉 録って、“やっぱ違うからちょっと変えていい?”みたいなのはあるよね。

──好きなマイクはありますか?

 ちょっと高いんですけど、MANLEYのReference Cardioidは、自分が持っている中でコスパ最強なマイクだと思ってます。30万円くらいするんですけど、質感は60万円くらいの価値があります。それも持ってますね。

──抜けが良いんですか?

 めちゃくちゃ良いですよ。J-POPっぽい歌には抜けが良すぎるかもしれないんですけど、HIPHOP、R&B、ダンスミュージックとかはめちゃくちゃ良いですね。

──今回のアルバムでは“3分間”の世界観で勝負している曲が多い印象ですが、逆に長い曲はあまりやろうと思わないですか?

 それは思わないです。2分50秒で終わりたいぐらいですね。

千葉 だいぶタイトだ(笑)。

 もう音楽の聴き方ですよね。サブスク・サービスによって、時間を短くしてたくさん聴いてもらおうという考えも普及してきて、僕もそれは間違いじゃないと思います。あとは昔から個人的に “もうちょっと聴きたかった”で終わるのが好きなので、そういう意味でも3分だと“もう1回聴こう”ってなる部分があると思う。

──まさに「DoU」で思いました。あれ、もう終わっちゃったの!?って。

 そうなんです、それが狙いなんですよ。

──歌でシュッと終わる楽曲が多いのもそういった狙いが?

 そうですね。特に昔の日本の音楽では、イントロでどれだけ感情を揺さぶれるかという感じでしたけど、今はイントロで切られることも全然あるんで、いきなり歌といった引きの強いものを出して、聴いてもらえるアプローチを大切にしてます。エンディングもダラダラやるよりパッと終わって、“ああもう終わっちゃった、もう1回聴きたい”って思ってもらいたいなというのが聴き方としての戦略ですね。

──アルバムだと“あれ、似た感じの終わり方が続くな”と、怖くなる部分はなかったですか?

 あはははは! 僕は正直、もうアルバムで聴くとはあまり思ってないです。もちろん聴いてくれる人はいて、そこも意識してます。でも、大切にする順序としては、“1曲1曲をちゃんと成立させたうえで、アルバムとしてはこうなりました”というほうが、今の作り方としては正しいんじゃないかなと。なのでそういった不安はあまり感じないですね。

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