【単独インタビュー】スキマスイッチ大橋卓弥が語るニュー・AL、ヴォーカリストとしてのビジョンと“届く歌”の核心

インタビュー:田代 智衣里(Vocal Magazine Web)

(ボイトレの必要性は)今、思ってるんですよね。

──『Bitter Coffee』の「いろは」では、より話しているような歌い方で、主人公のイメージが浮かび上がってきます。曲の人物像はどのように意識していますか?

大橋 最近特にそうですけど、主人公のディテールを作詞の段階から2人で固めるんです。例えばラブソングだったら、学生の恋愛なのか、社会人の恋愛なのか。それとも結婚して何年も経った夫婦の話なのか。社会人の話なら、この社会人は何をしている、どこで働いている、犬を飼っている、とか。歌詞には出てこないんですけど、2人の中で決めます。

キャラクターを作っていくと、このキャラクターは“これは言うけどこんなことは言わなそうだな”とか、なんとなく2人の中で共有できるようになってくる。うちは詞も2人で書くので、キャラクターの人物像がブレちゃうと全然違う曲になっていってしまうんですよね。だからそこをまず決めていきます。

歌う時は、こういう感じの人かなってイメージして、そいつが“終わったんだよな”ってどんなテンションで言うかなとか。「いろは」なんかは、最初の《「終わったんだよな」》っていうところを気にしてましたね。

──生活習慣の中で声を保つために気をつけていることや、ルーティンはありますか?

大橋 ないです(笑)。はははは(笑)。それが、本当にないんですよね。

──ある程度湿度は測っていますか?

大橋 測って(表示が)出るやつもありますけど、僕はどれが一番いいのかわからないですね。あとはホテルの部屋のエアコンはつけません。だから冬場は電気毛布を持ち歩いています。加湿器も基本的には持ち歩くんですけど、あまりにも乾燥してるなと思った時は、バスタブに熱湯を溜めて寝ることが多いですね。

──寝る時にマスクはしますか?

大橋 しないですね。

──飴など、摂るものはありますか?

大橋 以前はレコーディングで歌を録る時はハチミツを飲んでいたんですが、今はもうやらなくなっちゃいましたね。昔はそれがひとつのジンクスみたいになってて。でも、ステージドリンクはいまもハーブティーか漢方のどっちかですね。

──寝る時間もその日によって違いますか?

大橋 寝る時間は日によって違いますね。でも、基本的に昼夜は逆転しています。午前4時、5時ぐらいに寝ることが多いです。やっぱり作品を作るのは、夜のちょっとあの独特な、どこか自分に酔えるような雰囲気というか、そのほうが僕は向いているみたいですね。

──大橋さんと言えば、以前から“ヴォイス・トレーニングをしたことがない”とお話されていました。

大橋 したことないですね。

──今年の『スキマスイッチ TOUR 2020-2021 “Smoothie”』を観ていても、例えば「マリンスノウ」はリリース当時の声の魅力的な成分を持ち合わせながら、その上で進化している印象があります。でも、多くのアーティストの方が年齢を重ねる中でヴォイス・トレーニングを取り入れているというお話も聞いたりするんですけど、そういった必要性を感じたり、やってみようかなと思う時期は特になかったですか?

大橋 今ね、思ってるんですよね。

──あ、そうなんですね。

大橋 今、あまりにもいろんな人がヴォイス・トレーニングを受けていて。自分のコンディションがこうしたら整うっていうのは、自分なりに見つけてきたんですよね。ただ、フラワーカンパニーズの(鈴木)圭介さんに言われたんです。“大橋はまだやめるものがいっぱいある”と。“俺は全部をやめて今このギリギリの状態だ、だからすごい羨ましい”って言われたことがあって。

確かに圭介さん、あまり打ち上げにも行かないんですって。次の日もライブだったら、部屋で喉をとにかく整えるって。僕は全然それをしないし。だからそういう意味で、あとやってみてないことってたぶんボイトレだけなんですよ。

今よりもっと歌はうまくなりたいなって常に思っています。表現力ももっと豊かになりたくて。あとできること言ったらもうボイトレくらいしか残ってないので、じゃあ一回やってみようかなって。それこそ、矢野まきちゃんもボイトレの先生をやられているんですよ。

──そうでしたか。

大橋 僕、なんでもそうですけど、自分がその人になりたいって時にその人に習う感覚はすごい素直っていうか……ヴォイス・トレーニングに行ったことないからこんなこと言えるのかもしれないですけど、先生の言うことを聞ける自信がないんです(笑)。だから、それじゃ行っても意味がないし。

昔、矢野まきちゃんのボイトレの先生に言われたことがあって。僕が共演したことによって、必然的に僕の歌も聴いたわけですよね。それで「あなたの歌い方はもう40歳まで持つかどうかわからないよ」って。

「そんな歌い方がずっとできるわけがないから」って。「だから私んとこに来なさい」って言われたんですよ。その時も僕は「いや大丈夫です。たぶんもう歌えるんで」って言って(笑)。行かなかったんです。

──はい。

大橋 でもその言葉がすごく残っていて、40歳になったら声出なくなるのかって。今43歳で、まだ今のところ大丈夫なんですが、その先生の言葉はずーっと残っているんですよね。

それはたぶん、まきちゃんを教えてた先生だっていうことで自分もどこかしら興味があるし、“あの先生の言っていた意味ってなんだったんだろうな”って考えさせられるところがあるからだと思うんですけど。やっぱりインタビューすると、みなさんヴォイス・トレーニング受けているんですか?

──定期的にトレーナーさんに見てもらったり、トレーニングを覚えて普段の自主トレーニングに取り入れたりって話を聞きますね。もともとやらなかった方も、年齢を重ねることで変化したり。

大橋 そうですよね。でも圭介さんは、とにかく気にされていますよね。僕、愛知県出身で地元の先輩でもあるんですよ。圭介さんに会うまではどんな状態でも無敵な人だと思っていたので、話を聞いた時に、“圭介さんでさえそうなんだ”って驚いて。百戦錬磨であれだけのライブをして。ずっと人生ライブの人がそうってことは、めちゃくちゃ苦しい人生なんじゃないかって思って。

僕は圭介さんの言葉と、まきちゃんの先生の話はものすごい覚えています。こびりついているんですよね。

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