【単独インタビュー】スキマスイッチ大橋卓弥が語るニュー・AL、ヴォーカリストとしてのビジョンと“届く歌”の核心

インタビュー:田代 智衣里(Vocal Magazine Web)

声ってすごく不思議で、笑いながら歌ってると笑ってるんですよね

──『Hot Milk』の「青春」では、歌声と同時に表情まで思い浮かぶような大橋さんの声の魅力を改めて感じました。声の表情・表現について、現在までに変化を感じたことはありますか?

大橋 ありますね。それこそ今「奏(かなで)」の音源を聴き直したりすると、今はそういう風には歌えないなと思うので。当時は自分の中での精一杯だったんです。今のほうが表現力としては豊かになっている気がするんですけど、あの当時の艶っぽい歌声とか、太さとか、そういうものを今は出せなくて。今考えるとあの歌い方も当時しかできなかったと思ったりはしますね。

「青春」の表情は、シンタくんが“もっと口角上げた感じで”と。やっぱり声ってすごく不思議で、笑いながら歌ってると笑ってるんですよね。実際に笑っていないと笑った声にはならない。それは今まで活動してきた中でシンタくんもわかるので、もうちょっとにこやかな声にしてほしいなって時は、実際に“もうちょっと口角上げて”って言われますね。“口角上がりすぎ”もありますし。

──大橋さんの歌はライブ会場のうしろの席で聴いていても心のど真ん中に届いて、響きもすごく豊かで。こんなに素晴らしい人が同じ時代に生きているなら、できるだけライブに足を運びたいと毎回思います。歌い手として、ライブでどんなふうに歌が届いているのか考えることはありますか?

大橋 初めてアリーナでコンサートやった時も、リハ中にどのくらいの音なのかなって一番うしろの席まで聴きに行きましたね。ただ、ステージで歌っている時の自分の歌は客席ではどうやっても聴けないので、すごく歯痒いんですけど、楽器の音だけでもと思ってうしろまで聴きに行って。

そうしたら今まではホールやライブハウスでやってたので、全然音の響き方が違って。感動したのと同時に、もうドラムの手の動きと音のディレイ(遅れ)もすごいし、“あ、これは僕らの主戦場じゃないな”と思いましたね、僕は。だから音質も含めると、自分のこの音で届けたいっていうベストはホール規模くらいまでかなぁと思います。

──歌が人に届く瞬間の感覚って、デビュー前の歌い始めた時から自然とありましたか? ずっと歌い続けて、ぐわっと変わった瞬間があったのか。

大橋 最初はなかったでしょうね。それも玉置さんじゃないですかね。玉置さんの影響力はすごく大きいので。自分の感覚と、聴いてくれている人たちの感覚が一致しているのかはわからないですけど、自分としてはやっぱり、歌の中で笑ったり泣いたりっていうのを表現しているつもりなんですね。

だからその一番笑っている時に、お客さんがそう感じてくれていればいいなと思いますし、歌の中で泣いている瞬間に、もらい泣きしちゃいそうになる瞬間がお客さんにもあるのか。それができていたら、自分の表現が届いている証拠かもしれないですね。

──届く歌の核心を教えていただいたように思います。

大橋 もらい泣きとか、つられ笑いとか。なんか感情ってそういうもんなのかなって。バイオリズムが合うというか、なんかこう、ね。合わさる瞬間があるんじゃないですかね。

──今回『Bitter Coffee』最後の曲は、「あけたら」です。昨年リリースの『スキマノハナタバ ~Smile Song Selection~』に収録され、『スキマスイッチ TOUR 2020-2021 “Smoothie”』アンコール最後の曲でも歌われていたのが印象的でした。『Bitter Coffee』の最後の曲に選んだのは、どのような思いがありましたか?

大橋 正直、「あけたら」は今回収録しようかどうか迷ったんです。一度違う作品で発表したのでどうしようかなと思っていたんですけど、オリジナル・アルバムにも入れたいなって考えた時に、やっぱり『Bitter Coffee』の最後でしたね。すごく個人的な歌でもあるし。「あけたら」は唯一、自粛期間中に書いた曲。一曲だけなんですけど。

(自粛中は)時間がいっぱいあるのに曲を書く気になれなくて。でも、こういう状況でもせっかく音楽家として生きているんだったら、その時の自分を記録しておきたいなと思って書いた曲です。だから本当に自分に向けて書いているような曲なんですよ。実は全然お客さんのほうを向いてない曲で。

でも、この曲を書くことで、なんか曲を書く気になれないなって言っていた自分から、ちょっと解き放たれた感じがあった。だからすごく大事な一曲ではあるんです。これはやっぱり最後だなって感じでしたね。

──最後になりますが、ニュー・アルバムの聴きどころをお聞かせください。

大橋 今回は2枚同時発売にしたんですが、こうしたのにはいろんな理由があるんです。ひとつは今、音楽がすごく手軽に聴ける時代で、それは“聴けちゃう時代”って言い方もあると思うんですけど。例えばみんなが持ち寄ったものがテーブルにいっぱい並んでいて、好きなものを持っていって、曲を聴いて、聴き終わったらここに戻していくかのような。そんな音楽の聴き方かなって思うんですけど、僕らの頃ってもっと“所有している感覚”があったんですよね。

CDショップに行って、レコードショップに行って、CDを買って帰ってくる電車の中で“歌詞カードを先に見ようか、いや、でも帰って音楽と一緒に歌詞カードを初めて捲るのを楽しみにしようか”とか考えながら。でも、これはもう誰のものでもなく、自分のものだっていう感覚がすごくあったんですよね。今はそういう感覚が少なくなってきていると思うので、少しでも“音楽を自分のものとして所有する”っていう感覚を持ってもらえたらいいなと思って、CDで2枚同時発売にしたんです。

僕らの音楽にあんまり触れたことがない人たちは、タイアップで世の中に流れている曲が多かったりする『Hot Milk』から。例えば“CMで聴いたことある曲だな”と思ったら、それが入っている『Hot Milk』を買ってみようとか、そんなきっかけになればいいなって。

僕らの音楽をよく聴いてくれている人たちは『Bitter Coffee』のほうが気になりますって言ってくれたりします。僕らの濃い部分が『Bitter Coffee』には入っていて、ちょっとわがままをたくさん散りばめたっていう感じですかね。わがままとかエゴとか、自分たちの中で流行っているサウンド感だったり音楽だっていうことなんですけど。

だから『Hot Milk』から入ってもらって、『Bitter Coffee』に行ってもらってもいいですし。だからといって『Hot Milk』のほうはポップで、『Bitter Coffee』のほうはマニアックという意味ではなくて、ポップさとマニアックさの両方が入っているような2枚になっています。

お友達が『Hot Milk』、じゃあ僕は『Bitter Coffee』みたいに買って、“聴き終わったらちょっと貸してね”とかって。僕らの時代はそういう文化だったので。学校でCDを貸し借りして、お薦めのCDを貸してあげたりとか。そういうことをしてもらえたらいいなと思いますね。いろんなジャンルの音楽がいっぱい入っているアルバムになったと思うので、何かしら好きなタイプの音楽はあるんじゃないかなと思います。

──12月22日(水)『スキマスイッチ”Soundtrack”』日本武道館公演は、どんなライブになりそうですか?

大橋 その日限りというか、書き下ろしの映像作品と音楽を融合させようと思っています。いつもやっているツアーとは違うものにできたらいいなと思って企画を立ち上げたんです。今、絶賛準備中なんですけど、これがうまくいったら、ちょっと新しいスキマスイッチが見れるんじゃないかな。

音楽を聴くだけじゃない、ちょっと違った楽しみ方もできるコンサートになるんじゃないかなと思います。


リリース情報

スキマスイッチ『Hot Milk』
【初回限定盤 / CD+Blu-ray付】
Blu-ray「Documentary of “Recording” 」
Hot Milk & Bitter Coffee両方のレコーディングドキュメント+メンバーインタビュー映像を収録

【通常盤】
<収録曲>
01. OverDriver
02.  吠えろ!(テレビ朝日『アニマルエレジー』テーマソング)
03.  青春(ジョンソン・エンド・ジョンソン アキュビュー2019キャンペーンソング)
04.  Ordinary
05.  東京 (テレビ東京『東京交差点』オープニングテーマ)
06 . スイッチ!(東海テレビ『スイッチ!』テーマソング)
07. されど愛しき人生

スキマスイッチ『Bitter Coffee』
【初回限定盤 / CD+Blu-ray付】
Blu-ray「Documentary of “Studio Live” 」
Hot Milk & Bitter Coffeeより収録曲のスタジオライブ撮り下ろし+当日のドキュメントを収録

【通常盤】
<収録曲>
01. I-T-A-Z-U-R-A
02. G.A.M.E.
03. 風がめくるページ
04. いろは
05. SINK
06. フォークで恋して
07. あけたら

ライブ情報

スキマスイッチ “Soundtrack”
2021年12月22日(水)
OPEN / START:17:30 / 18:30
会場:日本武道館

ライブ・レポートはこちら

『スキマスイッチ TOUR 2022 “café au lait”』
2022年2月10日(木)栃木県:宇都宮市文化会館 大ホール
2月13日(日)三重県 三重県文化会館 大ホール
2月14日(月)岐阜県 長良川国際会議場 メインホール
2月16日(水)愛知県 東海市芸術劇場 大ホール
2月23日(水・祝)神奈川県 神奈川県民ホール
3月4日(金)千葉県 千葉文化会館 大ホール
3月12日(土)島根県 島根県民会館 大ホール
3月13日(日)鳥取県 とりぎん文化会館(鳥取県立県民文化会館)梨花ホール
3月26日(土)愛媛県 松山市民会館 大ホール
3月27日(日)高知県 高知県立県民文化ホール オレンジホール
4月2日(土)長崎県 諫早文化会館 大ホール
4月3日(日)佐賀県 鳥栖市民文化会館 大ホール
4月5日(火)大分県 J:COM ホルトホール大分 市民ホール 大ホール
4月16日(土)奈良県 なら100年会館 大ホール
4月17日(日)滋賀県 滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 大ホール
4月24日(日)茨城県 ザ・ヒロサワ・シティ会館
5月1日(日)北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
5月3日(火・祝)北海道 音更町文化センター 大ホール
5月5日(木・祝)北海道 根室市総合文化会館 大ホール
5月18日(水)兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
5月20日(金)京都府 ロームシアター京都 メインホール
5月21日(土)和歌山県 和歌山県民文化会館 大ホール
6月4日(土)青森県 リンクステーションホール青森(青森市文化会館)
6月5日(日)岩手県 岩手県民会館 大ホール
6月8日(水)秋田県 ほくしか鹿鳴ホール(大館市民文化会館)
6月11日(土)山形県 やまぎん県民ホール(山形県総合文化芸術館)
6月12日(日)福島県 白河文化交流館コミネス
6月21日(火)福井県 敦賀市民文化センター
6月23日(木)富山県 砺波市文化会館
6月25日(土)新潟県 上越文化会館 大ホール
6月29日(水)長野県 飯田文化会館
7月2日(土)鹿児島県 宝山ホール(鹿児島県文化センター)
7月3日(日)宮崎県 メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)
7月30日(土)群馬県 高崎芸術劇場 大劇場
7月31日(日)山梨県 YCC県民文化ホール(山梨県立県民文化ホール)大ホール

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関連リンク

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