【インタビュー】w-inds. 2人の歌声が生み出す新たな歌詞世界と鋭敏なサウンドの響き(撮り下ろし写真掲載)
2021.12.6
取材・文:鈴木瑞穂(Vocal Magazine Web)
撮影:菊地英二
今、ギリをだいぶ攻められてます。
──アルバムの収録にあたり、涼平さんが改めてトレーニングしたことはありましたか?
千葉 レコーディングでひたすらやったって感じだよね。
橘 できるまでやるんでね(笑)。
──どのくらいテイクを録るんですか?
千葉 一番やってるのはやっぱり「Strip」かな?
橘 そうですね。一回録って、あとあと編集している時に、なんか違うなぁって思ってもう一回録り直したので、数えてはいないんですけど。“もう一回! じゃあもう一回!”みたいな感じでずーっと(笑)。
千葉 結果、笑っちゃいますよね。“(次も)行けっか……?”って(笑)。
橘 “行けまーす!”って言って、僕がやらせるみたいな(笑)。
──とても柔軟な制作スタイルですね。
橘 フレキシブルで作りやすいですね。気になった部分があればすぐ録り直せるし、それは自分たちでやっているがゆえの良かった部分だと思います。
──慶太さんはコンディションを保つためにやっていることはありますか?
橘 調子悪い時ほど練習します。調子悪い時にステージ上でできなかったらダメじゃないですか。調子悪い時に無理してプルし過ぎちゃう人もけっこういるんで、そういう時こそ、一番負担をかけずにちゃんと成立させる発声をやるのが一番だと思うので、逆に練習して感覚的に身につけるようにしてます。
──今回のアルバムは慶太さんが全曲をプロデュースされていますが、プロデューサー目線で、涼平さんの歌声の旨味はズバリどこでしょう?
橘 やっぱり艶のある声質がすごく特徴的なので、逆にグルーヴがくどくなり過ぎないように意識しています。歌の語尾を切ったり、頭のタイミングでリズムをとって歌のグルーヴを作るんですけど、やり過ぎると海外っぽくなり過ぎちゃう。逆にJ-POPではそれがあまりなく全部繋げて歌うのが特徴的で、涼平くんの歌のディレクションではそれらを混ぜて、繋げて歌う中にもアクセントやアタックがあったり、音が減衰していく部分を作ったりを意識してやってます。
──逆にさらに伸びしろを感じている部分はありますか?
橘 キーで言うとけっこう高いところも出るんですけど、涼平くんのしゃべり声的にもうちょっと出るようになるんじゃないかなと思ってます。それはずっと言ってますよね。
千葉 今、ギリをだいぶ攻められてます。
橘 あはははは!
──「EXIT」でも最後のサビ前で高いところがありますよね。
千葉 そうですね、アルバムでもキー的にギリを攻めたものが何曲かありますね(笑)。
──今回のアルバムで特に涼平さんが歌唱面でチャレンジングだった曲はありますか?
千葉 「EXIT」の発声はけっこうチャレンジングだったかな。キーというよりは、声の作り方。録りながら、“(僕)こんな感じかな?”、“(慶太くん)それだと強すぎるからちょっと抜いてみて”、 “(僕)あ、このぐらいね!”というやり取りがあって、仕上がったものを聴いた時に“なるほど。このぐらいのニュアンスでこう聴こえるのか!”と僕自身も学ばせてもらいました。
──エレクトロなサウンドの印象でしたが、発声はどんなアプローチを?
千葉 ちょっとダークで、ダーティな感じというか。
橘 汚す感じですね。
千葉 僕の声自体は、自分で言うのはあまり好きじゃないんですけど(笑)、わりとクリーンで、ダーティに持っていくのが得意ではない質感をしているので、正反対のことをイメージしてやることはチャレンジでしたね。
──喉をつぶすとかそういう意識なんですか?
橘 そこまではやらないですね。それをやるとくどくなっちゃうというか。
千葉 そのバランス感を、やりながら落とし込んでいった感じです。
──今後より歌唱パートも増えていくと思うんですが、最近力を入れていることはありますか?
千葉 フレーズの終わり方、語尾の抜き方は、今回のアルバムを中心にすごく勉強しながらだったので、最近一番気にしてることではあるかな。
──アルバムではラップ、フェイク、高音の地声、ファルセット……と慶太さんの多彩なヴォーカル表現に出会えることも醍醐味のひとつですが、今作で特に磨きをかけた表現はありますか?
橘 ラップの表現はこれまでは2人に任せてた部分でもあり、あまりやってこなかったんですが、実は僕、ずっとラップが好きで。デビュー当時からめちゃくちゃHIPHOPを聴いていたのですが、やる機会があまりなかったんです。そういう意味では今回20年越しというか、自分の好きな要素を出すことができたアルバムなんじゃないかな。
──力強くてタイトなラップの中にリズム感の良さも感じます。
橘 僕、歌は基本的にはリズムだと思ってて、もちろん発声も大切なんですけど、ラップも歌もリズムはめちゃくちゃ意識してますね。